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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第一章 始業
17/149

17

「速さ勝負のゲームなところあるしな。まぁこのハンカチは俺がどこかの家に入れておくよ。姉ちゃんは普通通りにしててよ」


 不安そうな姉貴の顔を見て俺が出来ることは、これぐらいが今は精いっぱいだった。

 あと4日……それまでにこれをどこかの家に失敗しないように入れないと。


 俺は次の朝、紙とノートを持ってA団地とB団地を回った。今後の為にどこに誰が住んでいるのかを調べる為に。


 まず俺の家の筋から調べていく、右から神戸、古川、俺の家、田辺、福田……そして、東側の方の家の筋は……えーっと近藤、丸中、大阪……「おはようございます」急に声をこけられた俺は驚いて背中がピクリと動く。


 近藤さんの家の人だった。「おはようございます」俺は大阪さんの隣の家とその次の家の名前を急いで確認しながら走るようにしてそこから去った。

 西津、伊藤……と。


 なんで俺はこんなにドキドキしているんだ。別に悪いことをしているわけじゃないのに……。

 そして、伊藤、木村、関井そしてビルの中にも入りポストをチェックした小林、山本、小島、赤月、、で、俺の家の西側の道は、山田、宮澤、田中、松下、清水、そして山田さんの家の反対側の中年女性の家山口さん、山形、川嶋……。


 そして俺は清水家の家のポストに赤いハンカチを入れ、走った。とにかく走りまくって家に帰る。

 幸い清水さんは追いかけてくる様子がなかった。 


 ふーう、良かった。これで赤いハンカチは無事に次の人の家に入れることが出来た。

 もしかして追いかけてきてないよな……不安に思った俺は玄関から入ってすぐの廊下にある窓からポストとジッと見た。


 うん、誰も来ない……ふうーっ。


 俺は自分の部屋に行き、さっきの紙を見ながら別の紙に清書した。俺の家の前までがA団地でそれより上はB団地と……。


「亮介~朝ご飯食べなさい」

「あ、今行く」


紙とペンを置いて階段を下りる前に、ちょっとトイレ。


お~このトイレットペーパー柄もついているけど、匂いまでついてるじゃないか。オカンってトイレットペーパーまでこだわるよな。

 まぁ姉気が言ってんのか分かんないけどさ。


「亮介~冷めるじゃない早く下りてきなさい」


 分かってるって……。なんでこう、オカンていう人はいつだって俺がしようと思っていたのに言うかね~小さいころからそうだったよな~。


 今から宿題やろうって時に限って、宿題しなさいとかって言うんだよな~もう少し放っておいてくれた方がやる気になれるのに……と思っていたのだが。


「遅いじゃない、みんな先に食べちゃってるわよ、早く食べなさい」

「トイレに行ってたんだよ」


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