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「本文 関谷君、さっきはびっくりしたね。お香焚いてみてくれたかな?私の方は無事に欲しいゲームソフトが変えました♡」
俺もゲームソフト買いに行きたかったぜ……。メールを見ると俺はそのまま返信はせずにポケットに携帯をしまい込んだ。
この辺の道は車通りはそこまで多くなくて、朝晩は犬の散歩をする人をみたりするが、そこまで人通りも多い場所ではないので、家の前の道路に出てもそこには俺しかいない、という感じだ。
そこに立っている本人は気が付かなくても、家の中にいる人間は俺の事に気が付きやすかったりするのだろう……そう思いながら関井さんの家の人と目が合う。
あれは、多分赤いハンカチを入れられないか見張っているんだろう。
俺は関井さんの家を通りすぎて東側の家の西津さんの家にササッと近づきポストに赤いハンカチを入れた。そして家に向かって歩いて帰った。
良かった、今回も無事に入れられた。玄関のドアを開けようとした瞬間に
「お疲れ様、はいこれ」と赤いハンカチを持った30代後半ぐらいの男の人に声を掛けられる。
「……こ、これは」
「そうそう、簡単に入れられると思ったら間違いだぞ」
「……」
その人はそういうと俺が来た道をトボトボと帰り始めた。
「待ってください。あの、西津さんですよねどうやって俺より早く?」
「向こうにも道があるんだよ、知らないのかい少年?」
「向こう……」俺は西津さんが指す方向を見た。あれたしかあそこは神戸さんちで行き止まりだったはず……。
「向こうには、細い道があって繋がっているんだよ知らなかったのか」
「細い道?西津さん、もう一つ教えていただけませんか?」
「この赤いハンカチは本物のゲームですか?子供のお遊びじゃなくて」
「最近引っ越してきたばかりでワケ分からんだろうが、まぁ知らんふりしない事だな……俺が言えるのは」
「誰が何の為にこんなことをするのでしょう……」
「せきたに君だっけ?少年の名前は…」
「せきやです」
「全力疾走でやらなければ勝ち残れんからな、まぁガンバローやお互いにな、それじゃ」
「えっと……」
そういうと、西津さんは帰って行った。
俺はハンカチを握りしめながら暫く突っ立っていた。
……ハンカチ。このハンカチを戻されたと言う事は、マイナスポイント一点。
俺はB団地に向かって走り、多田と書いてあるポストに赤いハンカチを投げるようにして放り込むと後は全力疾走で家まで走り玄関に入った。




