第7章 マゼランの三騎竜 ローカス道場Ⅲ⑧
「なんだ、お前たちは。」
誰の案内も請わずにどかどかと入り込んできたロックとルークをその道場の関係者が咎める。特に今は部外者に入られたくはない時だろう。それにロックたちは止めようとする塾生を蹴散らして入ってきている。
「そこにいる男の保護者だよ。」
ロックはマコトを指さして言い放った。保護者にしては年齢は変わらない。
「なにを馬鹿なことを。そいつはただの道場破りだ。ここで反撃にあって殺されても仕方ない。」
乱暴な話だった。確かに道場破りは褒められたことではないだろう。ただそれで殺されてしまうのはまた別の話だ。
「なぜ彼を殺そうとしているんだ?何か理由があるのか?」
よってたかってマコトを殺そうとしているかのように見える。ロックたちが入って来て一旦止まっているようだが、それまでは大勢が一斉にマコトに向かって真剣で打ち込んでいたようだ。本当に殺すつもりで。
「俺とこいつも、その男の知り合いだ。そう易々と殺させる訳には行かない。」
「こいつ扱いは不満だけど、僕も同じように彼を殺されるわけには行かない。出来れば三人ともこのまま帰らせてはくれないかな?君たちも怪我をしたくないだろう?」
ルークの言い方では相手を逆なでしてしまうだけだが、本人にその意識は無い。
「そんな訳が無いだろう。三人ともここで終わりと思えばいい。」
「なんて来たんだお前たち。」
入り口で揉めているロックたちに気が付いてマコトがなんとか囲みを破って出てきた。
「お前を迎えに来たのに決まっているだろ。」
「おいおい、勝手に話を進めるな。お前たちはここで終わりだと言っているだろう。」
道場の塾頭だろうか、そこそこ使えそうな男が道場を出ようとするロックたちを遮る。
「遣り合わないと帰してくれないんだな。」
ロックは少し嬉しそうに見えるが気のせいだろうと自分に言い聞かせるルークだった。
「判った。相手しよう。でも真剣じゃなくてもいいか?」
「駄目だ。何度も終わりだと言っているだろう。」
「そうか、真剣では上手く手加減出来ないかも知れないけど、いいか?」
「意味の判らないことを言うな。」
「いいよ、掛かってきたら判るから。」
ロックをその場にいた塾生が囲む。男の指示だ。元々の原因であるマコトやルークは無視することにしたようだ。まずは生意気なロックを片付けてから、という目論見だろう。ただ、この道場の塾生あたりでは何人で掛かっても同じだった。
「お前たち、一斉に掛かれ。休ませるな。」
男が叫ぶ。言われた塾生が言われた通り一斉に真剣で切り掛かった。ロックは躱す、受ける、掛かって来た全てを一瞬で捌く。ロックもクスイーの剣の速さを日々体感していて進化している。
ロックは掛かって来たほぼ全員を少しの傷で床に転がして塾頭らしき男と対峙する。
「少しは判ったかい?」
男の表情が変わっているが、ロックの腕を見ても逃げ出したりしない。少しは度胸が備わっているようだ。
「何者だ、お前は。」
「俺か、俺はロック=レパード、今はローカス道場に世話になっている。そこにいるルークも俺と変わらないくらい強いぞ、まだ遣るかい?」
「師範や師範代が不在の時に、こうも勝手に暴れられたんであっては塾頭である俺の面目が立たない。俺と立合え。」
少しは腕に自信があるのか、それともロックの腕前が判らないのか、塾頭はロックに挑む。ロックの方はもうあまり興味がなさそうだった。
その時、道場の外ではまた騒ぎが起こっていた。




