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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第一章 始業
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その声に振り向くと、私服姿の川嶋さんだった。


「お~川嶋さん」


「関谷君こんなとこで何してんの?デート?」

「……いや、ちょっと買い物に」


「え~どこに買い物に行くの?」

「いやちょっと……。あそこ、ショッピングモールに」

 ゲームショップっつーよりショッピングモールって言う方が、なんていうかオシャレな感じだろう?


「そうなんだ」

「川嶋さんは?」


「私はゲームショップに行こうと思って」

え!え?そうなのか……なんで俺はショッピングモールに行くなんてアホな事言ったんだよ、俺のドアホ……。


「そ…そうなんだ」


「あ、電車来たね。じゃあね関谷君」

「うん……」

「あ、そう言えば関谷君お香とか好き?」

「お香?」


「そう、さっきすっごい安売りしているお店があったんだ。もし良かったら使ってみて?なんだか部屋がキラキラする感じがするから」

「あ……ありがとう」


「じゃあ関谷くん、また学校でね」

「おう……」

 そう言って俺はゲームショップと真反対の方角に進んで行った。何やってんだよ俺は……。


 あれだな多分。女の子と話すことに慣れていないから、いつも通りの自分ではない自分と真逆の事をしてしまうんだろ……(ん?姉貴も女だろだって?じゃあ聞くけど、母親の事を女として見れますか_?姉貴もまったく一緒で、あれは女でなくて血の繋がった生命体とでも言っておこう笑)


 俺は、川嶋さんの後ろ姿が見えなくなるのを見ていた。あの時素直にゲームショップと言っておけば、今頃俺はゲームショップに向かっていたと言うのに。でもまぁ川嶋さんと二人でゲームショップに行くのも……だよな~。


 俺は近くの公園のベンチに座った。

 さっきもらったお香を見てみる。

 セージ、ローズ、ムーン、チャンダン……。


 帰ったら焚いてみるか。姉貴が「あんたの部屋男臭いのよ」なんて言っていたから、ちょうどいいな。


 川嶋さんって毎日お香焚いてるのかな……しかも風呂入った後とか……ぐふふ。俺の妄想は広がる。はるか彼方まで。


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