第九章 杜の国 レイリク鍾乳洞⑥
「凄く天井が高いね」
そこは大きめの体育館ほどの大きさがあった。壁一面は氷で覆われている。
一番奥の壁のところに騎士団員が集まっていた。
「中隊長、連れて参りました」
案内役が声を掛けると一段の中から一人が出てきた。これが中隊長のようだ。
「初めまして、僕たちは」
ルークが挨拶をしようとすると中隊長が遮った。
「初めまして、じゃないだろう」
「えっ?」
アストラッド騎士団員の盛装、それも中隊長の鎧をまとっていて気が付かなかったが、そこには確かに見知った顔があった。
「なんだ、アークじゃないか」
「久しぶりだな、二人とも」
そこにはアーク=ライザーの姿があった。
「正式に騎士団に入ったんだな。それですぐに中隊長か、早いんじゃないか?」
「親父のお陰、とか言うんじゃないぞ、俺の実力だからな」
「剣の腕は確かだが中隊長としての器量はどうだが判らんがな」
「ロック、相変わらずだな、お前は。ソニーから報告を受けている。剣士祭では活躍したらしいじゃないか」
アークの元にはソニー=アレスから逐一報告が上がっているようだ。
「活躍って言っても準優勝だから誇れる話じゃないさ」
ロックは本当にそう思っている。優勝したかったのだ。
「結局2回も負けてしまったからな」
「まあ、三騎竜は仕方ないさ。俺でも勝てない。クレイオン道場はマゼラン一だしな」
「次は勝つさ」
「まあ、お前ならそうだろう。で、ここにはどうして来たんだ?」
それが本題だった。
「ルーロの領主から騎士団員が観光資源のレイリク鍾乳洞を封鎖している、と聞いてその真相を確かめに来たんだよ」
「なるほど、それでこんなところまで。人相風体からお前たち二人だと思ったんでここまで来てもらったが、そうじゃなければここはやはり封鎖せざるを得ないのだ。誰も立ち入りさせるわけには行かない」
「理由を聞いてもいいかい?」
アークは氷壁の一か所を指さした。
「あそこを見てくれ」




