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そういえば、俺には前から気になっていたことがあった。
この団地を通る度にいつも視線を感じる気がしていたのだ。ずっと気のせいだと思っていたのだが……。
俺は引き戻していつもの道を通って学校に向かった。
今回赤いハンカチしか入っていなかったという事は、俺の家よりも先に白い紙と赤いハンカチが一緒に入っていた所があるはずだ。
山本さんが亡くなった事を知ったのが今日だから……そうか!でもオカンは新聞取ったのが5時前と言う事は、5時から俺が確認する7時前に誰かが俺の家に入れた……ということか……。
俺は直ぐに姉貴に電話を掛けた。
「もしもし~亮介~」
「姉ちゃん今日オトンと一緒に山本さんの所に行くときに誰か見た?」
「うーんどうだったかな…そう言えば隣の人……古川さんだっけあの人の家の玄関が開いたような気がしたけど。でもそれどころじゃなかったから、しっかりとは見ていないんだけど。なんで?亮介もしかしてハンカチが……」
「そうなんだよ。姉ちゃんから話を聞いてすぐにポスト覗いたらあったんだよ」
「……で、何て書いてあったのよ?」
「いや、白い紙は入っていなかったんだよ」
「どういうこと?」
「いつも入っていたじゃない、入れ忘れたって事?」
「そうじゃないと思う……」
「関谷君おはよう」
電話をしながら、自転車で立ち止まったままの俺はその声に振り返る。
「川嶋さん……。あ、ごめんまた帰ったら話す。それじゃ」
「亮介、もしもし?亮介」姉貴が俺の名前を呼ぶのは聞こえていたが俺はプチッと電話を切った。
「おはよう」
「おっはよ~今、誰とお話ししてたの?」
「いや…ちょっと…」
「ふ~ん、まぁいいけどさ。じゃ後でね、バイバ~イ」川嶋さんは俺に手を振りながら俺を追い越して自転車を漕いで行った。
教室に入ると川嶋さんは席について携帯をいじっていた。そして、俺に気が付いて「やっときた~」と言った。
「あの後また電話してたの?」
「ううん…」
「でも、それにしたら遅くない?」
「まぁ、あの後コンビニに寄ったから」
「あ、分かったエロ本買ったんでしょう」
「ぐっ…ゴッホンゴッホン…」なんて事を聞くんだよコイツは…。
「大丈夫?」
「あ…うん。買ってないよ本なんか」
「何?ムキになっちゃって。ますます怪しいなぁ~ほら、カバンの中みせてみろ~」そういって川嶋さんは俺のカバンを取り上げた。
「おい、やめろって」
「あっかんべー」
その時だった、川嶋さんが奪った俺のカバンを取ろうとした瞬間にポケットに入っていたハンカチが床にポトンと落ちたのだった。
「関谷君それ……」川嶋さんは酷く驚いた表情をしながら言う。
俺は慌てて赤いハンカチを拾い上げポケットの中に収める。
その瞬間にホームルームが始まる鐘が校内中に鳴り響いたのだった。
「昨日も言いましたが、今日は席替えをします。視力などの理由で前の席がいい人は先に申し出るように」
席替えをして、川嶋さんとは端と端の席になった。
昼休憩にでも、川嶋さんは何か言ってくるかな?と思ったけど、川嶋さんは友達とご飯を食べたり話が盛り上がっているみたいで忙しそうにしていた。
エロ本か…通学路沿いのコンビニなんかで買うわけねーだろ……。




