第7章 マゼランの三騎竜 ローカス道場Ⅱ⑥
「二人とも化け物だな。」
アクシズの素直な感想だった。クスイーにはその化け物具合すら判らない。
「失礼な、俺はただの剣好きお兄さんだ。」
「なんだそれは。」
「すまん、ただの冗談だ。」
「全然笑えないよ、ロック。」
そう言いながらルークは笑いを堪えていた。
「化け物が二人、剣の速さだけはそれ以上のクスイー、それと俺、あとはマコトがもう少し使えるようになったら本当に剣士祭ではいい所まで行くかもな。」
「それにはクスイーも速さだけじゃなくて技を覚えないとな。」
「頑張ります。」
「アイリスのもいい所を見せないとね。」
「えっ。」
クスイーは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
「そんなんで試合にアイリスが来てたらどうするんだよ。」
クスイーの課題が一つ増えてしまった。
「少し出てくる。」
「なんだよ、アクシズ、悪巧みか?」
「そうだよ、なんで判った?」
そう言い残すとアクシズは道場を出た。
「ジェイ。」
ルークがそれだけ言う。ジェイも弁えているので直ぐにアクシズを追った。
アクシズが向かった先はソニー=アレスの宿だった。
「どうするんだ?」
「どうするもこうするもないよ、そのまま彼らを手伝ってあげればいいじゃないか。」
「なんだ、怒っているのか?」
「そんな訳ない。ただ楽しそうにしているな、とは思っていたけどね。」
ルークやジェイにも気づかれないように気配を完璧に消してソニーは道場を見に来ていた。
「それはそうと老師はどうしたんだ?」
「ガルド老師はディアック山の居所に戻っておられるよ。今のところは待ち、だからね。特にすることが無いさ。」
「まあ、だから俺があいつらの手伝いなどしていられるんだがな。それにしてもアストラッドに一旦戻った方がいいんじゃないか?」
「それは僕も考えてはいるんだけどね。待ち、がいつまでなのか判らない以上、戻ってまた来ることは無駄が大きすぎる。」
「おまえがそれでいいなら俺は何も言わんが、せめてアーク=ライザーを呼び戻してはどうだ?」
「いや、アークはこの場に居ない方がいい。一応向こうでの役目は伝えてあるしね。」
「本当に太守は継がない気でいるんだな。俺の様に家を復興したい者からすると考えられないことだが。」
「アクシズもバレンタイン家を復興するのなら結婚して子を成さないといけないよ。」
「どうしてそんな話になるんだ。俺はバレンタイン家は復権したいが色恋のことは皆目わからんぞ。」
「それじゃあ駄目なんだよ。一代限りの復興に意味はないよ。」
色恋も含めて面倒なことは出来るだけ避けたいアクシズだった。




