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その声に振り向くと、私服姿の川嶋さんだった。
「お~川嶋さん」
「関谷君こんなとこで何してんの?デート?」
「……いや、ちょっと買い物に」
「え~どこに買い物に行くの?」
「いやちょっと……。あそこ、ショッピングモールに」
ゲームショップっつーよりショッピングモールって言う方が、なんていうかオシャレな感じだろう?
「そうなんだ」
「川嶋さんは?」
「私はゲームショップに行こうと思って」
え!え?そうなのか……なんで俺はショッピングモールに行くなんてアホな事言ったんだよ、俺のドアホ……。
「そ…そうなんだ」
「あ、電車来たね。じゃあね関谷君」
「うん……」
「あ、そう言えば関谷君お香とか好き?」
「お香?」
「そう、さっきすっごい安売りしているお店があったんだ。もし良かったら使ってみて?なんだか部屋がキラキラする感じがするから」
「あ……ありがとう」
「じゃあ関谷くん、また学校でね」
「おう……」
そう言って俺はゲームショップと真反対の方角に進んで行った。何やってんだよ俺は……。
あれだな多分。女の子と話すことに慣れていないから、いつも通りの自分ではない自分と真逆の事をしてしまうんだろ……(ん?姉貴も女だろだって?じゃあ聞くけど、母親の事を女として見れますか_?姉貴もまったく一緒で、あれは女でなくて血の繋がった生命体とでも言っておこう笑)
俺は、川嶋さんの後ろ姿が見えなくなるのを見ていた。あの時素直にゲームショップと言っておけば、今頃俺はゲームショップに向かっていたと言うのに。でもまぁ川嶋さんと二人でゲームショップに行くのも……だよな~。
俺は近くの公園のベンチに座った。
さっきもらったお香を見てみる。
セージ、ローズ、ムーン、チャンダン……。
帰ったら焚いてみるか。姉貴が「あんたの部屋男臭いのよ」なんて言っていたから、ちょうどいいな。
川嶋さんって毎日お香焚いてるのかな……しかも風呂入った後とか……ぐふふ。俺の妄想は広がる。はるか彼方まで。




