第7章 マゼランの三騎竜 ローカス道場Ⅲ
「なんであんたは強敵を態々出場させるかな。」
ローカス道場に戻ってクリフの件を説明するとミロが噛みついた。確かにロックが立合ったりしなければクリフ=アキューズの出場はなかっただろう。ゲイル道場はそれほど強敵では無かったはずだった。これでもし三騎竜が揃ってしまうなんて事になったら、いきなり優勝候補の筆頭に躍り出てしまう。
「まあ、優勝が目的じゃなくてランドルフ道場を倒すことが目的なんだからいいじゃないか。」
ロックが暢気に言う。
「ランドルフ道場よりも先にゲイル道場に当たって負けてしまったら意味ないじゃないの。」
「あっ。」
「あっ、じゃないわよ。本当に剣のこと以外はからっきしなんだから。」
ミロは呆れて奥に引っ込んでしまった。
「余計なことをしたのかな。」
珍しくロックが少し落ち込んでいる。
「まあ、ロックらしくていいよ。でも、本当に三騎竜が揃ってしまったらどうする?」
「それは大変だ。今のままではクリフにも勝てないだろうし、後の二人も見てみないと。」
「おいおい、ロック。また試合って剣士祭に出場させようって言うんじゃないだろうな。」
さすがにアクシズが引き留めようとする。
「それは流石に自粛するさ。でも出て来てしまった時の対策は立てておかないと、だろ?」
ロックは多分そう言いながらも実際に見たら我慢できないだろうな、とルークは思う。そもそも連れて行ったことが間違いなのだ。
「ところでマコトが居ないけど。」
「うむ、今日は来ていないな。」
「あいつ、サボって何やってるんだ?」
「元々道場破りを繰り返していた奴だからな。素性も判らないんだろ?いいのか、そんな奴が5人のうちの一人で。」
確かにマコト=シンドウという名前と今の宿しか知らない。今までどこで何をしていたのか、も道場破りをしていたことしか知らなかった。
「確かにそうだな。ルーク、明日頼めるか?」
明日、マコトが稽古に来たら、帰りに跡を付けて様子を見る、ということだ。
次の日、マコトは普通に稽古に現れた。そして普通稽古が終わった。
「マコト、そろそろ宿を引き払ってここに住んだらどうなんだ?」
「なんだよ、俺は住まないって言っているだろ。じゃあな。」
そう言い残すとマコトは道場を後にした。直ぐにルークと相棒のジェイが追う。マコトは宿に戻る方向とは違う道を歩いている。気づかれないようにルークは少し離れて基本的にはジェイに付けさせている。
(なんだか裏通りに入って行くぞ)
ジェイからの知らせでルークも向かうが人通りが極端に少ないようなのでかなり離れて付けないとバレてしまう。
(店に入ったぞ)
マコトは裏通りの店に入ったらしい。こうなると店内に入る訳にも行かない。ジェイ任せになってしまうが仕方ない。
(ジェイ、中の様子を見て来てよ)
(わかった、すぐ戻るから待っておれ)
ジェイはそう言うと中に入って行った。ルークは見つからないように少し離れて待つ。ところがジェイはなかなか戻らなかった。




