第二話 勇者、可愛い美少年に会う
真城結希の一言
こ、これからも、よ、よよよよよろしくおねがいしましゅ!! ってまた噛んだ!!!!
真城結希を助けた謎の美少女。
彼女はいったい何者なのか。勇者と名乗る彼女の正体はいったいなんなんだ?
結希達が喫茶店に行く前に、そういったことをはっきりさせようと思うので、彼女について語ろう。
彼女についての話は、結希が不良達に襲われる20分前の出来事から始めていこう。
《結希が不良達に襲われるまで、あと20分》
結希達が引っ越してきた平和な町の中心に、いかにも大金持ちが住みそうな巨大な屋敷がある。
その屋敷には伝統ある一族が住んでおり、この町の人間の中で、彼ら一族を知らない者はいない。
それほどこの屋敷に住む一族は有名なのだ。
さて、この屋敷の客間に、一人の立派な髭を生やした、中年の男が居た。
その男は客間をうろうろしていて、なかなか落ち着かない様子だ。
彼は如月源十郎。この立派な屋敷の主であり、名門、如月家の当主である。
源十郎は傍に控えていた、執事に苛立った口調で言った。
「じい、今回は大丈夫であろうな……?」
「はい、旦那様。今回は大丈夫ですよ」
「ホントだろうな?」
「……大丈夫ですよ………………たぶん……」
「たぶんじゃダメだろう!!! 今回で十二回目だぞ!! もし今回もダメなら……」
「だ、旦那様……とにかく落ち着いてください……。そうだ! 紅茶を入れましょう。紅茶を飲んで落ち着きましょうよ!」
そう言って執事のじいはポットにお湯を注ぎ、紅茶を作ろうとしていた。
紅茶を飲ませて、源十郎を落ち着かせようと思っていたみたいだ。
「旦那様、どうぞ」
作った紅茶を源十郎に渡した。
これで落ち着かれるだろう……。そんなことを思っていたじいは、内心ほっとしていた。
だが、
『うわああああああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!』
突然二階の方から、男の叫び声が聞こえてきた。
屋敷中に響き渡る叫び声に、執事のじいは驚いた。
「い、今の悲鳴は!? ま、まさか……!?」
現状では二階でなにが起こったのかはよく分からない。しかし、長年この家に仕えてきた執事のじいは、一瞬でなにがあったのか予想できた。
そしてそれは、源十郎も同じだった。
「まさか……また……!?」
源十郎は嫌な予感がしていた。
とてもとても嫌な予感を……。
そしてその嫌な予感が当たった。
ドタドタ!
二階から誰かが駆け下りてくる音がした。足音からして、慌てている様子が分かる。
バタン!
客間の扉が開き、部屋に慌てて入ってきたのは、若い青年だった。
「た、助けてください!」
この若い青年は名門の貴族の息子で、とある用で二階に行っていたのだ。しかし、今の彼は名門の貴族には似合わない、ボロボロな服を着ていた。言っておくが、彼は元からボロボロな服を着ていたわけではない。二階で起こった出来事によってこうなってしまったのだ。
源十郎は彼の姿を見て、ハァ……と溜め息をついた。
「またか……」
ボロボロになっていた名門貴族の息子は、源十郎に対し、涙を流しながら言った。
「あ、あんなのが私の婚約者になるなんて冗談じゃない! あんなのと一緒にいたら命がいくつあっても足りませんよ!! この婚約は無しにしてください! 父上からは私から言っておきますので!!」
そう言った彼は、逃げるように屋敷から出て行った。
「お、おい! ちょっと待て!!」
源十郎は逃げた彼を引き止めようと走り出す。だが、彼は全速力で逃げ出したので、源十郎は彼に追いつけなかった。
走っている彼の姿はどんどん小さくなっていき、やがて消えてしまった。
「くそ……!」
「旦那様……」
源十郎は項垂れてしまった。
執事の爺はそんな源十郎の傍に行く。
「旦那様、しっかりしてください……」
「おのれ……」
「旦那様?」
「これで……これで十二回目だ……! あいつの為にと思って連れてきた婚約者をボコボコにしたのは…………これで十二回目だぁぁぁぁぁぁ!!!」
十二回、源十郎は二階にいる“あいつ”の為に、様々な婚約者を連れてきた。
だが、“あいつ”は連れてきた婚約者を、ことごとく再起不能になるまでボコボコにしてきたのだ。中には全治1ヶ月の入院が必要なくらい重傷になった者もいるらしい。さすがの源十郎も、十二回、婚約者をボコボコにした“あいつ”の行動に腹を立ててしまったようだ。
「おのれ……! これ以上我が家名に傷を付けるわけにはいかん!」
「旦那様!?」
源十郎は怒りの表情を浮かべながら二階に駆け上がった。
「だ、旦那様! お、お待ちください!」
執事のジイは源十郎を止めようと声を上げたが、源十郎は聞く耳を持たない。無視して二階に行く。
途中、廊下で掃除をしていたメイドがおり、源十郎は彼女に聞いた。
「おい! “あいつ”はどこだ!?」
「だ、旦那様!? お、お嬢様でしたら、先程の来客をボコボコにした後、お部屋にお戻りになりましたが……」
「部屋か!」
“あいつ”は自分の部屋にいる。そのことを理解した源十郎は、すぐさま“あいつ”の部屋へと向かった。
長い廊下を走っていく源十郎。おっさんと呼ばれるくらい、年を取っているが、源十郎は息切れもせず、とある部屋へとたどり着いた。
大きい扉が特徴的な“あいつ”の部屋だ。
バーン!
源十郎は思いっきり力を込めて、勢いよく開いた。
「響子!!! 貴様は……何をやったか、分かっているのか!!!?」
部屋の中にいたのは、一人の美少女だった。
腰まで伸びた長い黒髪、綺麗な赤い瞳、胸は……まあまああるくらい。
まあ、特徴がそんな感じの美少女が部屋に居たのだが……。
「………………」
源十郎は唖然としていた。まあ無理はない。
そこにいた響子は、名門の娘とは思えないくらいの様子で過ごしていた。
部屋が散らかっていたのだ。お菓子の袋や漫画や携帯ゲーム機などが部屋中に散乱しており、挙げ句の果てに、下着等まで落ちている有様だ。
ちなみにメイド曰く、『部屋を片付けても、2分、3分したらまた散らかっているんです!』ということらしい。
どうやら片付けられない女のようだ。
それと、もう気づいている方もいると思うが、念のために言っておこう。
このだらしない女性こそ、後に結希を助けることになる、如月響子である。
「ん? なんですか父上? 今、私は大変忙しいのです」
「……なにがだ?」
「ようやく隠しダンジョンにたどり着いたので、隠しボスを……あ! クリティカルだと!? くっ! このボス強いな……! もうちょっとレベルアップをしておいたほうかいいかな?」
「ゲームを止めてこちらを向かんか!! お前に話があるんだ!!」
源十郎が響子にそう怒鳴ると、響子はチラッと源十郎を見て、ハァ……と溜め息をつく。ゲームを一時停止して、源十郎に向かって座った。
「響子! いったいどいうことだ!? 先程、婚約者がボロボロな状態になって、婚約を破棄してくれと言ってきたぞ! 何故こんなことになった!?」
「父上、正確には12人目の婚約者です」
「そんなこと分かっているわ!! そうだ! 12人だ!! 今までの婚約者の人数であり、お前が会う度にボコボコにしていった婚約者の人数でもあるんだ!! 何故だ!? 12人もボコボコにして病院送りにしたのは何故なんだ!? いったいなにが不満なんだ!?」
源十郎の疑問に、響子は溜め息をつきながら答えた。
「……父上、私は別に好きで婚約者をボコボコにしているわけではありません。ちゃんとした理由があります」
「理由? なんだ?」
響子は当たり前のように答えた。
「婚約者が私のタイプではないからです」
この答えに対し、源十郎は頭を抱えた。
「そんだけの理由で……名門のご子息をボコボコにしたのか!?」
「はい。あ、でもさっきの男は違いますよ。あの男は私にとても失礼なことを言ったんです。だから徹底的にボコボコにしたんですよ」
「え!? そうなのか!? ……まあ、それなら……仕方ないな……」
自分の娘に対し、失礼なことを言ったことにより、成敗したのであれば、致し方ない。そう思った源十郎であった。
「で、響子よ。その男はどんな失礼なことを言ったんだ?」
「……思い出す度に腹が立ってきますよ……。私がゲームをやっているときに、あの男がやってきたんですが、あの男は私がやっているゲームをプレイしたことがあったらしく、最初は話が弾んだのですよ。あのダンジョンの宝箱はどこかとか、あのボスはどうやって倒すのかとか……」
「なんだ、仲がよかったんじゃないか。趣味も合っているし」
「……そんなの最初だけでしたよ…‥。話は主人公の勇者の職業は何だという話になって、私は剣士にしていると言ったんです。そしたらあの男は……!」
『そうか剣士なんだね♪ ちなみに僕は魔法剣士にしたんだ♪』
「どうですか父上! 許せないでしょ!?」
「…………………………なにが?」
……源十郎は唖然となって言った。
しかし源十郎の気持ちが分からないわけでもない。誰が聞いても、『……なんで?』と言いそうだ。
何故、ゲームの主人公の職業を魔法剣士にしたというだけで彼女が怒ったのか、その理由を響子は語った。
「いいですか父上? このゲームの主人公は勇者になるんですよ。勇者であれば、職業は剣士以外はありえないでしょう? 勇者=剣士というのが当たり前です。だというのに……魔法剣士にするなんて外道のやり方です! 勇者は魔法なんて物を頼らず、己の剣一つで悪を倒すべきなんです!! 魔法なんて……汚らわしい魔女共がやればいいんですよ!! まったく! 今回の婚約者はとても失礼な奴でしたよ! ねえ父上?」
「とても失礼なのはてめえだぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!! なんだよその理由!? そんな下らん理由で我が家名に泥を塗ったのか!? 馬鹿者がっ!!」
「くだらん理由ですと!? 父上! 勇者とは魔法だとか機関銃とかを頼らず、己が力、知恵、勇気、そして剣のみで戦っていく、それが真の勇者なのです!!」
「そんなこといったて、勇者の中には魔法だとか不思議な力とかを使う勇者とかいるだろうが!!」
「あんなの勇者ではありません!! 魔法を使うドラ○エの勇者とか、弓矢やハンマーやらブーメランやらフッ○ショットやら小賢しい道具を使う勇者リ○クとかは、勇者の恥さらしです!!」
「おいコラァァァァァァァァーーーーー!!!! 全世界の勇者に謝れバカヤロウーーー!!!」
源十郎と響子の討論はしばらく続いた。
響子は大の勇者好きなのだ。子供のころ、勇者関連の絵本を読んだ時から、勇者に憧れるようになった。
勇者になりたい。女の子でありながら、響子はそのような目標を持つようになった。
勇者に近づく為の鍛錬も行った。子供のころから剣道を習い、勇者の参考資料(勇者関連のマンガ、ゲーム)で勇者について勉強したり、勇者のような優しい心を持ちたいと言って、ボランティアにも参加したことがある。
源十郎は最初、『どうせ途中で飽きるだろう』と言って、響子の行動を咎めはしなかった。
だが、勇者修業によって、響子自身が変な方向へ成長してしまった。
剣道を真剣にやった結果…………誰にも負けない、暴力女になった。
勇者の勉強をしすぎた結果…………部屋に引きこもる勇者バカになった。
優しい心を持つようになるためボランティアに参加した結果…………ボランティアの素晴らしさを理解しない、ボランティアに参加しない(めんどくさいという理由で)輩を成敗(粛正)をすることが多くなった。ある意味、これが一番酷いのだ……。
勇者に憧れ、勇者に近づく為に行った勇者修行は、響子の性格を大きく変えることになってしまったのだ。
そして、響子を放っておくわけにはいかなくなった源十郎は、響子の性格を変える為には婚約者を用意したのだ。恋人さえ居てくれれば、響子の性格が 変わるかもという期待を込めて。
だが結果は……失敗。それどころか、婚約者である名門貴族のご子息をボコボコにしてまい、源十郎自身がその名門貴族の親族に謝りにいかなければいけない事態になってしまった。
「12回も……このわしに恥をかかせよって!!」
「父上、大丈夫です。私は全然恥ずかしくありません」
「やかましいわ!!!」
源十郎の怒りが頂点に達し、顔を真っ赤にして怒り始めた。
そんな源十郎を見ていた響子は、ハァ……と溜め息をつきながら言った。
「父上、たかが婚約者をボコボコしたくらいで、いちいち怒らないでください。如月家の現当主であるなら、優しく、清らで、悪を倒すとい心持ちでなければなりませんよ。如月家一代目当主は素晴らしい勇者だったのに……」
響子は源十郎の姿と如月家一代目当主の姿を比べるような言い方をした。
彼女、響子が勇者に憧れているのは、小さい頃読んだ絵本の勇者の影響だけではない。
信じられないだろうが、如月家は代々勇者の家系なのだ。如月家一代目当主は当時、今ほど裕福な暮らしをしてはおらず、貴族でもなかった。しかし、彼はこの国に害を成す悪党、テロリスト、災害などといった難事件を次々と解決していったのだ。今日、こうして平和の日々を送っているのは全て、如月家による活躍のおかげであると言われるようになった。
そして如月家一代目当主は、国を救った英雄として称えられ、皆から、『勇者』と呼ばれるようになった。如月家の威光はここから始まったのだ。
如月家はその後代々当主になった人間は勇者の称号を与えられ、国を救うために尽力を注ぐことを決めている。そしてそれは現当主である如月源十郎も同じなのだが……。
「……今の父上は如月家の威光にすがって、堕落した毎日を過ごしています。やれ貴族の晩餐会に出席するなど、如月家の財産で裕福な暮らしをして怠けるなど、そして……私の為といって婚約者を用意する……だけど、単に父上は他の貴族と良い関係を作って、金儲けがしたいだけでしょう!? 我が先祖……如月家一代目当主があの世で嘆いていますよ! 父上は如月家の恥です!!」
「なっ!? き、貴様!!」
激怒した源十郎であったが、響子はそんな源十郎を無視して立ち上がり、部屋から出ようとした。
「おい響子! 話はまだ終わっていないぞ!! いったいどこに行く!?」
「父上の話を聞くとイライラしますので、ちょっと出かけてきます。晩ご飯には戻りますのでご安心を」
「お、おい!」
源十郎の制止を聞かず、響子は部屋から出て行った。
「……くそっ! なにが勇者だ、馬鹿馬鹿しい!!」
響子の部屋に置いてあった、勇者関連の資料、漫画やゲームなどを見ながら、源十郎は忌々しそうに言った。
《響子視点》
「……くそっ!」
カン!
道路の隅に置いてあった空き缶を蹴り上げ、鬱憤晴らしをしていたが、未だにこのイライラは収まらない。
まったく父上は情けない……。
勇者の一族である如月家の恥だ。如月家一代目当主の足元にも及ばないのに、あんなに偉そうにして……!
「あ~~イライラが収まらん! ゲーセンでも行こうかな……?」
ゲーセンの格闘ゲームでもやって鬱憤晴らしでもしようかな、と思っていたとき、近くで怒号が聞こえた。
『おいコラァ!! てめぇどこ見て歩いてんだオイ!!』
『俺らのアニキにぶつかって謝りも無しかコラァ!!』
何か騒ぎでもあったのか? 気になった私は、怒号がする方へ向かった。
するとそこには、頭が悪そうな不良三人組が、金髪の少年に対しカツアゲをしている。
金髪の少年の顔はここからではよく見えないが、体がブルブル震えているから、怯えていることは分かった。
「いって~な! おい、腕が動かねえんだけど! お前がぶつかったから腕の骨が折れたんだぞ!! どうしてくれるんだコラァ!!」
「マジっすかアニキ!! おいコラァ!! てめぇ、どうしてくれんだコラァ!!」
「え!? ……で、でも……それくらいじゃあ……う、腕は折れな--」
「あぁ!! てめぇ、アニキが嘘を言っていると思っているのかコラァ!!」
「い、いや……ち、ちが……!」
……なんと情けない……。
男のくせに……少しは根性を見せろ、と言ってやりたがったが、あの少年、見るからにひ弱だ。喧嘩したら絶対負けるな。
だが、情けないと思ったのは彼だけではない。
周りの野次馬共も同じだ。
『おいおいカツアゲかよ』
『おい、誰か止めてやれよ』
『やだよ! 巻き込まれたくない!』
『あの子可哀想……』
『警察とか連絡しなくていいのかしら?』
『おい見ろよ、面白いことをやっているぜ』
『近所であんなことをやるなよな……』
……なんだこいつらは……? 少年にとって不幸なことなのに、こいつらは助けもしない。酷い奴はカツアゲの光景を笑いながら見ている奴もいる。
そんな彼らの姿を見ていると、またイライラしてくる。
彼らの姿は、国を、人を助ける如月家の使命を捨て、贅沢な暮らしをしながら静観している父上の姿とよく似ていたからだ。
「とりあえず慰謝料払ってもらおうか」
「え……!?」
「慰謝料百万、払えろや!」
「ひゃ……百万!? そ、そんなお金……あ、ありません……!」
「だったら財布を置いていけや!」
「そ、そんな……!」
「こ、これは……わ、渡せません……。か、母さんが……」
「うるせぇな!!」
握り拳に力が入り、プルプルと震えだす。
情けない……情けない……情けない情けない情けない情けない情けない情けない情けない情けない情けない情けない情けない情けない、情けない!!!
「チッ! これくらいしかないのかよ! まあいいか」
「か、返してください……! それは母さんの--」
「ふん!」
ドガッ!
「がはっ! くっ……!」
「あはははは! あばよ!」
「くっ………くそ………」
もう我慢の限界だ!!
「おい、そこの不良A、B、C」
ちょうどいい! この頭の悪い不良共を叩き潰し、鬱憤晴らしをするとしよう!
私に会ったことを後悔するがいい!!
《数分後》
「チッ! 二千円しかないのか……。最近の不良は貧乏な奴が多いな……。もっと金を多く持ってからかつあげしろよな……! まあいい。さて、この二千円は貰って行こう」
不良共をボコボコにし、さらにはお金が手に入った。私の今の機嫌は最高だ! とても気持ちいい!
やっぱりイライラした時は体を動かした方がいいな!
「ん? こいつへそくりを持っていたのか。おお! 五万入っているな! よし、これで3DSが買えるな! では、ありがたく貰おう」
不良の財布のお金とへそくりの五万を私の財布の中に入れた。
さて、近くにゲーム屋があったはずだ。この五万で3DSを買って、マ○オでもやるかな。たまには勇者ゲーム以外のゲームをやるのも悪くないし。
「………って、なにしてんですかぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!??」
ん? 今、誰かが叫んだような? ていうか今の声どこかで聞いたような?
あ、先程の金髪少年の声ではないか。なにか私に用でもあるみたいだが……あ、そうか。私にお礼を言いに来たのか。
情けない少年かと思っていたが、ちゃんと礼儀という物を分かっているな。もしお礼を言わなかったら半殺しにするところだったぞ。
とりあえず少年の顔を見るとしよう。どんな顔なのか――
「ん? 少年? なんのようだ?」
「え!? あ、ええっと……あの……」
ドクン!
え? あれ?
「あ、あの……そ、その……えっと……」
ドクン! ドクン! ドクン!
こ、この少年……よく見たら女の子のような美少年ではないか……!
あ、あれ? なんでだろう? なんか心臓がドクンドクンと激しくなっている!? な、なんだ!? いったいどうしたんだ私は!?
「えっと……あ、ありが……」
ドクン! ドクン! ドクン! ドクン!
ドキドキが止まらない! なんだ!? この少年は私になにをした!?
こんなこと初めてだ! ていうかこのドキドキは……まさか……!?
い、いや! そんなはずはない! この私が……勇者である私が、この少年に対し……あの感情を持つはずがない!!
と、とにかく落ち着け私! 無表情で、ポーカフェイスで対応しなければ!!
「おい、言いたい事があるならハッキリ言え」
「ヒィッ! は、はい!」
お、怯えてしまったか!? や、やめろ! そんな涙目でこっちを見るんじゃない!! 落ち着け! 落ち着け私! ………………ハァ……ハァ……って私はバカか!!
落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着けお茶漬けって違う! 落ち着くんだ私!! どんなことでも落ち着いて対応するんだ!!!
「あ、あの!」
「うん」
「助けてくれて、ありがとうございましゅた!!」
「「……………………………………………」」
長い沈黙の後、私は思った……。
この子、超可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
すう……はあ……この子……めちゃくちゃ可愛いよこのヤロウ!!!
美少年、しかもオドオドしていて、とても可愛いよ!!!!
この子だよ!! こんな子が私のタイプなんだよ!! 今時の男どもはみんなやれ熱血だの、冷静だの、「みんなと一緒に頑張れ大丈夫だよ!!」とか言う真面目タイプだの、いろんな奴がいるけど、やっぱりこんな可愛くて臆病そうな男の子が一番いいんだよ!!
それにしても可愛いな……♪ ハァ……ハァ……お持ち帰りしちゃダメかな……?
女の子みたいな子だから……メイド服とか、ゴスロリとか、女子高生の制服とか着させたら可愛いんだろうな……!!
ていうか、寝るときに抱き枕にしたい!! とても気持ちいいんだろうな……エヘヘ……♪
ポタポタ。
ん? なにか液体がこぼれるような音が聞こえてきた。なんだろうと思っていたら、その液体は私の手に落ちた。よく見ると赤い……え!? まさか!?
鼻を触ると、手に赤い液体が大量に付いていた。……って鼻血じゃないか!?
まさか、興奮のあまり鼻血が出てしまったのか!? いかん! これでは変態じゃないか!! こんな姿を見せるわけにはいかない!!
少年に見られないように後ろに振り向き、持っていたハンカチで鼻血を拭いた。
いかん、あの少年が可愛いから、まだ興奮している。手や体がプルプル震えているよ~~!!
とにかく落ち着け私!!!
深呼吸!! すう……はあ……よし! 無表情で、ポーカーフェイスで!!
「お、おい少年」
「え? あ、はい!」
「あそこの喫茶店に行くぞ」
「へ!? え、えと……な、なんで……?」
なぜかって? それは当然、君のような可愛い少年と仲良くなりたいからだ!! 君をペロペロ……じゃなくて! 君と仲良くなって……その……できれば……//////// 抱きしめてやりたいんだ//////// そう、ハグハグしたい///////
「私と行くのは嫌か?」
「い、いや! い、行きます!」
「よし」
だが今は行動を起こす時期じゃない。まずは互いを知って、それから徐々に打ち解けて行く。そして最後には……ハグハグする//////// うん、完璧だ!!
「おい! 何をしている! 早く来い!」
「え!? あ、は、はい!」
だから今は我慢しよう。いきなりハグハグしたり、「ゴスロリとかメイド服を着て!!」とか言ったら変態確定になってしまうからな。
あの学園に居る変態野郎と一緒にされたくないし。
「あ、あの……」
「ん? なんだ?」
「あなたの名前を聞いていなかったんですが……。あなたは……?」
あ! これから仲良くなろうと思っている相手に、名前を教えてなかったな。
いかんいかん。早く名前を教えよう。
「なに、名乗るほどの者ではないが、君にだけは名乗ってあげよう」
私は自信満々に、自分の名を教えた。
「私の名前は如月響子。通りすがりの『勇者』だ」
「へ……?」
名前も教えたことだし、喫茶店に行って始めよう!
名付けて! オペレーション、『可愛い少年と仲良くなってハグハグしたり、抱き枕にしたり、可愛い服を着させて、萌え萌えハァハァしてあんなことやこんなことをしてやろうか大作戦』開始だ!!
こうして勇者の変な戦いが幕を開けたのだ。
天城
「小説更新だよ! 全員集合!!」
恭介
「……どこの番組のパクリだ?」
由美
「……最近作者、あの有名な生放送番組を見て、ハマっちゃったみたい……」
恭介
「……怒られないか、これ?」
天城
「そこ! うるせぇぞコノヤロー!!」
恭介
「めんどくせぇ……」
結希
「ま、まあたまには良いじゃないですか……。それよりも恭介さん、今回は頼みますよ!」
恭介
「はひ?」
結希
「前回の後書きコーナーで、恭介さんの必殺技、ディ○インバスターをやるってことになったんじゃないですか!?」
恭介
「え!? そ、そうだっけ……?」
結希
「そうですよ! ではお願いします!」
恭介
「…………………………(-o-;)」
天城
「どうする……?」
恭介
「新キャラ……」
結希
「はい?」
恭介
「新キャラヒロインの登場だ!! どうぞ!!」
天城・由美
((ごまかした!? Σ(°□°)))
響子
「我が名は……如月家の勇者………如月響子である!! 私が居る限り、悪は栄えない!!」
恭介
「全然ヒロインらしくない奴が来たよ……」
結希
「なに言っているんですか!! 響子さんは美しく、足が綺麗で、とてもかっこいいヒロインじゃないですか!?」
由美
「かっこいいヒロイン……」
響子
「この後書きコーナー登場したのは初めてだな。皆、今後ともよろしく頼む」
結希
「あ、あの! こ、こここ今後ともよろしくお願いします! 響子さん!」
響子
「結希、とりあえず落ち着け。後書きコーナーでは皆を楽しまなければいけないのに、お前がそんな調子では、皆が楽しめないだろう?」
結希
「そ、そうですね……。す、すいません……。(ああ……僕がしっかりしないといけないのに、何やっているんだ僕は……! もっとしっかりしないと!!)」
響子
「結希……。(い、いかん……! ちょっと言い過ぎちゃったかな……? 結希の奴しょんぼりしてしまった。……でも、しょんぼりした結希も可愛い!!!! ああ……今すぐ抱きしめたい!! ペロペロしたい!! 抱き枕にしたいよ!!!)」
天城
「……作っておきながら言うのもなんだが、めんどくさいカップルだな……」
恭介
「お前が言うな!!」
結希
「で、恭介さん。必殺技は?」
恭介
「さて次回予告……」
天城
「逃げるな!!」
響子
「なんだ必殺技って?」
結希
「恭介さんの必殺技を披露するんですよ」
響子
「ほう……それは楽しみだな」
恭介
「……じ、じつは今日は体調が悪いから必殺技が出せない……」
天城・由美
「「…………おい」」
結希
「そうなんですか……」
響子
「仕方ないな……では次回披露してもらおうか」
恭介
「す、すまんな……ア、アハハハハハ!! (なんとか誤魔化せた……)」
天城
「では次回予告です! 次回は喫茶店に行くことになった結希と響子のお話。結希と響子、お互いのことが好きなってしまった二人だったが……互いに本音を言えないので色々面倒なことになってしまう。果たして結希と響子の運命は!? 次回もお楽しみに!!」
恭介
「ふう……今回はなんとかなったが、次回はどうなるか分からない……。なにか策を考えねば!! ていうか……やっぱりディ○インバスターは無理だよね……」