第3章 放浪の二人 秘密の森④
第3章 放浪の二人
2 秘密の森④
「おい、ジェイ、いったいいつになったら着
くんだ?」
もう小一時間歩いただろうか。あちこちに
擦り傷をつけながらロックとルークは森の奥
へ奥へと進んでいたが、周りの景色が全く変
わらないので進んでいるのかどうかも確信が
持てなかった。
(もうすぐだ、あと少しでナグの寝床に着く
はずだ。)
「ナグの寝床?」
(そうだ。彼の者はこの森の中心にある『大
いなるエピタフ』と呼ばれている大樹の洞に
棲んでいるのだ。)
「そこに二人、いや三人か、は連れ去られて
いるというのだな?」
(違いない。)
何か怪しい。ロックもルークもそう思って
いたが、ここまで来てからにはもう引き返せ
なかった。
(そら、そこだ。)
猛禽類の王、ブラウン=ジェイキンが見つ
める先の巨樹は樹齢千年を超え周長は50m
はありそうな杉の木だった。樹齢千年を超え
る、と言われても十分納得できる風貌だ。確
かにこの森の中心なのだろう。そういった威
厳さえ感じられる大樹だった。
(ここから入れるのだ。)
大樹の根元には大人が十分入れる穴が開い
ている。
「行くか。」
(行くのか?)
「なんだよ、お前が連れてきたんだろう?」
(それはそうだが。)
「君の主さんも捕まっているなら早く助けな
いとね。」
ブラウン=ジェイキンは、どうもその穴に
は入りたくなさそうだった。二人を騙すつも
りだろう、とはロックもルークも思ってはい
たが、手掛かりが他になかったのでジェイの
話に乗らざるを得ない。
「時間がもったいない、早く行こう。」
ロックが急かすとジェイも何かを決心した
かのように二人を先導して穴へと誘うのだっ
た。




