第7章 マゼランの三騎竜 ローカス道場Ⅱ⑦
「ローカス道場の者だな。」
アクシズがソニーの所からローカス道場に戻る途中、突然呼び止められた。
「そうだが、それが何か?」
これがランドルフ道場の手先という奴か、と直ぐに判った。容姿からして塾生ではなさそうだ。
「悪いが少し痛んでもらう。」
「どうして?」
判っていてアクシズは問う。相手は五人、少し面倒だ。
「知らなくてもいい。ただ痛んでもらうだけだ。」
そういうと五人が各々の得物で襲い掛かる。アクシズは細剣を一応持っていた。ロックたちからこんなこともあろうかと用心させられていたのだ。
チンピラ五人ではアクシズの敵ではない。一人、また一人と得物を叩き落とす。五人全員の手に傷を負わせると覚えて居ろと捨て台詞を吐いて逃げ去って行った。
「本当に襲ってくるだなぁ。ちょっと楽しくなってきた。」
アクシズは、人生は楽しまなくては、と常々思っている。バレンタイン家の復興は楽しいからやっているのだ。だからソニーの言うように再興はするが子孫を残して継いでもらう気もなかった。自分が楽しめればいいのだ。アクシズは意気揚々とローカス道場に戻るのだった。
「ちゃんと襲って来たぞ、律儀なやつらだな。」
「それで大丈夫だったのか?」
「当り前だろう。あんなのに遣られていては名が廃る。」
「それほどの名かよ。ああ、バレンタイン家の末裔だったか。」
「歴史に興味もないのにバレンタイン家がどんな家系なのかも知らないだろう。」
「まあ、俺には関係ないからな。」
「このただの剣大好きお兄さんめ。」
しばらくはこのネタで皆に揶揄われる定めのロックだた。
「で、悪だくみは上手く行ったのか?」
「あまあだな。ルークはどうした?」
「三騎竜の居場所探しに行ってくれている。俺はクスイーの修行があるしな。」
「ルークもお前の我が儘に付き合わされて大変だな。まあ、化け物二人、お似合いだが。」
アクシズにはロックとルークの仲の良さが少し気になっていた。男色の気があるのかとすら思っているのだ。
「おいおい、お似合いは無いだろう。俺もルークも普通に女の子が好きだぞ。ああ、ルークは知らないが。」
「何々、どうしたの?」
ミロが変なところで割り込んでくる。
「ルークが女好きかどうか、って話だ。」
「ふぅん、ロックは女好きだと思うけどルークはよく判らないな。変な目で私を見てこないし。」
「なんだよ、俺がいつミロを変な目で見たんだ?」
「ロックは普通にしてても変な目で見ているのと変わらないのよ。剣と女、どっちを取るって聞かれたら?」
「迷わず剣だな。」
「それもちょっと私からすると嘘っぽいのよね。確かに剣に事には目が無いのは確かだけど、時々若い女の子を目で追っているときがあるのよ、自分では気が付いていないかもしけないけど。」
ミロは少し寂しそうに言う。ミロにもミロの思いがあるのだ。
「もうこの話はいいわ、そろそろ夕飯にするから。ルークはまだなの?」
「アクシズが出かけてからルークも出て行ったんだが、まだ戻らないな。ルークもランドルフ道場の手の者に襲われていたりしないといいんだが。」
「ルークの腕なら問題ないだろう。」
「俺が心配しているのは相手の方だよ。」
そう言うとロックは先に食べるぞ、と夕飯の席に着くのだった。




