涙の訳
〜登場人物〜
朝方雛。
杉本晃。
私は泣いている顔を見つかりたくなくて下を向きながら教室に入り、自分の席に座る。
座った瞬間私はうつむき、声を殺して泣いた。
・・・晃君に・・・彼女がいたなんて・・・。
晃君カッコイイもん。モテるに決まってる。
その中の女子を選んだんだ。
きっと・・・私よりも美人だ。
無理だよ・・・。勝ち目なんかない。
私はそんなことを考えていると、余計に涙が出てくる。
・・・やだよ。
なんで彼女なんているのよッ!!
やだ・・・やだよぉ。
涙がいっぱい溢れてくる。
・・止らないよぉ。
「・・・雛」
聞き覚えのある声。
これは・・・晃君の声だ。
「・・・」
私は泣きやみ、黙り込む。
「ちょっと来い」
そう言うと晃君は無理やり私の腕を引っ張る。
見ると、さっきの中庭に着いていた。
「なんで泣いてるんだ?」
晃君は泣いてる私に優しく問い掛ける。
「どうして言わなきゃなんないんだよ」
「え?」
ついついヤクザの時の声が出てしまう。
「ど・・・どうして言わないといけないの?」
私は言い直した。
「気になるし。俺の・・・せいかもしれないから・・・」
晃君も下を向く。
・・・ホント、優しすぎるよ。
「晃君に・・・彼女いるなんて知らなかった・・・」
私はうつむきながらボソッと言った。
「・・・」
晃君は黙り込んでしまった。
・・・どうして黙るの?
聞いてきたのはそっちじゃない・・・。
「まぁ・・・!誰にでも秘密はあるよね」
私は無理して笑顔を作る。
だって元気にしなきゃ、晃君困っちゃうもんね。
「わりぃ・・・」
「別にさぁ!晃君のせいじゃないしー」
私は横を向きながら顔を赤らめる。
「・・・彼女ってどんな人?」
私はずーっと聞きたかったことを口に出す。
「美人だよ」
「・・・それだけ?!」
「ああ」
はぁ?
意味わかんない・・・。
全然見てねーんじゃねーの?!
「でも・・・、雛の方が美人だよ」
「・・・へ?」
私は一瞬固まる。
どんどん顔を赤らめる。
「えぇぇぇぇ?!」
私は顔を真っ赤っ赤にし、思わず叫んでしまう。
「う、、、嘘でしょ??!!」
「嘘じゃねーよ?」
「い、、、意味分かんない!普通は彼女の方を言うでしょ?!」
「だってホントのことだし」
ホントのことって・・・。
彼女より私って・・・。
嬉しいけど、おかしいよ。
「じゃぁ俺帰るわ」
そう言って晃君は教室へ戻ってしまった。
私は顔の色が元に戻らない。
真っ赤のまま。
変な人。
ホント変な人。
でも・・・そんなとこが好きなんだよね。