第八章 剣士祭 剣士祭Ⅳ⑩
「よし、行くか」
ロックの気合の入った掛け声とともにローカス道場の出場者五人とミロ、トリスティアの計七人は会場であるクレイオン道場に出向くのだった。
「今日は大将でしょうね?」
道場に着くとマシュ=クレイオンが話しかけてきた。
「準決勝は特別さ、今日は普通にも行くよ」
「僕の所まで届きますか?」
「何とも言えないな、それは。手を抜いてはくれないだろ?」
「当り前です」
それだけ言うとマシュは道場の奥に引っ込んでしまった。試合まではまだ少し時間がある。
「マシュ=クレイオンは強いよ」
ロックにクリフ=アキューズが話しかけたきた。決勝を見学しに来たのだ。
「強いだろうね、あんたよりも強いかい?」
「そうですね、今日現在という事であれば私が勝つでしょう。でも明日は判らない、そんな感じです」
マシュはマゼランの三騎竜の一角クリフに自分よりも強くなるかもしれないと言わしめるだけの才能を有しているのだ。
ただクリフも今の自分が強さの限界だとは思っていない。自分もまだまだ強くなる余地を残している、と思っている。
そして自分の上に君臨する三騎竜の他の二人やシャロン公国の頂点リード=フェリエスにもいつかは勝ちたいと思っていることはロックと変わらない。
「なるほどな。でも、次は俺もあんたに勝つよ」
「楽しみにしておきましょう。でも来年は私は剣士祭には出ませんよ」
「俺も来年は出ないよ。というかその時期にマゼランには居ないんじゃないかな」
「総なのですか?ここでずっと修行するものかと」
「いや、今日が終わったらまた修行の旅に出るつもりだから。次の機会は、次にマゼランに来た時、かな」
「いいでしょう。それまでに私はもっと強くなっておきましょう」
「いいね。俺はそれを超えてみせるさ」
試合時間が迫ってきている。クリフはロックたちから離れて行った。
「やっぱりマゼランを出られるんですね」
クスイーが言う。うすうす気づいていたことだ。決勝が終わればアクシズもルークもロックも居なくなってしまう。道場はどうなるのか。
「そうだな、最初から決めていたことだ。クスイー」
「はい」
「道場は任せたからマコトとミロを頼む。トリスティアも協力してくれるだろう。塾生も増える筈だ。ただ今日の頑張りも絶対必要なことだ。お前が強い、ということを知れわたらせないと塾生は増えないぞ」
「判っています。元々は私怨で始まった僕の剣士祭ですが今は本当に強くなりたい。それには道場を続けられるように頑張らないと駄目だと思っています」
「判ってるじゃないか。じゃ今の自分にできる精一杯の試合を見せてくれよ」
「はい」
「トリスティアも見ているしね」
ルークが横から入って来た。
「はい、頑張ります」
相変わらずクスイーは意味が解っていないようだった。




