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第一章 始業
閑静な住宅街に俺の親が新築一戸建てを買い、引っ越してきたばかりだ。
玄関に入ると新しい家の匂いがする。木の匂いか……?
父親も母親もマイホームを手に入れるために今まで随分節約して手に入れたマイホームにウットリとして、夢が叶ったという現実がまだ夢見心地だと言っている。
勿論、俺だって嬉しい。
これまでは、狭いアパートに住んでいたため、子供部屋は一つしかなく姉貴と一緒の部屋だった。
お互い思春期に差し掛かった頃だったか、俺が学校から帰ると部屋の真ん中の所がカーテンで仕切られていた。
俺だって見られたくないことだってあるし……。
それは良かったのだが、ただ、カーテンだから色々な音が聞こえてきて、一部屋で姉貴が電話をしようものなら気が散って仕方なかった。
だが、こうして引っ越したことで、晴れて姉とは別々に過ごせる日がやってきたわけだ。
俺は今日の日の為に、学校帰りにせっせとアルバイトをして貯めたお金でテレビとブルーレイを購入したわけだ。
まぁ、それで夜中に何をするのかは言うまでもなかろう。
……もちろんアレだ。ブルーレイに撮りためたアニメを見るためだよ。何か変な想像しなっかったかい?(え?誰と話してんの俺 笑)
それで、俺にも男部屋と言う物が出来たわけさ。
姉貴も舞い上がっていて、姉貴の部屋を見に行ったのだが荷物が入った段ボールが沢山あったが部屋中ピンク色だった。
おいおいおい、勘弁してくれよと思ったが、まぁ俺には俺だけの部屋があるわけだし?まぁ好きにしろって具合だ。
まぁ姉貴にそんな事をいうと5倍、いや10倍以上になって返ってくるだろうことは分かり切ってるから初めから何も言わないんだが……。
まぁ家の中で小さくしている分、心の中位大きな態度でいたって罰はあたらんだろう。
「亮介、ちょっとあんたも降りてきて」オカンがご機嫌そうな声で俺を呼ぶ。
オカンは、引っ越しの準備で寝ていなくて怠いとかいう割には超絶機嫌がいいんだよな。
まぁいつも機嫌が悪いよりはマシだろう。
「何?」と言いながら階段を下りる。
「挨拶に行くわよ、千絵もおりていらっしゃい」
「挨拶?」
「そうよ、家族全員で洗剤持ってご近所に挨拶にいくのよ」
「そんなのオカン一人でいけばいいだろう」
「何言ってるの、これからここの町でお世話になるのよ、家族揃って御挨拶に行くのが筋でしょう」
そんなものなのか……?