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第三話 喫茶店に入ったら、とりあえずブラックコーヒーとオレンジジュース(ストローを付ける。これ重要!)を頼め

前回のあらすじ【響子編】


私、如月響子は不良の魔の手から、可愛い少年真城結希を助けたのだ。


結希

「ありがとうございます響子様! お礼に……僕は今日から響子様の着せ替え人形になります!!」

響子

「そうか結希! ならばさっそく、このメイド服を着てくれないか!?」

結希

「はい! 喜んで!!」


ドレスチェンジ♪


結希

「どうでしょうか響子様?」

響子

「可愛いいぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!!!! もう可愛すぎるよ結希ちゃん!!! もう! どうしてそんなに可愛いの!? ぺろぺろしていい!? なでなでしていい!? 抱きついていい!? 可愛すぎる!! ハァ……ハァ……マジで萌え萌えしちゃう……! あ、鼻血が……!」


こうして新たなヒロイン結希ちゃんが誕生したのであった。






響子

「完璧なあらすじ……! 自分の才能が時々恐ろしくなるわ!」

天城

「いやいやいやいやいやいやいや!!!! 前回はこんな話じゃなかったぞ!! 勝手な捏造すんな!!」

《結希視点》


 不良達に絡まれていた僕を助けてくれた響子さんと共に、近くの喫茶店に入った。カウンター席に座った僕達に、店員が近づく。


「いらっしゃいませ。ご注文は?」


「えっと……あの……」


 やはり僕は他人と話すのは苦手だ。注文をすぐには答えれなかった。すると響子さんが変わりに答えた。


「私はコーヒー、彼はオレンジジュースで、あとオレンジジュースには、か・な・ら・ず! ストローを付けるように」


「あ、あの……僕はコーヒーで--」


「君はオレンジジュースだ」


「あ、でも--」


「オ・レ・ン・ジ・ジュースだ」


「……はい」


 力強く言ったので、渋々頷いた。

 それにしても、なんでオレンジジュース? コーヒーが飲めないと勘違いしたのかな? 僕はコーヒーのブラックでも飲めるのにな……。


「さて、互いに自己紹介をしよう。私は如月響子。勇者だ」


「あの……さっき聞きましたけど……」


 不良をぶっ飛ばした後、響子さん本人が名乗ったのを覚えている。

 僕が親切にそう答えると、恥ずかしいのか響子さんの頬が赤く染まり口調は荒くなった。


「…………き、君の名前は!? 人に名乗らせておいて、自分は名乗らないつもりか!?」


 あ、そういえば名乗ってなかったな。これは大変失礼なことをしちゃったかな?


「え!? あ、あの、すいません! ま、真城結希っていいます! ど、どうぞよろしく……」


 言えた! 自分の名前を言えたよ! 今までだったら自己紹介なんて全然できなかったけど、今回は上手く出来た! よし! 幸先がいい!


「そうか、真城結希か。結希って呼んでもいいか?」


「え、あ、あの……いいですよ……」


 僕のことは結希でも結希君でも奴隷君でも家来Aでもいいですよ。……いや、やっぱり最後のは無しの方向で。


「なら、結希も私のことを響子と呼べ」


 あ、そうですか。では響子……っていきなり呼び捨てでいいですかね!? 女の人、しかもこんな美人な人を呼び捨てにしたら周りが変な誤解を生みそうなんですけど! 


「え!? そ、そんな! 如月さんを呼び捨てなんて……」


「如月さんではない。響子だ」


「……きょ、響子……さん……?」


「さんはいい。響子だ」


「きょ、きょきょきょきょ、響子……」


「ん? なんだ? 結希」


「!!?//////////////」


 やっぱり無理だ!!


「あの! やっぱり響子さんで……」


 名前で呼び合うのは、やっぱり特別な関係になってからにしよう。今の段階では……やっぱり恥ずかしい……///////


「そうか……まあいい」


 響子さんはどうやら納得したみたいだ。でもなんだか残念そうだけど……どうしてだろう?


「お待たせしました。コーヒーとオレンジジュースです」


「おお、来たか」


 店員が響子さんのコーヒーと僕のオレンジジュースを持ってきた。響子さんのコーヒーからはとてもいい匂いがする。良いコーヒー豆を使っているみたいだ。

 コーヒーを響子さん、オレンジジュースを僕の目の前に置き、店員はぺこりと頭を下げ「ごゆっくり」と言って去った。


「えっと……響子さんは砂糖とミルクは……」


「え? あ、ああ! 私は--」


 ん? ちょっと待てよ……。 かっこいい響子さんなんだから砂糖とミルクはいらないよな。「勇者は砂糖とミルクはいらないのだ!! よく考えろバカ者!!」と言われるのも嫌だし……。


「や、やっぱり! 勇者はブラックですよね!? す、すいません! ぼ、僕、余計なことを言っちゃいましたね!」


「え!? あ、ああ! やっぱり勇者はブラックで飲まないとな! は、はははははははは!!」


 なんでだろう? 響子さんは笑顔で笑っているが、その笑顔は引きつっているような感じがした……。まあいっか。

 それにしても、コーヒーカップの取っ手を片手で持ちながら、ブラックコーヒーを飲んでいる響子さんの姿は絵になるな。さすが勇者だ。きっと清らかな心でコーヒーの味を楽しんでいるんだろうな。







《響子視点》


 う~ん♪……このコーヒー……♪


 にっがああああぁぁぁぁーーーーー!!!!


 なんだこの苦さは!? 魔王が飲んだら裸足で逃げ出しそうなくらい苦いぞ!! え?例えが変? 気にするな。

 こんなことなら砂糖とミルクを入れとくべきだったな……。でも……結希の奴が失望するかもしれない……。こんな感じに。


『響子さんはブラックコーヒーも飲めないんですか? 勇者失格ですね。全世界の勇者に謝ってください。そして僕の前から消えてください。二度と僕の視界に入らないで』


 嫌だ! 結希と別れるなんて嫌だ! 嫌われるのはもっと嫌っ!! 苦くても勇者の勇気と力で飲んでやる!! でも……にが~~い……!


「じゃあ、僕もオレンジジュース飲みますね」


 ピカーン! 待ってましたよこの時を!

 何故この私が結希にオレンジジュースを勧めたのか、何故ストローを必ず付けるように店員に命じたのか。それは全てこの為だ!


 ちゅ~~~。


 うん……♪ やっぱり可愛いよ~~!!!!!

 私の目は間違っていなかった! ストローでオレンジジュースをちゅーちゅー吸う結希の姿は……可愛すぎるだろチクショー!! ああ……こんな結希の姿は萌え萌えくるよ……! カメラかビデオカメラは無いかな!? この可愛すぎる結希を写して永久保存版のアルバムを作りたい!!


 ちゅーちゅーちゅーちゅー……♪ 私も結希をちゅーちゅーしたいよ~~♪






《結希視点》


 ゾクッ!


 ん? なんだ? 今寒気がしたぞ? 風邪でも引いたかな?

 寒気と同時に誰かの視線を感じた僕は、チラッと響子さんの方を見てみる。響子さんは何故か僕を見て……笑っている? なんであんな笑顔なんだろ? ていうか……笑顔の響子さん……可愛い……///////


「ん? どうした結希?」


 響子さんの笑顔を見ていたが、目が合ってしまった。すると響子さんの笑顔は消え、先程と同じような無表情になった。


「え!? あ、な、なんでもありません……」


「そうか……」


 ………………………………………………………………………………。


 その後……会話ゼロ! まずい! 何か喋らないと! せっかくこんな美人と話せるのに、何も喋らないとなると、『女の子と会話ができないヘタレやろう』というレッテルが貼られてしまう! ……あながち間違っていないけど……。とにかく会話だ! え~っと……。


「きょ、今日はいい天気ですね!」


「ああ、そうだな」


「…………」


「…………」


 はい♪ 会話終了♪ オワタ\(^o^)/

 じゃなくて! なにか話をしなくちゃいけないのに、全然話の話題が思いつかない! 僕ってどんだけコミュ力ゼロなんだよ!

 あ~~どうしよう~~!!!




《響子視点》


 ……………………………………まずいな…………。



 全然話の話題が思いつかない! なにか話をしないといけないのに、これでは会話ゼロのまま試合終了でわないか!

 なにか話の話題はないか……ないのか……!


 あ! そうだ!


「結希」


「あ、はい」


「一つ聞いてもいいか?」


「な、なんですか……?」


「ゴスロリとメイド服、着るならどっち?」


「へ?」


「「………………………」」


 世界が凍りついたような感じがした。


「す、すまない……忘れてくれ……」


「あ、はい……」


 バカか! 私はとんでもない大馬鹿者かっ!! いきなりメイド服とゴスロリどちらを着る? とか訳の分からないことを言う奴がいるか!?

 結希は不思議そうな表情でこちらを見ているが、変な人と思われるかな? いや、思われるだろうな……。はぁ……最悪だ……。



《結希視点》


 何だったんだろう? なんでいきなりあんな質問されたんだ? ……いや、待てよ。あの時ちゃんと受け答えしていれば、話が盛り上がったんじゃないだろうか!? だとしたら迂闊だ! せっかく話せるチャンスだったのに……!

 今からでも間に合うか!?


「あ、あの響子さん!」


「え!? あ、なんだ?」


「ぼ、僕はメイド服よりも、ゴスロリよりも……チャイナドレス方が好きです!」


「……………………」


 あれ? 時空が凍結した?


 ……ていうか、僕とんでもないことをカミングアウトしちゃった!?




《響子視点》


 な、なんと……結希はチャイナドレス好きだったか……。

 いや、でも意外とチャイナドレスを着た結希も可愛いかも……/////

 今度執事の爺に頼んで作ってもらおう!




《結希視点》


 ま、まずいよ……僕、変態と思われてないかな……? そ、そうだ! 話題を変えよう! できるだけチャイナドレスと関係ない話題を出して話の空気を変えよう!


「あの……響子さんは勇者なんですよね? どうして勇者を名乗っているんですか?」


「ああ、私は如月家の人間だから勇者を名乗っていいのだ」


「如月家……」


 そういえば父さんから聞いたことがある。引っ越し先、つまりこの町には如月家という、とても有名な貴族が住んでいる屋敷があると。その如月家は国から大変重要な仕事を任されていると聞く。それが勇者……ということだけど……。


「勇者ってゲームや漫画とかに出てくる称号みたいな物ですよね。実際にそのように呼ばれるのって……」


「国を、人々を救い、守ることを使命とし、それを誇りとする一族、それが如月家の一族だ。だから我ら如月家だけが勇者を名乗れるのだ」


「へえ……」


 響子さんはその後色々な話をした。

 響子さんの家、如月家は、代々当主が勇者の名を受けづき、国に害をなす存在を倒していくという。そしてその事件、行動は公には晒さず、極秘扱いとされる。故に如月家は有名なのだが、どういった行動をして国を救ったのかはごく一部の人間にしか知らされていない。だが国を救ったという事実は本当のことなので、沢山の人から如月家当主を勇者と言って崇められているようだ。


「す、すごいですね。でも極秘扱いをされるなんて……このことをもっと多くの人に知ってもらえば――」


「勇者の存在を知っている一般市民には、勇者が行ったのは災害救助や武装集団の鎮圧、犯罪の防止を行ったということを言っている。表ではな……」


「え?」


 表……?


「結希はこんな話を信じるか? 実は数年前この国に核弾頭が撃ち込まれそうになったということを」


「え……ええぇぇ!!!?」


「それとか現総理大臣を暗殺しようとした事件があったとか、大量虐殺ができるウイルスをこの国に持ち込んだテロリストがいたということもお前は信じるか?」


「え!? あ、いえ……あ、あの……!!」


 僕は正直混乱していた。突然響子さんから言われたいろんな言葉。核弾頭、暗殺、殺人ウイルス。僕が過ごしている平和な日常とは無関係なことを、この人は次々に言ってきたのだ。

 こんな話を信じるかって……『こんな話は信じられないが、実は事実の話だ』って言っているような気がしてならない。混乱するな言うのが無理な話だ。


「すまない……混乱しているだろうが、これは事実だ。君達が過ごしている平和な日常は当たり前のようにあるみたいだが、それは違う。この国……いや、世界は常に危険なことでいっぱいなのだ。そういった危険を排除することも私の……如月家の使命なんだ」


「で、でも! 危ないんじゃないですか!? そんな危険なことをあなたが……こ、怖くないんですか!?」


 僕だったらそんな使命から逃げ出す。

 理由は簡単だ。怖いからだ。

 この国を守るために、核兵器を止めろだとか、テロリストを倒せだなんて言われて「はい了解しました」なんて軽々しく言えるわけがない。

 どんな危険が待っているか分からないだから、怖くなるのが当然だ。

 彼女だって内心は怖いと思っているに違いない。僕はそう思っていた。


 だが、彼女の返答は意外なものだった。


「怖いかだと? 私は勇者なんだ。怖いと思った瞬間、その者は勇者ではない。ただの人間なんだ。『如月家たる者、勇気を身につけ、恐怖を振り払い、どこであろうとも勇者であれ』如月家の家訓だ。如月家一代目当主のような偉大な勇者になるために、私は恐怖には屈しないんだ!」


 ……最初はただの強がりだと思った。勇者なんだから怖くないと強がっていて、本当は怖いと思った瞬間が一度でもあったんじゃないかと思っていた。


 だが違った。


 彼女の目はまっすぐで、とても嘘を言っているようには見えなかった。

 思えば先ほどの不良達の戦いでは、大の大人でさえ恐れていた不良達に対し、戦いを挑んだ彼女の姿には恐怖、恐れといった感情は見えなかった。

 女の子なら恐れることなのに……彼女は恐れなかった。

 あの時の姿は、今思えば……本当の勇者の姿だった。


 この人は……冗談無しに、本当の勇者なんだ。


「……すごいですね響子さん……。それに比べて僕は……」


 端から見れば、僕は情けない男にしか見えない……。

 彼女の足元にも及ばないとてもとても情けない男なんだ……。


「僕も……あなたのような……勇者のような人間に……なりたかったな……」


「なりたかった?」


 僕の話を聞いていた響子さんは何か疑問に思ったのか、僕に言った。


「これからなればいいじゃないか」


「無理ですよ……僕みたいな臆病者が勇者になれるわけがないですよ……」


「臆病者だからなれないというわけじゃないだろう? それに結希とこうして話しているうちにわかったことが一つある。君は確かに臆病者だ」


「……………」


「だが臆病であると同時に勇者に必要な要素の一つを持っている」


「え?」


 僕に……勇者に必要な要素の一つが?

 響子さんは優しい瞳で僕を見つめながら言った。


「お前には勇者に必要な要素、優しさを持っているんだ。これは誇ってもいいことなんだぞ」


「優しさ……。でも優しさだけじゃ--」


「もちろん勇気や力といったことも勇者に必要な要素だ。だがそれと同じように……いや、力や勇気以上に必要なのは優しさなんだ。優しさがない勇者など勇者ではない。だから結希、自信を持て。自信をもって胸を張れ。なあに、君ならなんにでもなれるさ。自分の無限の可能性を信じろ」


「自分の……無限の可能性……」


 僕にも勇者になれる可能性がある。自分の無限の可能性を信じろか……。

 なぜだろう……響子さんからそんなことを言われると、何でもできそうな気がする。

 どんな可能性でも、どんなことでもできる気がする。


 響子さんは不思議な人だ。この人の言葉は安心できる。この人の言葉によって僕に足りなかった勇気が出てきそうだ。

 響子さんはやっぱり本物勇者だよ!!


「ありがとうございます響子さん。おかげでなんか勇気が出てきたみたいです」


「そうか。それはなによりだ」


 そう言って響子さんはニコッと僕に笑いかけた。

 うっ……! か、可愛い……//////

 やっぱり響子さんは可愛いな//////


 しばらく僕たちはいろんな話をした。お互いの好きな食べ物の話とか、とても楽しかった思い出の話など、ごく普通の話。だが僕にとってはとても幸せな時間だった。







「今日はありがとうございました!」


「私のほうこそありがとう。久々に楽しい時間を過ごせたよ」


 喫茶店から出た後の僕たちはとても満足していた。

 僕にとってこれほど楽しい会話は今までになかったのだから。


「今日は楽しかった。また君とこうして楽しい時間を過ごしたいものだ」


「そうですね……また響子さんに会いたいです」


「なんなら、今度私の屋敷に来るがいい」


 え!? きょ、響子さんの家に行ける!? でも有名な如月家の家に僕みたいな一般人が言ってもいいんだろうか?


「い、いいんですか!?」


「いいに決まっている。結希は私の友達だ。友達が家に遊びに来るのがおかしいことか?」


「と、友達……!?」


 友達……僕が今までずっと欲しがった存在。

 響子さんが僕を友達と認めてくれたのか……!?

 綺麗でかっこいい響子さんが……僕を友達と!

 こ、これは夢じゃないかな!? か、確認せねば!!

 右手でほっぺを掴み、ギュッと捻ってみた。


「痛い……!」


「??? なにやっているんだ君は……?」


 夢じゃない! やった夢じゃないんだ!

 響子さんと友達になれたのは夢ではなく現実(リアル)だ。

 僕はとうとうリア充の仲間になったんだ。さらば友達がいなかった僕、そして初めまして友達がいる僕。これからよろしくね。

 精神がハイテンションに盛り上がっていた僕であったが、響子さんが僕を心配するような目で見ていた。


「ど、どうかしましたか響子さん?」


「いや……大丈夫かなと思ってな」


 響子さんは僕を心配していたみたいだが、僕はいたって正常--いや、精神がハイテンション化していたんだ。

 まずいな。もしかしておかしな少年と思われているんじゃないだろうか?


「まあとにかく、また今度時間が空いていたら遊びに来てくれ。歓迎する」


「は、はい! ありがとうございます!」


 僕は何度も何度も感謝の気持ちを込めて頭を下げた。

 響子さんはそんな僕を見て苦笑いを浮かべながらその場から別れた。










 その後、家に帰ると恐ろしい二人の鬼(父と母)が待ちかまえていた。

 そしてだいたい30分くらい「どこでなにをやっていたの!?」「買い物くらいでこれだけ時間がかかるのか!?」といった感じに怒られてしまった。事情を話そうと思ったが、二人が怖かったのでブルブル震えながら黙って説教を聞くこととなった。

 説教終了後、部屋に戻った僕はベッドへダイブし、そのまま動かなかった。まるで屍のように。いや死んでないけどね。

 今日はいろいろ疲れたな……。

 買い物に行かされ、不良に絡まれ、そしてとんでもない人……ってとんでもないは言いすぎか。響子さんに出会った。


「響子さん……」


 今の僕の頭の中は、80%響子さん、残り20%はその他いろいろだ。

 響子さんのことで頭がいっぱいだよ。目をつぶってイメージするのは、響子さんの笑顔、かっこいい響子さんの姿、響子さんの綺麗な黒髪、そして綺麗な響子さんの足……。参ったな……完全に惚れてしまったよ……。

 初恋という感情は今までになかった。

 僕をこんな気持ちにさせた響子さんはある意味特別な人だ。

 あの人の恋人になりたいな……。

 だけどあんなに綺麗でかっこいい人なんだから彼氏はいるんだろうな。


「……って、なにマイナス思考になっているんだよ僕は!」


 彼氏がいるかどうかなんてそんなの分からないじゃないか。

 それにあの人は彼氏がいるなんて一言も言っていない。

 つまり僕にもまだチャンスがあるんだ!

 僕はこの新しい町で新しく生まれ変わるんだ。

 その第一歩として……僕はいずれ響子さんに告白する。


『出会った時からあなたのことが好きでした』


 こういった感じに告白するんだ。

 まあでも……すぐには告白はしないよ。まずは響子さんともっと仲良くなることから始めよう。

 その為にも響子さんの家に行って、あの人とまた仲良く喋って--


 ん? 待てよ……?


 そういえば僕……響子さんの家知らないよ!!


 いや待て待て! 知らないなら聞けばいいじゃないか。響子さんに連絡して--


 ……って、響子さん電話番号知らねえぇぇぇぇーーーー!!!!


 なんてこった! これじゃあ連絡も取れないじゃないか!

 今度いつ会えるか分からないのに、連絡が取れないんじゃあ話にならない!

 このまま僕は響子さんと永遠に会えないのか!?


「うわあああぁぁぁぁーーーー!!!! 僕のバカバカバカバカバカバカバカバカバカァァァァーーーー!!!!!!」


 やっと三話まで来たのに、ここで絶望タイムだよぉぉぉぉーーーー!!!!


『結希! ちょっとうるさいわよ!! それからご飯ができたからさっさと来なさい!』


「ごめんなさい母さん! 今の僕は絶望タイム中なんだぁぁぁぁーーーー!!!!!」


『なにわけの分からないことを言っているの? とにかくご飯ができたからね。早く来なさいよ』


 ああぁ……終わった。僕の初恋は終了……。

 もう嫌だ……この小説、今回で終わりにしようよ……。

 今までご愛読ありがとうございました……。

 次回の天城先生の作品をご期待ください。


天城

『勝手に終わらすなぁぁぁぁーーーー!!!!(怒)』


 ん? なんだ? 今、天の声が聞こえたような……?




《結希視点終了》








 台所にて結希の母と父が結希を待っていた。


「結希……どうかしたのかしら? ここに引っ越してからおかしくなったような……? ねえ、あなた」


「母さん、心配しすぎたよ。結希だってもう子供じゃないんだから」


「でもあの子、昔から気弱だからすぐに虐められるのよね。今度の学校は大丈夫かしら?」


「大丈夫さ。結希が今度転校する無限学園は面白いところだって噂になっているんだ。それに、事前にその学園の学園長に連絡したらこう言ったんだ」



『分かりました♪ その結希君を徹底的に鍛えておきますね♪』



「……あなたその人大丈夫なの……? なんだか私、心配になってきたんだけど……」


「ハハハハ! 母さんは心配性だな。大丈夫だって! その学園長はこうも言ってあったんだから」



『大丈夫ですよお父さん! 結希君をおも……一人前の男にさせてあげますよ♪』



「あなた本当に大丈夫!? その人、結希のことをおもちゃって言おうとしていなかった!?」


「ハハハハハハハハ! 大丈夫大丈夫だって♪ ハハハハハハハハ!!」










 結希が向かう学園、無限学園。

 そこで無限の出会いが待っているということは、今の結希は知らなかったのである。










《おまけ♪》


 一方その頃、如月家では……。



「うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!! 私のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカァァァァーーーー!!!!! 結希を家に誘おうにも、結希が私の家を知らないんじゃ意味が無いじゃないか!! しかも連絡先聞いてないから結希の家の電話番号が分からないよ!! ていうか私……携帯電話持ってねええええええぇぇぇぇーーーー!!!!!」


「うるさいぞ響子!! 近所の迷惑になるだろうが!!」


「うっせえよクソオヤジ!!!(怒) 絶望タイム中に話しかけんな!! 私の今の心境はラスボス前でセーブしたと思っていたら、実はしてなくて、電源切った後再開したら、ラスボスステージの三つ前のダンジョンのセーブデータから始めるという絶望的状況と同じくらい落ち込んでいるんだよバカ!!」


「例えが分かりにくいわ!! ていうか親に向かってなんだその口の効き方は!?」



 相変わらず仲が悪い如月家の親子であった。

天城

「後書きコーナー始まるよ~♪」

恭介

「醤油ディ○インバスター!!!!」

結希

「……恭介さん?」

恭介

「醤油ディ○インバスター!!!!」

響子

「なにやっているんだアイツは?」

恭介

「醤油ディ○インバスター!!!!」

由美

「…………恭介、ちょっとうるさいんだけど」

恭介

「醤油ディ○インバスター!!!!」

結希

「天城さん、恭介さんになにかあったんですか?」

天城

「嘘をついたまま引きずるのもなんだかなと思って、醤油ディ○インバスター!!!!と叫んだら許してやと言ってあるんだ。ほれ、あの恭介が首から提げているプレートをよく見てみ」


『私、恭介は嘘をついていました。な○はさんごめんなさい』


結希

「な○はさん……?」

響子

「ていうかなんで醤油ディ○インバスター?」

天城

「ヒントは感想だ」

結希・響子

「「???????????」」

由美

「もう! 恭介の訳の分からない行動なんてどうでもいいわ!! それよりも後書きコーナーをやるわよ!!」

結希

「でも、もう始まっているんじゃないんですか?」

恭介

「醤油ディ○インバスター!!!!」

由美

「あんなのオープニング程度のネタよ!! これからが本番よ!! という訳で今回から始まる新コーナー! 題して『由美ちゃんの部屋』が始まるよ~♪」


ル~ルル♪ ルルル~ルル♪ ルルルル~ル~ルル♪


結希

「なんかへんなコーナーが始まったんですけど……」

響子

「ていうかこれ、あの番組をパクってないか?」

由美

「細かいことは気にしない! さっそく始めるわよ! では今日のゲストを紹介するわ♪ 結希君と響子ちゃんよ♪」

結希

「僕達!? え、僕達がゲストですか!?」

由美

「だってゲストを呼ぼうにもお金がないもん……」

結希

「金の問題!?」

響子

「まあ良いではないか結希。たまにはこんなコーナーがあっても」

由美

「響子ちゃんの言うとおりだよ♪ じゃあさっそくトークを--」

天城

「なあ由美? この由美ちゃんの部屋はあとどれくらいやるんだ?」

由美

「ん? 予定だとあと三時間」

天城

「三時間!? そんなにやんの!? いや後書きコーナーが長すぎるのはどうかと思って、次回予告をやって終わろうかなと思っていたんだが……」

由美

「えええええぇぇぇぇぇーーーー!!!!? じゃあ『由美ちゃんの部屋』はどうなるの!?」

天城

「ごめんね、てへぺろ♪」










《粛清中しばらくお待ちください♪》








由美

「仕方ないな……じゃあ次回の後書きコーナーは『由美ちゃんの部屋』をやるわよ♪」

結希

「あの……作者は……?」

由美

「結希君、世の中には知らなくていいこともあるんだよ♪」

結希

「……そうですか……」

由美

「それじゃあ次回予告ね! 次回は……みんなお待たせ!! いよいよ無限学園の登場だよ!! そして私達、第二の主人公とヒロイン、恭介と由美ちゃんも登場します!! 前作よりもラブラブになった私達。そして……第四話でいきなりのラブシーン!? 恭介……だめだよ……///// いきなり○○○○するなんて……////// あ! だめ……//// 恭介のエッチ……///// みたいな展開があるかもしれない♪ スケベな恭介の活躍も期待していてね♪ じゃあまた次回会おうね♪」





恭介

「この次回予告は嘘だああああぁぁぁぁぁーーーーー!!!!! 俺がそんなことをする訳ないだろうがっ!!!!!」

結希

「あ、戻った」

響子

「次回が楽しみだな(ニヤニヤww)」

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