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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第八章 剣士祭 剣士祭Ⅲ⑨

 前年準優勝の聖都騎士団所属メスト道場には突出した剣士はいない。ただ皆が一定以上の力量を備えていた。


 相手の先鋒に四番手を当てる。次鋒に三番手、中堅に二番手を当てる。ここまでで三勝できなければ相手の副将に大将を当てる。メスト道場の大将は本来なら先鋒に出て来る者だ。


 その方法で勝てる相手には、その方法を使う。そして、ここまでは有効だった。


 ただ今回の本選一回戦はそう上手くはいかない。ルトア道場は予選に続いてクリフ=アキューズが中堅で出て来たのだ。


 事前に登録してある順番を負傷でもしない限り変えることはできない。


 ルトア道場は確かに予選ではクリフが試合勘を取り戻すため確実に試合が出来る中堅で出て来ていた。しかし本選では当然大将で出てくると予想していたのだ。


 クリフからすると我が儘で出場させてい貰っているので大将は元々のリンク=ザード、という意見だった。


 メスト道場に勝てれば準決勝の相手はランドルフ道場に勝ったローカス道場になる。但し2勝2敗にならなければ大将戦までは縺れ込まない。確実に試合えるのは中堅戦だ。問題はそのクリフの誘いにロックが乗って来るかどうか。


 ただまずはメスト道場に勝たなければ次が無い。そしてメスト道場対ルトア道場戦が始まった。


 先鋒はメスト道場が勝ち次鋒はルトア道場アースト=リースが勝った。


 中堅戦はロックたちも見に来ている。クリフの試合は注目の的だ。


 しかし中堅戦は一瞬で終わってしまった。相手は一太刀も受けられなかった。圧倒的な技量の差だ。


「クリフは手の内を見せないつもりだったね」


「俺が見ていたからな」


「確かにそうだと思う。で、どうする?クリフは次も多分中堅だよ」


 まだ途中だがもうルークたちはルトア道場の勝ちを確信している。


 副将戦はメスト道場が勝った。これで2勝2敗だ。


 ルトア道場はリンク=ザードが大将を務めている。ロックたちはリンクのことはアイリスの護衛としか思っていなかったのだがアイリスの父ムルトア=シュタインは道場で一番腕の立つリンクを護衛に付けていたのだ。


 そしてメスト道場の大将とリンクでは力の差は歴然だった。


「そこまで、リンク=ザードの勝ち」


 これでルトア道場の準決勝進出とローカス道場との対戦が決まった。


「決まったな」


 準決勝は前年優勝クレイオン道場対前年5位カンタロア道場、十五年ぶりの本選出場ローカス道場対前年6位ルトア道場となった。


「明後日は中堅で行く。いいだろ?」


 ロックはクリフが出番を変えないと思った。本選で大将になるのであればメスト道場戦で大将になっているはずだ。


「じゃあアクシズと代わるかい?」


「いや、リンク=ザードにはルークが当たる方がいい。あいつ、あんな感じたけど強いよ」


「まあ、そうだね。君はクリフとも試合たいけどマシュともやりたいんだものな」


「当り前だ、そのための剣士祭なんだからな。こんな楽しい機会はそうそいないって」


「判ったって。僕の所まで回ってきたら任せておいて」


 リンクの試合を見てその強さに驚いてはいたがルークは軽く応える。そこへ試合を終えたクリフが近づいてきた。


「クリフさん、おめでとうございます」


「ありがとう。やっと君たちと試合えるところまで来たよ。明後日は楽しもう。私はそのままだからね」


 最後の一言は二人にしか聞こえないほどの小声だった。本来は大っぴらに自分の出順を相手に教える訳には行かないのだ。

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