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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第九章 杜の国 アストラッドへ⑤

 ウラノへは順調に着いた。山奥の街というか村だが宿泊施設もあり補給も出来た。農業や林業は盛んな村なのだ。そしてアストラッドとカーでニアを陸路で結ぶ要所でもあった。


「何事もなく順調な旅だな」


 ロックが言うがルークは逆にそれが不安に思えた。シェラックが同行しているのだ、ただで済むはずがないとも思う。


「そうだね。山道を歩くだけで結構な修行になりそうだよ」


 山道は険しかった。整備されていないが一応辛うじて馬車は通れる幅を確保していた。ただ路面の整備が全くなされていなかったので飛んでもなく悪路だった。


「では私たちはここで少し残りますので、またいつかお会いしましょう」


 シェラックとユスティは一泊ではなく数泊するらしい。ウラノにどんな用があるのかは知れないが聞いても言わないだろうという事は判っている。


 シェラックは何を企んでいるのか判らないがユスティはただの好奇心旺盛な若者だという事が同行していてよく判ったので、なぜ二人が仲がいいのか判らなかった。


 どちらかと言うとユスティの好奇心にシェラックが振り回されているかのようだ。それはシェラックの本性とはかけ離れているように思える。


「変な二人だったね」


「そうだな。よくあの二人だけで旅をしようと思ったものだ」


 ロックもルークと同じことを感じていたようだ。


「ユスティが世間知らずで他人を頼るのは判るけれどシェラックの方が何故ユスティを連れているのかが判らない。もしかしたら本当の目的を隠すための盾にでもするつもりなのかな」


「盾?」


「うん。本当の目的は違うけれど表向きはユスティが見聞を広げる為に旅をしている、ということかな」


「面倒なことをしているのだな」


「それが駆け引きとか謀略とか言うものだよ。少しはロックも覚えた方がいいんじゃない?」


「俺は細々したことが大嫌いだから考えることは全部ルークに任せているだろ。強い剣士と出会えるようにしてくれれば他に望みはないからな」


 マゼランでクリフ=アキューズとマシュ=クレイオンに負けたことでロックは逆に余裕が出来たようだ。強ければ勝つ、弱ければ負ける、そんな単純なことを思い知らされたことで、ただ強くなりたい、という本来のロックの望みがより昇華したようだ。


 ロックの望みを叶えるにはマゼランと比べるとアストラッド州は少し物足りないかも知れない。剣と魔道だと、どちらかと言えば兼に重きを置いている州ではあるが、剣よりも勉学にさらに重きを置いている州でもあったからだ。


 アストラッド州とプレトリア州は聖都セイクリッドなどがあるシャロン公国の中央とはカウル山脈とロゼ山脈という二つの巨大な山脈に遮られている分、独自の文化や生活を築き上げていたのだ。


 特にプレトリア州は東方に近いこともありシャロン公国とは少し異質だった。シャロン公国で唯一魔道を中心に政治などが行われており、州の中枢は太守であるバイロン=レイン侯爵を含め悉く魔道士が占めていた。


 アストラッド州はシャロン公国中央とプレトリア州を始めとする東方の国々との中間であり、色んな意味で中途半端な州だった。


 アストラッド州の殆どを占めるのは最大のオルレアン森林地帯を始めとする多くの森林だった。その中をシャロン公国で二番目に長いロパース河が流れる。


 ウラノからはいくつかの小さい街や村を経てアストラッド州第二の都市、ロパース河沿いの要所ケベックが次の目的地になる。


 ウラノから出ている街道は二つに分かれている。一つはそのままケベックに向かうウラノ街道。もう一つは更に高いロゼ山脈に踏み入ってしまうトーアに向かう東ロゼ街道だ。


 ロックとルークはシェラックたちと別れて次の日ウラノ街道をケベックに向けて発つのだった。


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