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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第二章 進展
43/149

10

「なぁオカン、ポスト失くしたらハンカチ届かなくなると俺は思うんだよ、ポスト無くさない?」

「なに言ってるの、ハンカチの為だけにそんな事しないわよ。それに郵便物はどうするの?困るでしょう」

 まぁ家を買ったばっかりだし、オカンが反対するのも無理ない。俺は家を出てハンカチをどこに入れようか考えた。

「おはようございます」左隣の田辺さんだった。田辺さんは玄関先で花に水やりをしている。

「おはようございます」俺は頭を下げながら挨拶をする。

田辺さんは俺が手に何か持ってはいないだろうかと確認するように目を細めてじーっと手元を見ている。


 俺は、自転車に乗り、もう一度頭を下げて田辺さんの前を通り過ぎる。


「いってらっしゃい」安心した様子で田辺さんは手なんか振っていて、それが、どこか不自然な気がした。

 行く当てのない俺は、とりあえず近くのコンビニへと向かうことにした。

 ウインナーのホットドックを買い、公園のベンチに座りホットドックの封を開ける。そして、勢いよくガブリとかぶりつく。


おぉ!なんだこのウィンナー、ポリポリしてんじゃねーか。うまっ。


 てっきり俺はふにゃっとしたウィンナーだと思っていたのだが、は?これで130円とか安いだろー。

 あっという間に食い終えてしまった俺は、ハンカチをどこに入れるか考える。

 このハンカチ持っているだけで、気が重いんだが……。


 早くどこぞかの家に入れてしまって楽になろう。

 よしっ。

 気合を入れ直した俺は、自宅の方まで戻り、俺の家の庭側に建っている大阪さんの家のポストにサッと入れて、自転車を漕ぎまくった。

 後ろを振り返る、しかしもしかしたらこの前西津さんが使った細い道で追いかけてくるかもしれない、俺は鍵もかけずに自転車を停めるとすぐに家の中に入った。セーフ。

 ハァハァー。よしっこれでいい。

 「亮介お帰りー」

「オカン入れてきたよハンカチ」

「あらそうだったわね、ハンカチは誰かの家に入れるんだったわね、まぁ中に入りなさい」

 俺は窓から外を覗く。よし、誰も来ていない……。


「それで亮介はどこの家に入れたの?大丈夫だったの?」

「あぁなんとかね。追いかけられることもなかったし」

「そうなの?ねぇ本当にこの辺の人みんなこの事知っているのかしら?お母さん近所の人とまだそんなに話したことはないけど、人が良さそうな方々ばかりでしょう?」


「いや、まぁそうだろうけどさ、でも皆も言いたくても言えないんじゃないかな?言いたいというか聞きたくても聞きづらいとかさ」

「そうなのかしらねぇ、でどこの家に入れたの亮介は」


「向こうの家、庭側の家ほら、あそこの家、大阪さんって人の家に入れた」

「あなたが入れたってばれてない?」


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