第7章 マゼランの三騎竜 ローカス道場Ⅲ⑦
次の日の朝。ロックとアクシズとミロ、ルークとクスイーの二組に分かれてマコト捜索に出かけた。とりあえずは中級の道場を当たる。道場破りに遭った道場は除いていた。二度も同じ道場に行くことはないだろうという予測だ。
強い剣士を探している、というのが本当であれば、あまり小さすぎる道場も除けると思えた。少しは名の通った剣士が居る道場、という見当で虱潰しに当たる。
ルークとクスイーが訪れた十軒目の道場でのこと。道場の外が少しざわついていた。何か起こっているのだろうか。これはもしかしたら当たりか?
「なにかあったんですか?」
ルークが外に屯している若者に声を掛ける。
「なんだ?うちの道場のことだ、放っておいてくれないか。向こうに行ってろ。」
まるでチンピラのようだ。取り付く島もない。ただ中で何かが起こっていることは間違いない。
「ジェイ。中の様子を。」
(もう見てきたぞ。中にはマコトが確かに居った。道場の者と試合っておる。)
「判った、ジェイ、ありがとう。」
「ルーク、どうしました?」
クスイーはジェイとの会話に慣れていないのでよく聞き取れていない。
「うん、マコトが中に居るみたいだ。相変わらず道場破りをしている。」
「本当に?ロックに負けて辞めたんじゃなかったんだ。」
「そうだね。多分マコトは別の目的で道場破りを続けざるを得なかったんじゃないかな。」
「別の目的?」
「それは、まあ、本人に聞かないと判らないけど。」
マコトは強い剣士を探している。その執拗さは何かの復讐あたりが原因だとしか思えない。特に本人が姿を消すほど言いたくない、ということからも推察できる。詳細はやはり本人に聞かないと何とも言えないが。
ルークとクスイーは少し騒ぎが収まるまで外で待っていた。その間にジェイにロックたちを呼びに行ってもらう。しかし騒ぎはなかなか終わらない。そこにロックたちが合流した。
「ルーク、マコトはどうした?」
「中に居るのはジェイに確認してもらったんだけど、なかなか出てこないんだよ。どうしよう。踏み込むかな。」
ミロを帰していたので四人なら道場に踏み込んでも問題ないと思われる。
道場の外を囲んでいる若い衆を蹴散らすのは容易い。
「ジェイ、もう一度中を。」
(判った、待っておれ。)
ジェイは直ぐに戻った。
(少々拙いことになっておるぞ。)
「どうした、何があった?」
(マコトも道場の者もどちらも真剣を抜いておる。何人かはマコトに切られて倒れているようだ。)
それは拙い。木刀での試合なら相手に少々怪我をさせても試合の中のことで済むのだが、真剣ともなると相も行かない。騎士団が出張ってくると問題が大きくなってしまう。どちらも殺気立っているのも問題だった。収まるものも収まらなくなってしまう。
「仕方ない、踏み込もう。」
ロックとルークはアクシズとクスイーを外に残して中に踏み込むことにしたのだった。




