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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第7章 マゼランの三騎竜 出稽古⑨

「ソニー様、これで良かったのですか?」


「ありがとう、十分だよ。僕の我が儘を聞いてくれて助かった」


「でも、あのロックと言う若者はうちのシルでは元々勝てる見込みはありませんでしたよ?」


「それは判っているよ、アークでも勝てないとね。でも、どの程度の化け物なのかを知りたかったんだ。それも三騎竜筆頭のガスピー=ジェイルのお陰で台無しになってしまったけどね」


 ロックたちが出稽古に来ていた時、ソニー=アレスはスレイン道場に来ていた。ルークにさえ見破られない魔道で隠れていたのだ。


 ロックたちが出稽古をした方がいい修行になる、というのは本当のことだったし、その意味では協力しているつもりだったが、ソニーの本意は今まであまり本気を出して戦っていないロックの底を少し見てみたい、ということだった。


「それでは、あまりお役に立てませんでしたな」


「いや、いいよ。ロックとルークは別格だけど他の三人とはスレイン道場の方でもいい修行になった筈だし」


「ロックは判りますが、あのルークという青年もですか?」


「判らなかったかい?だとしたらルークは爪を隠すのが相当巧いことになるね」


「そうなのですか?」


「うん。彼はロックと引き分けられるほどの腕だと思うよ」


「まさか」


「まあ、いつか、そう剣士祭を待てば判るさ」


「判りました、楽しみにしておきます。それでアーク=ライザーは剣士祭にも戻らないので?」


 アーク=ライザーは本来マゼランではスレイン道場の塾生ということになっている。アストラッド州配下の道場ではスレイン道場が一番なのだ。


「ごめんね、今年はアークが出ればもっと上を目指せるかも知れなかったとは思うんだけど、彼には別のことをアストラッドでやってもらっているから、多分戻れないかな。本人は出たかったと思うんだけどね」


 アーク=ライザーは御前試合にも出ていない。初めて出場するはずだった剣士祭も出場できそうもない。ソニーは悪いとは思っていたが、彼にしか頼めないことが有る。そして彼もソニーの期待に応えようとしてくれている。本来の剣闘好きは我慢してくれているのだ。幼馴染としてソニーは本当に感謝していた。


「シルも悪かったね」


「ソニー様、私はいいのですが、弟が納得していない様子なので少し心配しています」


 シル=スレインは自分の力量を正確に把握していた。自分ではロック=レパードには勝てない。しかし弟のトルク=スレインはなぜ自分がルーク=ロジックに負けたのか理解していない。相手との力量の差を正確に測ることが出来ないでいた。


 トルクはアーク=ライザーとも立合ったことがある。そのときはトルクが勝った。ロックはアークとは同じ歳だ、まだ若い。


 前回の御前試合もアークが出ていたらロックの優勝では終わらなかった、とアーク本人が言っていた。それが本当だとするとトルクはロックにさえ勝てることになる。まあ、相性やその日の調子というものもある、と一応は慎重に思ってはいても、トルクの自尊心は膨れ上がっていた。


 それが何が何だか判らない内にルーク=ロジックに負けてしまった。ルークの動きで特筆すべきことが有るとすれば最後の動きだけだ。それまでは特に剣を合わせても強さや怖さを感じなかった。


 ソニー言わせれば、その強さや怖さを感じさせないルークが下手をすればロックよりも恐ろしい、と思うのだがトルクにはその辺りのことが判らなかった。


「何か面倒なことを起こさなければいいのですが。父上からも釘を刺しておいていただけますか」


「判った、任せておけ。しかし、トルクにはその度胸は無いとおもうがな」


「僕からもお願いします。彼らには剣士祭前に怪我などしてほしくありませんから。まあ、ロックたちに怪我を負わせることが出来る相手はそうは居ないと思いますが」


「何か思う所がおありなのでしょうね」


「ええ。でも本当に彼らには剣士祭で優勝してほしい、とさえ思っていますよ」


「それは聞き捨て成りませんな、剣士祭で優勝するのは我がスレイン道場だと私は信じております」


「それは勿論、アストラッド騎士団の強さを存分に見せつけてください」


 ソニー=アレスが何を企んでいるのか、その心の内はワット=スレインには想像も付かなかった。

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