第五話 変態VS勇者 臆病主人公はどちらの手に!?
前回のあらすじ【恭介編】
前回では……
天城
「あ、もういいよ。本編始めて」
恭介
「ちょ!? 俺のあらすじは……!?」
天城
「どうせロクなもんじゃないだろう? さっさと始めよう」
恭介
「コノヤローーー!!(゜Д゜)ノ」
《恭介視点》
生徒が千人以上いるこの無限学園の玄関、下駄箱がある場所では、毎朝込み合っている。
生徒達は下駄箱から上履きを取り出し、それを履くと、
「おはよう!」
「おはようございます!」
「ごきげんよう」
「先生おはようございます!」
「おう! おはよう!」
友達や先生にあいさつをして、そのまま教室に向かう。
いつも通りの朝だが、今日は少し違う点がある。
俺こと天堂恭介は、下駄箱で上履きを取り出すことはなく、友達や先生にあいさつはせずに、ただ生徒達の顔を一人一人確認していた。
一人一人確認したら、手元にある資料を見て呟く。
「……違うな……。まさか転校初日から遅刻か……?」
俺がなぜこんなことをしているのかというと、ある一人の少年を探しているからだ。
手元の資料はその少年に関する資料で、資料に書いてある少年の名は真城結希。
今日、この学園に転校してくる転校生だ。
付属している写真を見ると、特徴はくせ毛のある金髪、女の子の服を着させたら可愛い女子と間違えるくらいの美少年。まさしく男の娘である。
俺はその男の娘……って違うか、少年を探し、この学園を案内するように頼まれている。
いや……あれはほぼ命令だな。
頼んだのではなく、命令した張本人はこの学園の学園長、千堂由美。
普通だったら断るんだが……今回は違う。
「……フフフフフフ」
この依頼を達成したら、楽しい楽しい時間が待っているんだ。
数分前の会話を思い出しながら、俺はニヤニヤと笑う。まさか由美があんなことを言うとは思わなかったよ……。
《数分前・学園長室にて》
「転校生を案内しろだと?」
由美のメガトンパンチをくらって、三階から突き落とされた俺であったが、落ちた場所の近くの木の枝に引っかかり、なんとか命拾いした。つくづく自分の悪運に感謝するよ。
学園長室まで戻ってきた俺を迎えた由美は、俺をソファーに座らせ、机から一枚の紙を取り出して、俺の前のテーブルに置いた。
その紙には転校生情報と書かれており、金髪の可愛い女の子の写真が添えられ、その女の子の情報が詳しく書いていた。
紙に書いてある情報を由美の口から転校生を案内してという言葉が出てきたのだ。
「そう♪ 今日は遠いところから転校生が来るんだよ♪ でも来たばっかりだからこの学園についてよく知らないと思うの。だから……お願い! 転校生の案内をして!」
「大変だな。まあ頑張ってくれ、応援しているから」
「わーい♪ 恭介引き受けてくれるんだ♪ 恭介、やっさしー♪」
「話の流れがおかしくない!? 俺はお前の依頼を拒否したんだよ! この際だからはっきり言うぞ! 案内役なんて、い・や・だ!!」
「恭介……! 私のために命を懸けて、案内役を引き受けてくれるんだね! 私……嬉しくて涙が出ちゃう……! 恭介大好き!」
「誰か通訳連れてこいぃぃぃぃーーーー!!!!」
由美はどうやら嫌だという日本語がよく分かっていないみたいだ。
突然だがここで求人のお知らせだ。由美の通訳係を募集する。由美に正しく言葉を伝える自信がある方は、無限学園までご連絡ください。なおメンタルが弱い人や、由美の言葉責めを受けて「由美さん、もっと虐めて……! ハァ……ハァ……!」と言いそうな人は対象外ですのであしからず。
「とにかく嫌だ! 断固拒否する!」
「いいから引き受けるって言えよコラァ!」
「そ、そんなキャラ替えしてもダメだぞ!」
「お願いお兄ちゃん!」
「俺は妹萌えじゃないから」
「ね~え♪ お・ね・が・い♪」
「嫌だ」
「ねえ恭介お願い!」
「ダメ」
俺は由美の頼みを何度も拒絶する。なぜならこいつの頼みごとはロクなのがない。
先週は学園に住み着いた地縛霊を追い払ってくれと頼まれ、危うく呪われそうになったり、三日前は学園にゴミを捨てた暴走族を懲らしめろと頼まれ、ボコボコに殴られたり(ちなみに由美が途中で加勢したが、「恭介! 今助けるからね!」と言いながら、チェーンソーを振り回していたので、俺も暴走族も全力で逃げた。その後暴走族が姿を表すことはなかったという)、とにかく酷い目にあってばかりだから、由美の依頼は受けたくない。
すると由美は頬を膨らまし、「む~~~!!!」と唸っている。関係ないが、この時の由美はちょっと可愛い。
「……どうしても嫌なの……?」
「嫌だ」
「絶対?」
「絶対嫌だ」
「OK?」
「NO!」
何度も拒絶する俺に対し、由美は少し考え、そして口を開いた。
「……だったら恭介……もし、この依頼を達成したら……」
「だから俺は嫌--」
「きょ、恭介の言うことを……な、なんでもしてあげるから……」
……なに?
俺の言うことを……なんでもする!?
「なんでも!?」
「な、なんでも!」
「じゃあ依頼を達成したら、メイド服を着て『お帰りなさいご主人様♪』と言ってもらうとか、裸エプロンになって『お帰りなさいあなた♪ ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ・た・し?』と言ったりするもありか!?」
「へ? それは……ってなに考えているの恭介!? たぶん見ている読者全員引いているよ!」
「うるせぇ! とにかくいろんなコスプレを着てくれるのか!? R18指定ギリギリのエロいコスプレとか!?」
「え、それはいろいろ問題が……」
「知ったことか! はっきり言うぞ! いろんなコスプレをしろ! メイド服、ナース、裸エプロン、チャイナドレスを着るんだぁぁぁぁーーーー!!!! それが条件だ!!」
由美は顔を真っ赤にしながら考えた。
だがもしこの条件が呑めなければ、俺はこの部屋から出ていく予定だ。ギブアンドテイクな世の中なんだ。俺が由美の頼みを聞く代わりに、見返りを求めるのは当然じゃないか。
「わ、分かった……!」
由美は頬を赤く染めながら、意を決して言った。
「や、やってやろうじゃない! メイド服でもナース服でも裸エプロンでもなんでも着てやるわよ! その代わりちゃんと案内しなかったら着ないからね!!」
「交渉成立!!」
俺が由美の依頼を笑顔で引き受けたことは、おそらく今回が初めてだろう。
むろんちゃんと依頼は果たしてやるぜ!!
「さて、さっそく転校生を探しますか! 可愛い女の子の転校生、待っていろよ!!」
「女の子……。恭介本気で言っているの? その子、男の子だよ」
「え……!?」
「ムフフフ……」
玄関で転校生を待っていた俺は、これから始まる面白いことを想像していたので、つい顔がにやけてしまった。
ふふふ……笑いが止まらない……! いつも振り回されている俺の不幸をあいつにも味わってもらおう!
そう……こんな感じに……!
『お、お帰りなさいませ……ご、ご主人様……! もう! 恥ずかしいよ!!』
『お、お風呂にする……? ご、ご飯にする……? そ、そそそそれとも……わ、わわわわ……わた、わた、わわわた……私……?////// や、やだ……! そんな目で私を見ないで……は、恥ずかしい……//////』
『このスカート短い……///// ヤダ////// こっち見ないでエッチ!//////』
萌え萌えコスプレキタァーー!!\(^o^)/
頭の中で百通りのコスプレ姿を想像すると、ニヤニヤと笑いが止まらない。
日頃の恨みをこの機会に晴らしてやる。
「待っていろ由美。お前に萌え萌えエロエロのコスプレを着させてやるわ!!」
「誰に着させるって……?」
「もちろん由美--って、うわぁ!! な、なに奴!?」
俺の背後を取るとは……かなりの手練れか、それとも気配遮断スキルを持っている暗殺者か?
振り返って確認してみると、そこには暗殺者はおらず、一人の友達がいた。
「なんだ灼夜か……ビックリさせるなよ……」
「人をお化けか魔物みたいな言い方すんな」
呆れたようにため息をした灼夜であった。
あ、紹介しよう。目の前にいる金髪ナチュラルヘアーの男は緋神灼夜という男だ。
こいつは中学以来からの友達で、結構つるんでいることが多い。実はかなり珍しい能力を持っているんだが、それはまた今度説明しよう。
「おはよう灼夜。今日もいい天気だな♪」
「……なんだ……? 何か企んでいないか恭介……? お前が笑顔で挨拶なんて、天変地異の前触れだぞ。あ、明日槍でも降るのか?」
「んなわけあるか。ていうか俺が笑顔で挨拶をするのがそんなにおかしいか」
やれやれとため息をついた俺は、持っていた資料を灼夜に渡した。
「由美の……由美学園長の依頼で、この転校生を探していたんだ。見つけたら学園を案内しろと言われてな、依頼を達成したら俺の言うことをなんでも聞いてくれるんだぜ。日頃由美にいろいろとやられているからな、仕返しができると思うと、自然と笑顔になっちゃうんだぜ(キリッ」
「その、『なっちゃうんだぜ(キリッ』が腹が立つが、要は日頃の恨みに無茶な要求をしてセクハラ行為をしようと思っているってことだな」
「灼夜君、人の話をちゃんと聞きたまえ、俺はただ由美にエロいコスプレをさせて、その姿を三時間眺めた後、膝枕をして耳掻きをしてもらい、スカートを少し上げたまえという命令を与え、エロい格好をしてもらい、そのエロポーズを高性能ビデオカメラで録画し、『この映像をネット上にばらまかれたくなければ、俺が登校する際、必ずメイド服で、ご主人様おはようございますと言うんだ!』と、由美に言って、それから……」
「もういい! それ以上言うな!! はっきり言ってかなり引く!! お前本当にこの作品のもう一人の主人公か!!?」
「当たり前だのクラッカー!」
「古っ!!」
まあ灼夜との会話はここまでにして、引き続き転校生の捜索を行おう
それにしても遅いな……もうすぐホームルームの時間になるというのに、一向に姿を現さない。
考えられる可能性は、あまりにも広いこの無限学園で迷子になっているか、それともなにかトラブルに巻き込まれているかだな。
この学園の生徒の中には喧嘩好き、戦闘系な生徒もいるから、トラブルが起きるのは日常茶飯事なのだ。だから何も知らないに転校性が巻き込まれ怪我をするということも珍しい話ではない。
少し不安になってきたな……探してみようか。
「ちょっと転校生を探してくるから、お前は先に教室に行ってくれ。あ、先生にはうまく誤魔化しておいてくれよ」
「分かった。先生には、恭介は由美さんと一緒に大人の階段を昇りましたって伝えておくよ」
「はり倒すぞ!!」
「冗談だww」
笑いながら冗談を言う灼夜と別れた俺は、転校生を探す為走り出した。
早く見つけて校内を案内しないとな。
《響子視点》
青い空、白い雲、今日の天気は晴れ。最高の天気だというのに、私の気分は最悪の大雨の気分だ。
なぜこんな気分で学園に登校しているかというと、すべての原因は昨日の出来事だ。
昨日、いろいろあって機嫌が悪かった私は、気分転換に散歩をしていた際、不良A、B、Cに襲われていた少年を助けた(助けたといっても、憂さ晴らしに不良どもをボコボコにしただけ)のだが、その少年は天から舞い降りた天使のごとく、とてもとてもとてもとてもとてもとても可愛い少年だったのだ。
真城結希という名前の少年とともに喫茶店で色々話したのだが……やはり可愛かった(*´`)……。特にジュースをチューチュー吸っている姿とか……萌え萌えキタァァァァァーーーー!!!!!(*゜∀゜*)
その後、今度家に遊びに来いと言って別れたのだが、家に帰って最悪な事実に気づいた。
結希との連絡手段を整えていなかったのだ。電話番号も知らない、家も知らない、携帯も……って私は携帯を持っていなかった……。
とにかく結希と連絡ができない。最悪の事実に気づいた私は一晩中頭を抱え込みながら後悔し、眠れなかった。
「結希…………お前は今どこにいるんだ……?」
もう一度会いたい、もう一度あの可愛い顔が見たい、もう一度あの声が聞きたい、そして今度こそ……あの頭をなでなでしたい。
もう重症だな……常に考えているのが結希だとは……。
結希……また会いたいよ……。
結希……私におはようって言ってくれないか……?
「あ、響子おはよう!」
むっ!? まさか……結希か!? 結希が私におはようって言ってくれたのか!?
喜びと希望に満ちた笑顔で結希を迎えようと、声のした方に振り向いた。
だが次の瞬間、喜びと希望は、悲しみと絶望に変わった。
「……なんだ……変態か……」
「酷くね!? いきなり変態呼ばわりとか酷くね!?」
そこに居たのは、学園では知らぬ者はいないと言われるくらい超有名人、変態主人公、天堂恭介が居た。
こいつとはクラスが同じで、よく顔合わすことが多いのだが、最悪な気分である私にとってあまり会いたくない奴だ。
なにより変態という理由で会いたくない。ていうか消えろとか言いたいよ。
「ねえ……? 今地文で凄く失礼なことを言わなかった? 俺が見たらショックで自殺しそうなくらいな感じの内容の……」
「気のせいだ。それよりもこんなところで何をしているんだ? もうすぐホームルームの時間だろ? あ、そうか。言わなくれも分かるぞ。これから学園長とイチャイチャタイムに入るんだろう? 人気のないところであんなことやこんなことをするという。ていうかお前、これはギャグ小説なんだぞ。エロを加えたら、いろいろと問題が……」
「ちげーよ!!!! なんでお前らは俺と由美がデキてるみたいな認識をしているんだ!!? 違う違う!! 俺はこの少年を探しているんだ!!」
やかましいツッコミをした恭介は持っていた一枚の資料を私に渡した。その資料には今日転校してくる転校生の情報が書いてある。そしてその転校生の名前を見たのだが、その名前は最近知った名前だったので驚いた。
「真城……結希……だと……?」
「ん? なんだ知っているのか?」
知っているもなにも、私が昨日出会い、萌え萌えした少年だ。
……ていうか待てよ……。
「なあ恭介。結希は転校生なんだよな……?」
「あ? そうだけど」
「つまりこの学園にいずれ来るということか?」
「……いずれというか、今日来る予定だが……」
「ふ、ふふふふふふ……」
「……きょ、響子……?」
「ヨッシャーーーーーーーー!!!!! キタキタキタキタキタァァァァァーーーーーーー!!!! 結希フラグがキタァァァァーーーーーーー!!!!!!」
「はぁ!?」
恭介が惚けた表情をしているが、こんな変態は無視しよう。それよりも重要なのは結希のことだ。
結希がこの学園に来るというのは、私と接触する機会が増えるということだ。
まずは仲良くなることから始めよう。昨日だけでは完全に仲良しになったことにはならない。
もっと仲良くなって、そして……いずれはこのような関係に……。
『結希♪ 今日はフリフリメイド服を持ってきたんだが、着てみてくれないか?』
『はい喜んで!』
『結希、今日は萌え萌えメイド喫茶ごっこをしよう♪ 私が客で、結希がメイドだ』
『はい喜んで!』
『結希……すまないが、お前の頭を撫で撫でしてもいいか……?』
『はい喜んで! あ、でも……優しくしてくださいね……///////』
フリフリメイド服を着た結希が私の目の前に座り、上目遣いでこちらを見ている。そしてその可愛い頭を撫で撫でする……イメージを思い浮かんでいたら…………ああ!! 可愛い!! 可愛すぎるよユウきゅん!!(説明の必要はないのだが一応言っておこう。ユウきゅんとは結希のことだ) 今すぐお前に会って、ナデナデしたい! ハグハグしたい! クンカクンカしたい! ペロペロしたい! ハァ……ハァ……! ただいまの私の興奮は……MAX-----!!!!!!
「おい響子! お前大丈夫か!? 大量の鼻血が出ているぞ!?」
「気にするな。いつもの事だ」
「いつものことなの!?」
相変わらずうるさいツッコミを言う男だな。少しは落ち着いたらどうだ?
そんなことを思っていた私であったが、ふとある疑問が浮かんだ。
「ん? そういえばお前はなんで結希を探しているんだ?」
「説明する前にとりあえず鼻血を拭け。えーっと……由美……学園長から、転校生を見つけて、学園を案内してくれと言われてな、そいつを探していたんだ」
ティッシュで鼻血を拭きながら、恭介の説明を聞いていたが、なるほどそういうことか。学園長の命令で動いていたんだな。
ていうかこいつは教室で『由美の依頼はマジめんどくせぇ』とか言っていたことがあったが、ちゃっかり依頼を受け入れているんだな。やっぱり、由美学園長と恭介はデキているという噂は本当だったみたいだな。
この隠れリア充め……!
「そうか。ではその案内役は私がやろう。お前はさっさと学園長のところに戻って〇◇◎☆でもやってこい。そして爆発しろ」
「ちょ、おま……! ヒロインが言っていいセリフじゃねぇぞ!! ていうか俺と由美はそんな関係じゃ……ってなんだと?」
「何度も言わすな。案内役を変わるからお前は帰れ」
こいつに結希を任せるなんてとんでもない。変なことを教えられ、私の結希が汚れたりしたら大変だ。
それに……結希と仲良くなれるチャンスだ。この機会を逃すわけにはいかない。
だが人生なんでもうまくいくというわけではないみたいだ。現に目の前の変態は不満な表情で私を睨んでいる。
「嫌だ! この仕事は絶対に譲らん!」
「なぜだ? なぜそこまでこの仕事にこだわる?」
「由美のコスプレを……」
「……は?」
「い、いや! なんでもない! とにかくダメなものはダメだ!」
この分からず屋がっ!! 私に全てを任せればいいものを!!
ここまでこいつが拒否するとは想定外だがどうする?
切り捨てるか?
だが死体の処分はどうする?
焼却炉でも捨てるか?
あとの問題はアリバイか……。
「……なあお前、なんか恐ろしい殺人計画を考えてないか……?」
「き、気のせいだ!」
「なぜ焦る!?」
「うるさい! いいから私に案内役を譲るか、切られるかどっちか選べ!」
「どっちも嫌だ!」
激しい言い争いになったが、こいつは私に案内役を譲ろうとしない。とんでもない頑固者だよまったく……。
こうなったら本当に切り捨ててやろうかと考え始め、腰に収めている剣の柄に手をかけようとしたとき、
「あなた達、そんなところで何やっているの?」
声をかけられた。いったい誰だこんな時にと思いながら、声のした方に目を向けてみると、そこには車椅子に座った人魚、クラスメイトのカレン・マルグリットと金髪の少年がいた。
しかしこの金髪の少年は、私の知り合いだった。そう何も隠そう。
「カレン……それに……ゆ、結希!?」
「きょ、響子さん!?」
私が探していた運命の萌え萌え少年、真城結希だったのだ。
こんな形で出会うとは、普通だったら感動の再会のシーンだが、ふと私の頭の中にある疑問が浮かんだ。
なぜカレンと一緒なんだ?
結希の隣は私がいるべき場所なのに!
「響子さん! なんでこの学園に!?」
「それは……私はここの生徒だからだ」
「え!? そうなんですか!?」
驚いている結希もなかなか可愛いな……(*´`) って萌えている場合じゃねぇ!!
さっさと結希を案内せねば、あの変態が!
「やあやあ♪ 君が結希君かい? 俺は天堂恭介、よろしくな♪」
「え、はあ……」
恭介が馴れ馴れしく結希に近づき、結希の肩に手を置きながら挨拶をしていた。
なんて失礼な奴だ! しかも私の結希に触れやがって! 絶対許さん! コロシテヤル!
「ゾクッ!」
「? ど、どうかしました?」
「いや、なんか殺気が……。と、とにかく時間がないからさっさと済まそう」
「は、はい?」
「俺はここの学園長からこの学園を案内するようにと頼まれているんだ。案内するから一緒に行こう」
結希は少し戸惑っていたが、恭介はお構いなしに手を差し伸べる。
私から見たら恭介行動は姫をさらう魔王の如き所業。私の結希をさらうなど、断じて許さん。
私は迷うことなく、腰に挿してある剣を抜き、刃の先を恭介の喉元に当てた。
「ふざけるな恭介! 貴様風情が結希に触れるなど一億年早い! いや、むしろ一生触れることは許さん!! さっさとどこかに消えてしまえ! 学園案内は私がやる!!」
「ちょ、危ねぇよ! 刃物を人に向けんな! ていうかふざけんな!! 脅して俺の楽しみを奪おうとしやがって! この仕事は誰にも譲る気は無い!! この仕事は俺がやらなくちゃいけないんだ!!」
脅しても効果が無い。まあこれは分かっていたことだがな。
この恭介という男はどうしようもない変態なんだが、あることに関しては評価している。
この男は一度約束をしたら、その約束を果たすまで諦めない。約束は絶対破らない。
由美学園長の依頼を受ける際、嫌だ嫌だと言っているが、この男は一度も由美学園長の依頼を失敗したことが無いのだ。例えどんな辛いことがあろうとも、どんなにボロボロになろうとも、諦めたことが無い。
私はそんな男は嫌いではない。……変態は別問題だがな。
いつも以上に必死になっている理由は分からんが、とにかく今回の依頼を達成しようと、こいつは頑張っているようだ。
だが今回は結希が絡んでいるんだ。残念だが、学園案内の権利は……私が貰おう!!
「あのさ、一人の少年を賭けたバトルが勃発みたいな空気になってきたけどさ。ちょっとその空気を壊すみたいな話しをしていいかな?」
私たち二人の間に入ってきたのは、先程結希の隣にいたカレン・マルグリットだ。
人魚ゆえ地上では歩けず、電動車椅子に乗りながら移動しているカレンは、私と恭介、二人を見て、はぁ……とため息をついた。
「なんだカレン? 悪いが忙しいからそこをどけ」
「そうだぞカレン、こいつは本気だ。近づくと危険だから、今日の数学の授業の宿題のノートを置いて下がっていろ」
「悪いけど響子、言いたいことがあるから。それと恭介、かっこよく決めようとしているけど、言葉の中から本音で『宿題を忘れたから見せて』って聞こえているんだけど?」
「はははは、そんな訳無いじゃん♪ カレンは耳が腐ってしまったのかな?」
「あははははは♪ 底なし沼に落ちて死んでしまえ変態♪」
「OTL」
相変わらずこの女は、さらっと笑顔で恐ろしいこと言う奴だな……。
「あのさ……この結希君の為の学園案内役をめぐって喧嘩しているのよね……?」
「そうだ。まあ結希の案内役は私--」
「それ……もう必要ない」
「「……はあ?」」
私と恭介は同じような顔をしている。ポカーンとしたような顔だ。
いきなりカレンは何を言っているんだ?
私の疑問の答えをカレンは語った。
「実は……もう学園の案内は終わったの。ねえ結希君?」
「あ、はい! カレンさんのおかげでこの学園についていろいろ知りました! 教室の場所とか下駄箱の場所とか先生から逃げる際の逃亡ルートとか!」
余計なことも教えていないか!?というツッコミが来るだろうと思うが、今の私の脳内ではそんなことを考えている暇は無かった。
なに? 案内役必要ない? マジで?
「じゃあ……私の萌え萌え友達プランは……?」
「俺の……由美コスプレ計画は……?」
「なんだかよく分かんないけど……とにかく……おつかれ♪」
は……はは、はははは、アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
「「カレン、キサマァァァァァァァァァーーーーー!!!!!!」」
怒りを爆発した私と恭介は、カレンの胸倉を掴み、宙吊りにした。
カレンの尾ひれが逃れようとペタペタと動いている。
「ちょ、苦しい……!! そこまで怒らなくても……!!」
「私の萌え萌えプランがぁぁぁぁーーーー!!!!」
「俺のコスプレがぁぁぁぁーーーー!!!!」
「意味がわかんないわよ!!! ていうか離し……ぐえ! ちょ、お願い……結希君、助け……ぐえ!」
私の怒りを思いしれぇぇぇぇーーーー!!!! カレン・マルグリットォォォォーーーー!!!!!
《結希視点》
あれ? なんでこうなったの?
なんで響子さんとあの変な人怒っているんだ? カレンさん、別に怒らせるようなことは言っていないはずだけど……。
ていうかあの人、俺のコスプレがって言っていたけど、コスプレが趣味なのかな?
それにしても……。
「響子!! 極刑だ!! この女は極刑にするべきだ!! 由美の部屋からチェーンソーを持ってこい!!」
「了解した!!」
「ちょ、あんた達いい加減にしなさいよ!!」
仲がいいな。さっきまで喧嘩していたみたいだけど、どうやら今は仲良くなっているみたいだ。そういえば父さんが「喧嘩するほど仲がいいという言葉がある。だから喧嘩している奴らは大概友達なんだ」とか言っていたな。
いいなあの人……響子さんと当たり前のように会話をしている。しかも噛んでいない。僕も響子さんとあんな会話がしたいもんだよ。
にしてもあの人は誰なんだ? 響子さんの友達かな?
ん? 待てよ……もしかして、響子さんの彼氏!?
……そ、そうだよね……あんなに綺麗な人だもん。彼氏の一人や二人いてもおかしくないもんね。ハハハハハハハハハww
さよなら……僕の初恋……。
響子さん……その人と、どうかお幸せに……。
「ちょっと結希君!? OTLになってないで助けてよ!!」
「結希に縋るな!! この魚の分際が!!」
「コスプレの恨み!!」
「お前らもいい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!!」
さて……そろそろ助けるか……。
由美
「由美ちゃんの部屋、始まるよ~~♪」
恭介
「まだ続くのかこのコーナー!?」
由美
「当たり前じゃん♪ さて、今回は恭介といろんなトークをしたいなと思いま~す♪」
恭介
「トーク?」
由美
「そうだよ! いろいろお話しようよ恭介♪」
恭介
「まあいいけど……」
由美
「じゃあ最初は恋愛トークで! さて恭介はどんな女の子が好みなのかな?」
恭介
「俺の好み……か。なんか恥ずかしいな……」
由美
「いいじゃんいいじゃん♪ はっきり言っちゃえ♪」
恭介
「じゃ、じゃあ……金髪の」
由美
「恭介は茶髪の女の子が好きなんだよね?」
恭介
「いや、金ぱ」
由美
「茶髪だよね?」
恭介
「き」
由美
「チャ・パ・ツ・デ・ス・ヨ・ネ?」
恭介
「……茶髪の女の子が好みです」
由美
「だよね~♪ 茶髪女の子は可愛いよね~♪ 他には」
恭介
「あと巨乳……」
由美
「普通サイズ」
恭介
「あの由美? これはトークだから俺は自由な発言が……」
由美
「普通のサイズだよね……? まさか巨乳が好きだなんて言わないわよね……? 胸が大きい女の子が好きだとか言わないよね……? もし普通よりも大きいのが良いと言うんなら、全世界の普通サイズの女の子を敵に回すけど、イイノ……? キョウスケ……?」
恭介
「……普通サイズの女の子も好みです(涙)」
由美
「そうなんだ~♪ は! 茶髪で普通サイズ……私のこと!? もう恭介のエッチ!」
恭介
「会話が疲れる……。そういうお前はどうなんだ?」
由美
「私? 知りたい? どうしよっかな~♪ 教えよっかな~♪」
恭介
「言いたくないならいいよ」
由美
「嘘嘘!! ちゃんと言うから!! 私はね、恭介みたいな人が好み……かな……//////」
恭介
「へー」
由美
「なにその反応!? ちょっとはときめいてよ!! え……? お、俺みたいな……////// という感じに!!」
恭介
「どうせ嘘だろ」
由美
「う、嘘じゃないもん……本気なんだもん……恭介の……バカァァァァァーーーー!!!!」
恭介
「え!? ちょ、由美!? どこ行くんだよ!!? このコーナーどうすんの!?」
スタッフ一同
『…………………………………………』
恭介
「な、なんだよ……?」
結希
「由美さん可愛そう……」
響子
「最低のゲス野郎だな」
天城
「爆ぜろ」
恭介
「ちょ! お前ら!!」
天城
「さて、では次回予告に移ろう。次回は結希と由美がいよいよ対面! 由美の恐ろしさに結希が震え上がる!? そしてさらにややこしい事態が発生!? いったいどうなるのか!? 次回もお楽しみに!! は~い、みんな! お疲れさん!」
スタッフ一同
『お疲れ様でした!』
恭介
「え!? ちょ、お前ら帰るの!? 由美はどうするの!? お、おい由美!! なんで怒っているんだ!? ねえ、ちょっと!? 由美さん!? 帰っておいでぇぇぇぇーーーーー!!!!!」
由美
「うわああああああぁぁぁぁぁーーーーん!!!!! 恭介のバカァァァァァーーーー!!!!!」