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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第九章 杜の国 アストラッドへ⑧

「わかった、命だけは取らないでくれ。それなら話すから」


 殺されるよりはマシ、ということなのだろうがロックには殺す気が無い。その辺りは初対面では判らないだろう。


「判った、全員殺さない。その代わり全部話せよ」


 一応全員の拘束を解いて話を聞くことにした。リーター格の男は魔道士ではなくロックに拘束されていた男だった。剣の腕は全くロックの触手が動かない程度だった。


「俺たちは頼まれてここに来ただけだ。二人組で結構な金を持っているという情報をくれた男が今晩襲うように鍵も用意してくれたんだ。それ以上のことは何も知らない」


「その頼んできた男って誰なんだ?」


「初めてあった男で名前も知らない。手間賃として一人銀貨1枚づつをくれたんだ。二人は金かも持っている、と言ってた。だから俺は仲間を連れて襲いに来たんだ」


 男の怯え切った表情からすると嘘を吐いているようには思えなかった。


「その男の特徴は?」


「お前たちと同じくらいの若い男だった。年の割には妙に落ち着いていた感じがしたな」


 ロックたちを知っているのであれば、ただの破落戸風情では歯が立たないことも知っている筈だ。どうも目的が判らなかった。もしかしたら、ただの嫌がらせかも知れない。毎晩これを続けられれば流石にロックと言えども睡眠不足で弱ってしまうこともあるだろう。


 本当にそんな手を使って来るのであれば、考え着くのは一人だ。


「ルシアか」


「そうかもね。でも違うかも。彼なら自分の手で、と思うんじゃないかな」


「だからその前にできるだけ弱らせようという魂胆だろうよ」


 十分考えられることではあった。ただルークにはちょっと引っかかることもある。ルシアがずっとアストラッドまで自分たちを付けて来ているとは思えなかったのだ。自らの復讐心を満たすためだとしても、他に『終焉の地』の幹部としての仕事もあるだろう。


「僕は違うんじゃないかと思っているんだ」


「どうして?」


「やっぱりロックの剣の腕に対して襲った人材が粗末すぎる。ルシアなら確かに何回も続けて捨て駒を当てて、といこともあるかも知れないけど、単純にロックの腕を知らなかったと考えた方がしっくりくると思うんだ」


「ということは単なる強盗だと?」


「ある程度の金を持っている若造、というカモが来た、というところじゃないかな。それと少しだけ違和感があるとしたら宿屋の主人がカギを簡単に渡しているところだと思うんだ」


「確かにそうだな」


「ということは、まさかとは思うけど吹っ掛けた金額を簡単に支払った客がいたら報告する手はずになっていたんじゃないかな」


 色々とグルだということだ。


「だとすると、少し面倒な事になっているかも知れない」


「どういう意味だ?」


「ここルーロの街ぐるみ、という可能性があるってことだよ」

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