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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第八章 剣士祭 剣士祭Ⅲ④

「次鋒戦ローカス道場クスイー=ローカス対ドローマン=ノムサンド、始め!」


 クスイーの試合が始まった。クスイーの剣は先日までの相手の剣に合わせた抑えた速さの件ではない。今日は最初から全力の剣速だ。


 ランドルフ道場側からざわざわとした声が聞こえてくる。


「おい、なんだあいつは。剣速だけなら三騎竜以上じゃないか」


「ということはマゼランで一番という事か」


 ランドルフ道場の残っている者たちは驚きを隠せない。そして、今の対戦相手のドローマンはもっと驚いていた。信じられない速さの剣が自分に襲い掛かってくるのだ。避けられず受けるので精一杯だった。


 そしてその剣速は更に早くなっていく。


「ちょっ、ちよっと待て、なんだお前は」


 何だと言われても、待てと言われてもよクスイーは止まらない。体力の続く限り渾身の剣を振るうのだ。それで負けるのであれば仕方無い、と腹をくくった結果だ。


「クスイー、行け~」


 アクシズが声を掛ける。クスイーの剣はまた速くなった。


 ドローマンもマゼラン一を謳うランドルフ道場の次鋒を任される剣士だ、実際のところマコトよりも断然強い。ということはクスイーより相当強い筈だったが剣速に押されて対応できていない。全く攻めることができないのだ。


 クスイーの剣は止まらない。ドローマンが徐々に対応できなくなって来た。しかし、それまで全力で打ち込んでいたクスイーの限界の方が早く訪れた。一瞬打ち込む剣に間が開いた。そこを辛うじてドローマンが対応しクスイーに打ち込んだ。そこで勝負が決まった。


「それまで、ドローマン=ノムサンドの勝ち」


 負けたクスイーが戻って来たが、顔は沈んではいなかった。


「すいません、負けてしまいました」


「その割に清々しい顔をしているじゃないか」


「はい、アクシズさんのお陰で精一杯力をぶつけられるところまで来させていただきました。今までなら考えもしなかった場所に連れて来てくださいました。本当にありがとうございました」


「俺だけの力じゃないさ。お前の努力も相当なもんだる自信を持っていいぞ」


「はい。来年もしまた剣士祭に出てランドルフ道場との試合になったら、今度はちゃんと勝てるようになります」


 それが実現しないとは誰も思っていない。クスイーならやるだろう、と皆思っていた。 


 ただ、これで2敗目、ローカス道場としては後がなくなった。


「去年の3位に3連勝しないと駄目になったぞ」


「なんだよアクシズ、出来ないとか言うのか?」


「俺はお前たちのような化け物じゃないからな。でも、まあ普通の人間として頑張ってみるさ」


 その顔は自分が負けるとは全く思っていない顔だった。マコトやクスイーから見るとアクシズも十分化け物なのだ。

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