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「いいや、俺は……」そう言って店員さんを手で合図して呼び
「ナポリタン一つとオムライス大盛り一つ」と言った。
「やっぱりオムライスなんじゃない」そう言って川嶋さんは呆れるようにして笑った。
そして美味しく食べ終わり腹もいっぱいになった所で店を出て、色々とショッピングに付き合ってから、冷や汗をかきながらホラー映画を観終わる頃にはもう既に外は暗くなっていた。
そして夜景が綺麗に見える所まで二人で行き、そして大丈夫だ、そう言って自分を励ましてから川嶋さんに言った。
「なぁ川嶋さん今日は楽しかったし、俺は川嶋さんといるとすごく楽しいんだ」
「うん私も」
「おれとつ、つつ…」
「あら?亮介じゃない!」振り返ると姉貴が友人を連れて立っていた。
げっ!
なんでこんな所にいるんだよ。
「姉ちゃん」
「あんたこんな所で、もしかしてデート?」そう言ってニヤリと笑った。
「……」
「この子と中華料理食べに行ったんだぁ?綺麗な子って言ってたけど、本当に綺麗な子じゃない。二人きりでいい感じだったって」
「……」なんでそれを今言う?っていうかなんで知ってんだよそんな事!
「じゃあまぁ。亮介逃げられないようにしなさいよ~じゃあごゆるりと~」そう言って姉貴は友人と車に乗り込みどこかへと去って行った。
嵐の前の静けさだけが、そこに残った。




