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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第九章 杜の国 アストラッドへ⑩

 四十人が倒れてうごかなくなるまで20分と掛からなかった。魔道使いが居なかったことも幸いした。ただの弱い剣士というか破落戸の集まりでしか無かったのだ。


「やっぱり騎士団員は居ないようだね」


 全員を倒してロックたちは屋敷の中に入って行く。色々と事情を聞くためだ。


「なっ、なんだお前たちは。外の者たちはどうした?」


「全員丁寧に眠った貰ったよ」


「全員だと?」


 サイン子爵は窓から外を確認したが確かに大勢が倒れている。


「ほ、本当の事なのか。お前たち一体何者なんだ?」


「やったのは主にこっちね」


「俺の名前はロック=レパード、田舎の領主には知られていないかも知れないが」


「ロック=レパード?知らんな」


「ではバーノン=レパードならどうだ?」


「レパードなど知らん。それがどうした」


 サイン子爵は世俗のことには興味がないのだ。あるのはただ自分の金儲けだけだった。


「まあいい。俺が下で倒れているような奴が何人いても負けない剣士だと思ってくれればそれでいいさ」


 サイン子爵の顔が引きつっている。あの人数で倒せないのだ、自分が敵うはずがないことも理解した。


「わかった、悪かった。これでいいか」


 サイン子爵は全然悪びれていない。この場をやり過ごすことだけを考えているようだ。


「良くないですよ、領主様。色々と事情をお聞きしたいので素直にお話しいただけませんか?」


「なんだ、お前は。お前も強いのか?」


「僕は何もしていませんよ。でも僕の質問にお答えいただきたいのです。よろしい?」


 ルークの口調は穏やかだが反論を許さないものだった。


「判った、儂の知っていることは話そう」


 サイン子爵の話はこうだった。少し前、アストラッド騎士団の幹部のような若い奴が来てルーロ駐在の騎士団員を全員連れて行ったらしい。それからルーロには本来警察機能も兼ねる騎士団員が不在になってしまったのだ。


 それと一番の問題はルーロの収益の大きな柱だったルーロ北西の山中にある鍾乳洞への入場料が騎士団に封鎖されて取れなくなってしまったのだ。


「それで仕方なく夜盗のようなことを始めたのだ。貧乏人からは取らないことだけを信条として金持ちから少し融通をしてもらうつもりだった」


 領主の話は話半分にしておかないと信用が置けないとルークは思った。抵抗した者たちは命も取られているかも知れないのだ。


「一応話は聞いたけど、まあ保留ってところだね。ロックどうする?」


「細かい事情は騎士団の奴らに聞くしかないんじゃないか?騎士団が職務を放棄したことで起こっている事件なんだし」


「そうだね。ではその鍾乳洞とやらに行くことにしようか」


 二人は領主を人質というか逃がさないように一緒に馬車で案内させることにしたのだった。

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