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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第八章 剣士祭 剣士祭Ⅱ⑥

「副将戦ダモン道場ガルム=ダレン対ローカス道場ルーク=ロジック。始め」


「ウォーーー」


 ガルムが巨体を揺らして突っ込んでくる。剣技というよりはただの突進だ。ただの突進だが、それが体重を十分生かした飛んでもない突進だった。


 普通の剣士であれば、ガルムの突進を止められるものは居ない。ルークの細剣の倍はあろうかという大剣を縦横無尽に振るってくる。特に重く作ってあるので少し触れただけで一巻の終わりだ。その重い大剣を棒っキレの様に振るうのだ、ガルムの力の強さが異常だと判る。


「何て奴だ」


 ルークはガルムの大剣を受けたら自分の細剣が折れてしまうので避けるしかなかった。だがガルムはその体重からは想像できない程敏捷だった。ルークを捕まえようと剣を振るう。


「ロック、この人たち本当に強いよ」


「去年の4位なんだ、強いだろう。でも上に三つも居るんだ、こんなところで負ける訳にも行かない」


 ルークが負けてしまうとロックは一回も試合をせずに敗退してしまう。


「判ったよ、じゃあ早めに交代するね」


 ルークはそういうと、それまで相手の大剣を躱すだけだったのを、躱すと同時にくるりと相手の背中に回って後ろから剣を打ち下ろした。


 ルークはロックと違って強い相手と試合たい訳ではない。簡単に勝てるのなら勝つ。勝つのなら、どんな勝ちでも構わない。


「そこまで、ルーク=ロジックの勝ち」


 審判が高らかに宣言した。これで2勝2敗の対になった。勝敗は大将戦に掛かることになる。


「どういうことだ。なぜ俺が予選からでなければならないんだ」


 相手陣営でローデ=ダモンが怒鳴っている。ガルムがその巨体を可哀そうなくらい小さくして平身低頭している。昨年4位の自尊心が予選敗退を許さない。


「それにあの無様な負け方はなんだ。それでも誇り高きダモン道場の師範代なのか。お前はやはり馬鹿力だけしか能がない半端者だな」


 聞いているこちらが痛たまれなくなってきた。


「負けてしまったのは仕方ない。だが本選で負けるならまだしも予選で負けるとは。本選は出場者を変えなければならないな。負けた者は俺の前に二度と顔を見せるな」


 ローデの叱責は止まらない。


「ロック」


「判ってる。でも少しは練習させてくれよ、初めての試合なんだから」


 ロックらしい、と言えばロックらしいが、相手の大将の言動を許せない思いは同じだ。


 由緒ある聖都騎士団所属の道場師範が、こんな人間性では先が思いやられる。ロックは父バーノンの苦労を思った。新入団員教育の最高責任者は副団長であるバーノン=レパード大将なのだ。


 兄であるブレイン=レパードも父を手伝っている筈だ。二人とも剣の達人であり才覚もあるが優しすぎるのではないかとロックは感じていた。


「大将戦ダモン道場ローデ=ダモン対ローカス道場ロック=レパード、始め」


 ついに始まる二次予選の決勝戦。この試合の勝者が本選に出場できる。ローデはダモン道場が予選で負けるとは思っていない。予選で副将が出ることさえ予想していなかったのだ。勿論自らが試合をすることなど。

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