第8章 剣士祭 剣士祭③
ローカス道場一行は一通り道場を見回っていくつか試合を見たがロックの琴線に触れるような試合は無かった。やはり一次予選免除の道場が強いからだろう。
夜にはいろんな通りに屋台が出ていてお祭り騒ぎだった。
「今夜はここで食べて帰ろう。ミロには何か買って」
特にそんな話はして来なかったがお祭りだとはミロも知っているので大丈夫だろう。
二つ三つ屋台を回って買い食いをしていると同じように買い食いしてる集団に出会った。そこに何人か見知った顔を見つける。
「あっ」
思わずロックが声を上げた。そこには道場の一行を引き連れたロマノフ=ランドルフが居た。
「なんか見たことが有る顔だ」
ロックは名前を憶えていなかった。ただいい印象が無いことは覚えている。
「なんて名前だったっけ?」
「ロマノフだと思うよ、ロック」
ランドルフ道場の塾頭ロマノフだ。
「なんだ、お前は。誰だ?」
向こうもロックを覚えていなかった。いや覚えていても知らない振りをしているのか。
「俺はロック=レパードだ。そういえばランドルフ道場とかいうところで見たな」
ロックは嫌味でもなんでもなく相手のことをその程度の認識でしか覚えていないのだ。
「一応、あの後は手を出してきてはいないようだね」
ルークが二人に聞こえるように説明する。
「ああ、アイリス嬢を襲った輩か」
ロマノフが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「なんだ、ローカス道場の面子か。それで剣士祭には見学に来たのか?」
知っていて挑発をしている。
「ははは、冗談にしては面白くないな。うちに当たるまで負けるなよ。この手で叩き潰してやるから」
ロックが笑いながら言う。ロックの実力を知っている者からすると、その笑顔が逆に恐ろしい。
相手も一応大人だ、そのまま何事もなかったように行き違った。クスイーはずっとロマノフを睨んでいた。
クスイーも自分の力は実感している。今の自分ではロマノフには勝てない。ロックたちに頼るしかないのが悔しかった。今年は間に合わなかったが来年までには自分でロマノフに余裕で勝てるほどにはなるつもりだった。




