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アルバイトが終って帰宅するなり、姉貴が「亮介―」と言いながら俺の耳を引っ張り二階に引きずりこむ。
「あ痛た、イッテ……」
俺の部屋に入りいつもの様にバタンと扉を勢いよく閉めてから「亮介、今朝の話の続き教えなさいよ」とそう言った。
……まったく姉貴はいつだって強引なんだから……。しかも、なんで毎回俺の部屋なわけ……まぁ姉貴のピンクだらけの部屋に行ってもね……、それはそれで不満が湧き上が……と抑えきれない気持ちをブツブツ言っていたのだが、視線を感じて姉貴の顔を見ると姉貴は鬼のようにして目が吊り上げっていた。
ヒィ……。
おどろおどろしい……。
「で、一体なんで白い紙が入っていなかったって言うわけなのよ」
「だから、今回マイナスポイント0だからじゃないかな?一か月でマイナスポイントはリセットされるって書いてあったじゃん。だから俺が神戸さんのポストに赤いハンカチを入れて、それがどこに回ったのかは分からないけど、とにかく俺の家で
はないところで回っているうちに一か月が経ったんだと思う」
「ふーん。で赤いハンカチどうしたわけ?」
「まだ持ってる」
「どうするの?」
「うーん……。山本さんは二ヶ月前に引っ越したばかりだったと言う事はほぼ俺らがここに来た位だろう?だから多分この赤いハンカチが本物の殺人ハンカチ落としだとしたら、山本さんは信じなかったんだと思う、俺らが初めに思っていた様に軽いイタズラだと思っていたんだと……でそのまま25日が経ったんじゃねーかと俺は思うんだよ」
「うん…亮介はこのハンカチ落とし本物だと思ってるの?」
「……半分信じたくない気持ちでもう半分は続いてる出来事を見て信じてる自分がここにいる……。 あ、そういえばそれで思い出したんだけど俺この辺の団地入った瞬間に視線を感じる気がしていたんだけど姉貴はそんなことない?」
「…う~ん、どうかな~確かに誰かに見られているように思う時があるわね、なんで?」
「いや、俺今日山本さんの家の前の方までわざわざ行ってみたんだけど、視線感じるなと思って振り向いたらすぐ傍には誰もいないんだよ、でも誰もいないなって思いながら正面向く最中に山口さんの家のカーテン越しに動く人影が見えて、でもまだ視線を感じてもう一回振り返ったんだけど、山口さんの家の目の前の家の人、山田さんが窓越しから俺を見ていたのか、俺と目が合うと慌てて目を逸らしたんだよ」
「ん?どういうことあんたを見てなにかあるわけ?」
「いや、だからさこのA団地B団地の人皆がハンカチ落としの事、知っていることだったとしたら自分の家に入れられないかいつも見てるんじゃないかと思うんだよ」
「やだ…なんか怖い…」
「気味が悪いよな……」
「誰が何の為に……」
「いやそれなんだよな~。それだけは色々考えて見たんだけど全然わかんねーわ。だってそうやって人殺してもそれこそマイナスポイントばかりのデメリットだらけだろう?」
「近所の人に聞いてみる?」
「それ俺も考えたけど、もしハンカチ落としが本物だったとしたら、それを教えてあげなければその人は信じないで終わってしまうかもしれないだろう?そう思ったら聞いても知らん顔すると思うんだよ、それに前に家族で挨拶言った時に隣の人だったか合言葉は全力疾走って言ってただろう……?あの人この事を言っていたんだと思うんだよ」
「……」




