8
いやいや、そんなワケねーだろう、ブンブンと顔を横に振る。
気を取り直して自転車にまたがり家に帰った。
翌朝、いつもは気にならないポストが妙に気になり、ポストを開いた。
「……あった」そこには四つ折りにしている白い紙が入れてあったのだった。
周囲を見回してすぐにポケットに入れた。途中コンビニに寄りトイレでそれを開いた。
『赤いハンカチを返されたのでマイナスポイント一点です。一か月が経過してリセットされたのでマイナスポイント計1点です。さぁがんばりましょう』
……ふざけやがって
俺は焼肉弁当を買って学校に向かった。
「ねぇ、関谷君今日コンビニのトイレで手紙読んでなかった?」
「……何で知ってんの」
「だって、トイレから出て手紙をポケットに入れるの見たもん私。もしかしてラブレターとか?」前の席の川嶋さんはそう言ってニコッっとした。
「いや…そんなんじゃないよ」
ラブレター?そんなもんだったらどんなに嬉しい事か。
「あー図星なんでしょう」
「だから違うって……」
「まぁ恋愛の相談ならいつでも聞くから私に相談してよね。っていうか関谷君って彼女いるの?」
「いないけど……」
「へ~そうなんだ。青春謳歌しなきゃダメだぞ」そう言って川嶋さんは前を向いた。
なんなんだよ一体。女の考える事って本当にワケわからん。
学校が終わってアルバイトはせずに家に帰った。
坂道を上がっていると俺の家がある曲がり角から、隣の隣の家の神戸さんの車が出て行くのが見えた。
俺は急いで自分の家の前に自転車を置いて、行き止まりになっている神戸さんの家の方まで歩いた。
車がない。俺は神戸さんの家のポストを開けて赤いハンカチを入れて脇目も振らず家に帰った。
ハァハァ____。
「亮介、お帰りなさい、どうしたの?そんなに慌てて。今日はアルバイトはないの?それとも今から行くの?」
「今日は休み」
「何か食べる?」
「いや、いらない」
俺はそう言って自分の部屋に行った。
部屋に入り出窓から外を確認した。よし道路には誰もいない。ふと前の家の松下さんが窓に立って神戸さんの方を見ている姿が見える。
……もしかして、俺が入れたところを見てたのか?
翌朝、起きてすぐにポストを見に行った。
……良かった。何も入っていない。俺は安心して朝ご飯を食べた。
「亮介、今日はどうしたの?朝から玄関先に出るなんて」
「いや、良い朝だなぁと思ってさ」
「珍しいこともあるもんね」
「オカン手紙入ってなかった?」
「なに?あなた宛ての」
「うんまぁ……そういえばあれから迷惑な手紙は入っていなかったの?」
「入っていないわよ。あれ一度きりだったわ。きっと近所の小学生が入れたのね」
「うん。でさ、もし封筒に入れていない白い手紙があったら、それ俺宛てだから見ないで俺の部屋に置いといてよ」
「あら、亮介恋人でもできたわけ?」
「そんなんじゃねーって。いいから頼んだよ」
俺は毎日ポストを見張ることにした。