第八章 剣士祭 剣士祭Ⅳ⑥
これで二勝二敗の対になった。大将戦に勝った方が剣士祭本選の決勝に進める。
「ルーク、頼んだ」
「ロック、我が儘ばかり言ってると」
「どうなるんだ?」
「僕が笑うよ」
「なんだよ、笑うのか」
いつになくルークが緊張しているように見える。それを隠すための軽る口だ。
「大将戦ローカス道場ルーク=ロジック対ルトア道場リンク=ザード、始め」
大将戦が始まった。アイリス=シュタインの護衛役としてしか認識されていなかったリンクだが、これまでの試合で見せた実力は本物だった。
打ち合いながらリンクが言う。
「クリフさんの言う通り、お前が出てきたな」
クリフは自分が中堅で出るからにはロックは中堅で出て来る筈だ、その場合大将はルークだろう、とリンクに伝えていた。
「僕が予想通り出てきたから、どうなんだ?」
ルークも打ち合いながら答える。
「事前に十分対策済み、ということだ」
リンクはそう言ったが実は何の対策も無い。ルークの試合が少なすぎたからだ。そして、その少ない試合も時間が極端に短かった。勝てる時にさっさと勝つ。相手の実力が発揮される前に勝つ。それがルークの試合だった。
ルークは少し不思議そうな顔をした。相手が対策をしているとは思えなかったからだ。実際のところローカス道場でロックと立合った時以外は殆ど誰とも剣を合わせてさえいなかった。
「どう対策してくれたのかな?」
リンクの力量は高い。軽薄な印象とは全く違う。今まであっという間に決着を付けてきたルークが普通に打ち合っている。勝てる隙、が見つからないのだ。
「ルーク、大丈夫か?」
思わずアクシズが声を掛ける。ロックは腕組みしたまま動かない。ただ表情は暗くなかった。
「アクシズに代わってもらった方がよかったかも」
見た目にもルークが苦戦している風に見える。このままではルークの方が分が悪そうだ。
「リンク=ザード、本物だよ」
ルークはなんとかリンクの剣を捌いている。反撃が出来ていない。
ただ、リンクも打つ手が無くなってきている。どう打ち込んでもルークが受けてしまうのだ。それも辛うじて受けている、というタイミングなのだが、リンクはそこに少しの違和感を感じ始めていた。
リンクからすると勝てそうで勝てない、それがいつまで経っても変わらないのだ。




