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「そうなんだ、その服お母さんって感じですごく似合ってるね」
「ありがとう、そう言ってもらえたらお母さん嬉しいわ」
「で、お土産は?」俺も何か言わなきゃと思って言ってみたんだが……。
「……ないわよ。喫茶店だもの。その後すぐ帰ったし、そういえば思い出したわ。今日ねお隣の田辺さんが家の前でウロウロしていたのよ、だから声を掛けたんだけど、そしたらこんにちは~って言ってすぐに家に入って行ったのよ」
「へ~なんか用事があったんじゃないの?」姉貴がハンバーグを食べながら言う。
「うん、お母さんもそう思って声をかけたのよ……でも違ったみたいよ。ゴミでも落ちていたのかしらね?」
それってもしかして……俺は「ポストに何か入ってなかった?」と聞いた。
「う~ん、入ってなかったわよーあっ、そうだわ二つ入っていたわねえ」
「何が、何が入っていたんだよ」俺は驚きのあまり立ち上がってしまった。
「入っていたのは請求書と不動産売却しませんかっていうチラシだったわよ。や~ね~亮介そんなにびっくりして、こっちがびっくりするじゃない」
「あ、ごめんごめん」俺はホッと胸を撫で下ろした。
夕食を終えてお風呂に入り俺は部屋に向かうと、姉貴も一緒にドタドタと上がってきた。
そして、何故か姉貴まで俺の部屋に一緒に入ってきて扉をバタンっと閉めたのだった。
「亮介、あんたあれから何かあったんでしょう」姉貴は凄い剣幕で言ってくる。
「……」
「だから聞いてんのよ、赤いハンカチが入っていたんでしょう?え、どうなのよ答えなさいよ、違うわけ?え?」
……こっ怖___、ぜってー魔女だ、魔女じゃなければ女版ヤクザ……だ。
「いや……実はさあの後色々あって結局二つ隣の家の神戸さんの家に入れたんだよ」
「入れたって赤いハンカチを?」
「うん、いやもう少し厳密に言えば、その前にB団地の山口さんって言う人の所のポストに入れたんだけど、俺が入れた途端、山口さんが「コレ」って言いながら返してきてさ…で、ハンカチが戻って来たから神戸さんが外出するのを見た俺は神戸さんの家に入れたってわけ?」
「ハァ___?何よそれ、なんで今まで言ってくんなかったの?」
「だって姉ちゃん気にするといけないと思ったしさ…これでも弟の優しさですけど」
「は?何ワケ分かんないこと抜かしてんの?そんな事言わなくていいからもっと詳しくおしえなさいよ」
「ハイッ」こえーッッ。
「いやさ、本当の所はよく分からないんだよ。でもさっきのオカンの話からして、もしかして今赤いハンカチは田辺さんの元にあるんじゃないかと思うんだ」
「そーよ、私もさっきお母さんの前では言えないから黙ってたけど……」
「だろ?怪しいだろ?」
「でも、そうだとしても一体そんな事をして誰に何の得があるわけ?」
「だからそれは俺にも分からない。だからこーやって考えているんだろう?」俺はそう言って頭を掻いた。
「もしかして家にまた入れようとしてるのかな……」




