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「んなワケねーじゃん。そんなのどこからどう考えても気のせいだろう」その時、亮介の部屋からピピピピピ___と音が鳴り響いた。
「え、なに?何の音?」
「うわっやっべー」亮介は直ぐに部屋に戻りキッチンタイマーをピッと止めたのだった。
「何?!どうしたの」亮介の慌てぶりに何事かと聞く。
「実はさあ、俺今24時間以内にゲーム全クリするっていうのに挑んでいてさあ…前回のは30分オーバーしたんだよね……」
「はぁ……何それ、あんた高校生にもなって。マジそんなどーでもいいことを……」
「今、姉ちゃんと5分は話をしたよなぁ5分プラスにしないと、じゃっそういうことで。俺ゲームするから」
しばらくして亮介がコンコンとノックして部屋に入ってきた。
「なにー?」
「いやさぁ、赤いハンカチのことだけど、また手紙でも届いたのかなと思って……」
「届いたわよ。でもいーの、気にしないことにしたから」
「どんな手紙?もしかして捨てたとか?」
「あるわよ」
『伊藤家に赤いハンカチを入れてあったが26日が経過したた為、タヒにました_。再開として、前回鬼だった関谷さんの鬼です。マイナスポイント計2点です。さぁがんばりましょう※赤いハンカチを洗濯してはいけません。次回から洗濯をした場合はマイナスポイント3点になります』
「なんだこれ、これはひでーわ。洗濯……したの?実はさ俺も前に六日目です、マイナスポイント1点です……とかいう手紙が入っていたんだよね」
「え……その手紙どうしたの?」
「いや、それが、しょーもねーとか思ってゴミ箱に……」
「え、何それなんで言わないの?」
「姉ちゃんだって、一々言わないだろう。それに只のイタズラだろうし」
「……」
「赤いハンカチ一緒に入ってたんだろう?今持ってる?」
「持ってるわよ」
「俺が預かっておくから貸して」
「いいけど、それをどうするつもりなの?」
「……それは、分からんッッ」
*
俺は赤いハンカチを持って部屋に入ると、制服のポケットにいれて、ベットに横になった。
イタズラにしては、タチがわりーよなぁ。
確かルール説明で一か月でマイナスポイントが5点溜まったら生贄とかって書いてあったよな。
伊藤さんて人……そう言えば、入退院の繰り返しだったとかってオカンが近所の人から聞いたと言ってたよなあ。
入院していてポストが見れない状況で25日が過ぎてしまったとか……。いやいくらなんでも、そんなめんどくさいゲームするような奴はいないだろう。
翌日、アルバイトが終わるといつもとは違う道で帰ることにした。B団地に差し掛かった所から3番目の家が目に入る。
真っ暗で電気がついていない。
この辺の家は結構夜遅くても電気がついていて、俺が明け方までゲームをやり込んでいてもいつまでも電気がついているので、みんな何時に寝ているんだよと思う事があるのだが、まぁ俺だって明け方まで起きているワケだし……。時代だろうという結論に達したわけだ。
表札を覗くと「山口」と書いてある。
ポケットから赤いハンカチを手に取り「失礼します」と小さな声で言いながら玄関先のポストに入れて、急いで自転車にまたがったその時、
「ちょっと待ってください」
その声に振り向くと中年の女性がものすごい勢いで自転車を漕いで近づいてきて、ポストを開けて中に入れた赤いハンカチを取り出して「コレ」と言って俺に差し出して、慌てて家の中に入っていった。
「す……」すみませんと言おうとしたのだが、言う暇もなかった程だった。
今一状況が呑み込めない俺……。
あのおばさんスゲエ慌ててポスト開けたよなぁ?
これってやっぱり本物なのか?