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「ご馳走さま、俺お風呂入るわ」
「あ、今、千絵が入っているわよ」
「また~?」
「ジップロックに携帯電話を入れて動画見るって言ってたから、あと30分は出ないと思うわよ」
「なんだよそれ……」
お風呂は後で入ることにして、ゲームの電源を入れる。
たまには違うゲームでもやるか。車を走らせるようなゲームでもやるか。
ゲームをやりつつも合間に窓から玄関のポストを覗いた。
なんかあれだな。俺って案外、警察官とかに向いていたりして。そしたら、将来の嫁さんは美人教師か……くっくっくっく……デレン。
いかんいかん、漫画の見すぎだろ俺。
そーいえば川嶋さん、青春を謳歌しろとか言ってたよな、俺だって青春したいさ……当たり前だろう。
「関谷君……あのね」
「何だい……?」
「私、ずっとずっと好きだったの、大好きっ」
くーっ、たまらんねぇ。ハァ俺の頭の中妄想乙だな(俺の気持ち分かってくれる奴いる?)。
その後も、毎日ポストを確認するもポストには赤いハンカチや手紙が届いていることはなかった。
アルバイトが終わり珍しく姉貴も一緒に食事をとっていた。
「やったー今日ハンバーグじゃんラッキー」
「亮介、多いでしょう?半分食べてあげるね」姉貴はそう言って俺のハンバーグをナイフとフォークで盗ろうとしてきやがった。
「おっと~。無駄だね、俺運動神経だけはいいから反射神経も優れているのだよ」あともう少しで俺のハンバーグちゃんにフォークが突き刺さりそうなところを回避できた。
さすが、俺様、だっはっはっはは___どうだ参ったか。
「こらこら、二人とも子供じゃないんだから食べ物なんかで喧嘩しないでちょうだいよ」
「だってお母さんのハンバーグ本当にすっごく美味しいんだもん、千絵のもっと大きいの今度から作ってよ」
「はいはい」
「ズリーィ、実にそれは不公平だと思うよ。オカン大体、世間様では息子の方が娘より可愛いっていうじゃんか……オカンそんな俺にもハンバーグを次回から3倍で……」
「はいはい、お母さんはどちらの方が大切でどちらかが可愛くないなんて、そんな風に差をつけて子育てしてません、二人とも同じように可愛いし同じ位大切なのよ、二人はねお母さんの宝物なのよ」
「そういえば、お母さんその服どうしたの?初めて見る気がする」姉貴がそう言うのでオカンの服を見たけど、見たことなかったっけ……?いつもこんなん着てねぇか?女って本当細かい事よく覚えているよな~。
「そう、実はね今日デパートで一目ぼれして買っちゃった」オカンは嬉しそうに言う。
「すごく可愛いじゃん、でも今日買ったのに今日着たの?なんで?」
「午後からお友達から連絡があって、喫茶店に行きましょって誘われたのよ、それで着たのよ」