第3章 放浪の二人 秘密の森⑧
第3章 放浪の二人
2 秘密の森⑧
5人と1匹は大いなるエピタフの祠を出て
森を抜けるところまで辿り着いた。
「わらわはここでお別れじゃ、お前たちには
世話になったな。」
殊勝にもステファニー=メイスンはロック
たちに重ねて礼を言った。魔女と言えども相
当困っていたのだろう。
「ただ、ナグはあれで消滅したわけではない
のだ。時間をかけて復活するはずなので、わ
らわはここであ奴を封印し続けなければなら
ない。この森を出ることが出来なくなってし
まった。」
「そうなのか。あなたはそれでいいのですか
?」
「まあ、仕方あるまいな。わらわ以外にはで
きないことであるがゆえに。」
(我が主よ、我もお手伝いしますゆえ、手分
けして封印を続けましょう。)
「いや、我が僕であるブラウン=ジェイキン
よ、そなたまでここにとどまる必要はない。
その者たちと行くのであれば、一緒に行くが
よい。わらわは自らの使命をただ果たすだけ
じゃ。」
(そんな。我が主よ、我が邪魔だと言われる
のか。)
「ジェイ、それは違うと思うよ。ステファニ
ーさんは君の自由を奪うことが忍びない、と
思ってるんじゃないかな。」
「そちもこの者たちと一緒に旅をしたいと思
っておったのじゃろう。わらわのことは大丈
夫じゃ。たまに戻って旅の話をしてくれまい
か。お前と二人で居るより、その方がずっと
気がまぎれるであろうと思うぞ。」
(そんな、そんな、もったいないお言葉。我
が主よ、しからば我は我が主に様々な旅の話
をするため、こ奴らと旅をし、たまに戻って
くることにしても構いませんでしょうか。)
「さっからそう言っておろうが。邪魔にして
いる訳ではないから早よう行ってまいれ。」
「よかったなジェイ。お前も俺たちの旅に少
しは役に立つこともあるだろう。」
(少しは、とは失礼な。お主たちは我の従者
として連れて行ってやろうと言っておるのじ
ゃ。)
「ええぇ、そんなことなら連れて行くのを辞
めようかな。」
(まてまて、そう早急に決めるでない。我も
譲歩する余地はあろう。)
「譲歩?」
(そうじゃな、まあ、お前たちの旅にどうし
ても付いてきてほしい、というのではあれば
付いて行ってやらないでもない。)
「じゃ、いいや。」
(いやいや、待てというに。わかった、お主
たちの旅に連れて行ってはくれまいか。これ
でどうじゃ。)
「最初からそう頼めって。」
「ロック、あんまりジェイをいじめたら可哀
そうだよ。最初から一緒に行くつもりだから
安心して付いておいでよ、ジェイ。」
(お主は良い奴じゃの、ルーク。それに比べ
て。)
「比べて、何?」
(いや何もないわい。)
こうしてロスまであと少しだが四人と一匹
の旅が再開されたのだった。




