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「宛先:川嶋さん
差出人:####44A
件名:Re:ありがとう
今ゲームしてる また明日 お休み」
「差出人:川嶋さん
宛先:関谷くん
件名:おやすみ
たまには関谷くんからメールくれるの待ってまーす♡
では、また明日ね~おやすみなさい♡♡」
なんかさ、返信してくるの早いよなぁ。
もしかして教科書みたいなマニュアルがあってそれに従って書いているのかと思う程の速さだよな~。で♡マークとかさ……。でも姉貴からのメールでも♡マーク使って送られてきたりするからなぁ……でも嬉しいよな。
翌朝、パトカーのサイレンの音で目が覚めた。眠い目をこすりながら下に降りる。
「おはよう」
「亮介おはよう、珍しいわね、あなたが7時前に起きてくるなんて」
「いや、サイレンがうるさくてさ」
ガチャン____。
姉貴と父親が帰って来た。
「亮介、ちょっときて___ 」
……いてっ。
姉貴が無理やり俺の手を引っ張る。なんだよ…何事だよ。
姉貴は俺の部屋に入るとバタンッと扉を思いっきり閉めて「大変なの」と言った。
「朝っぱらからどうしたっていうんだよ」
「今、お父さんと見に行って来たんだけど…すぐそこのビルの人山本さんって言う人亡くなったらしいの。自殺だろうって言ってたんだけど…その人二ヶ月前位に越してきたばかりの人らしいのよ」
「2か月前……」
「そうよ。赤いハンカチとかそういう事は何も聞けなかったんだけど……」
それを聞いて俺は直ぐに階段を駆け下り、ポストを開いた。
……あった。赤いハンカチが……。すぐにそれをポケットに入れて家の中に入った。
「オカン、今日新聞取ったの何時だよ?」
「新聞?朝の5時くらいかしらね?」
「その時、新聞だけしか入ってなかった?」
「入っていなかったわよ。な~に?亮介最近どうかしたみたいよ。彼女がいても構わないけど、お願いだから間違いだけは、ないようにしなさいよ」
「だからそんなんじゃないって……行ってきます」
「亮介、ごはんは?」
俺は自転車に跨り亡くなった山本さんのビルの前を通った。ポリカブが2台停まっていた、特別、野次馬の様な人はいなかったが、背後から視線を感じて振り向く……しかし、誰もいない。正面に戻る瞬間に、隣の一戸建ての山口さんの家でカーテン越しに動く人影が見えた。
しかしまだ視線を感じて振り向くと、山口さんの家の目の前の家の人が窓越しから俺を見ていたのか、目が合うとその人は慌てて目を逸らした。表札を見ると「山田」と書いてあった。




