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第3章 放浪の二人 秘密の森⑤
第3章 放浪の二人
2 秘密の森⑤
二人と一匹は『大いなるエピタフ」の洞の
中に入って下へ下へと進んでいた。
(ウィップアーウィルが鳴いている。)
「ウィップアーウィル?」
(そうだ。夜にしか鳴かない夜鷹だ。おかし
い、こんな時間には鳴かないはずだが。)
「それはよくないことの前兆なのかい?」
(そうとも言える。我が主ならその意味も簡
単に解き明かすであろうが。)
「それにしても暗くてどうしようもないな、
松明なんか用意してないし。」
「まかせてよ。」
そういうとルークが呪文を唱え始めた。
「我が名において命じる、炎の聖霊よ、我が
行く先をその灯で照らせ。」
するとふわっと火の玉が現れた。
「これで暗くないよ。」
「便利なものだなぁ。俺も覚えようかな。」
「ロックならすぐに覚えられるよ。教えてあ
げようか?」
「いや、魔道や魔術はルークに任せるさ、俺
はこれだけで十分だ。」
ロックは腰のレイピア(細剣)を叩いた。
今一緊張感のないままの一行は下へ下へと
進むのだった。




