第7章 マゼランの三騎竜 ローカス道場Ⅲ⑤
「なんだよ、お前たちには関係ないって言ってるだろう。」
マコトの反応は事前に想像した通りだった。
「そうは言われているけど、剣士祭には5人で出場することになるから一人でも欠ける訳にはいけないんだよ。」
「結局それか。ロックはそれしかないんだろう。俺を心配しているんじゃなくて剣士祭の心配をしているだけだ。」
マコトの言う通りだ。ただマークはそれを隠したり否定したりはしない。
「マコトのいう事はそのとおりだと僕も思うよ。でも、理由はどうであれマコトのことを心配していることには違いが無いじゃないか。僕は本当に心配しているしね。」
「お前はただのお人好しだからな。だから後を付けたりするには向いてないぞ。」
隠蔽魔道で隠れて付けない限り確かにマークの尾行は判り易かったかも知れない。ただ、マークがバレてもいい、と思っていることも確かだった。マコトに全く知られないように付けるのは意味が無いと思っていたのだ。
「確かに向いてないよね。でも心配だからついて行ったのは嘘じゃないよ。危ない目に遭ってないか、何かに巻き込まれてはいないか、ちゃんと話してくれないと心配するしかないじゃないか。」
「だから俺のことは放っておいてくれ、と何回も言っているだろう。」
会話は一向に進まない。
「危ないことに関わっていない、というのならいいけど、それなら話してくれてもいいだろうし、話せないのはやっぱり何か危ないことに関わっているとしか思えないから僕もしつこく聞いているんだ。内容によってはロックたちにも黙っていることを約束するから僕にだけでも話してくれないかな?」
マコトは少し考えて答えた。
「やっぱり駄目だ。お前のお人好し具合はとんでもないから話せば確実に巻き込んでしまう。それは絶対に嫌だ。」
それは危ないことに関わっていると白状しているのと同じだった。ルークを撒き込みたくない事態なのだ。ルークはやっぱり本来悪い奴じゃない、と再確認するのだった。
「一人で解決できないことが助けがあれば前に進むこともあると思うよ。特に危ないことを回避するならロックや僕も十分役に立つと思うし。」
「それはこれ以上ないほど力強い味方になるということは間違いないと桶も思うさ。でも。」
「そろそろ諦めなよ、僕も引かないしロックは一度言い出したら聞かないからね。」
マコトは少し考えている。確かにこの二人は間違いなく力になってくれるだろう。アクシズやクスイーは関わらせる気が全くないがロックとルークは二人の性格からしても助力を頼まない限り許してはくれないだろう。
「判った。話す。明日だ。明日には話す。明日まで待ってくれ。ただ、お前とロックにだけだ。アクシズとクスイーは関わせないようにしたい。」
「うん、それは僕も思っていたから、その通りにするよ。明日、絶対に話してよね。」
約束をしてその日はマコトを開放した。今日は話すというまでは粘る気でいたのだ。
そして翌日、マコトは道場に来なかった。
「ルーク、マコトはどうしたんだ、昨日話をしたんじゃないのか?」
「話したよ。それで今日彼から話してくれることになっていたんだ。でも来ない。まさか二度と来ないとかはないだろうか。」
「おいおい、それは困るぞ。一人足りなくなる。」
ロックは半分本気だが心配していることも確かだった。
「今日話をすると言っていたんだから、ちょっとサボった、ということではないだろうし、少し拙いことになりそうだね。探さないと本当に二度と来ないかもしれない。」
「判った、道場はアクシズに任せて俺も探すよ。ジェイを連絡役にして手分けして探そう。」
ルークは何だかいつも誰かを探している気がして仕方なかった。




