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第3話  続・支配するもの、されるもの

01


 エレベーターの前で待つこと30分くらい。その間、イズミはサワダの話には触れず、くだらないことを延々と喋り続け、オレもあきれながらそれに答え続けた。


「何してんだ?お前ら?」


 エレベーターから出てきたサワダの姿に、オレは心底胸をなで下ろした。

 同時に、彼を嫉妬の目で睨み付けてしまっていたけれど。


「コイツを連れ出してただけだよ。みんなまだ医務室にいるから、行こうか」

「?ああ、そう」


 オレの背中を突き飛ばすように押し、エレベータに突っ込んだ。中で転けてしまいそうになった体制を整えているうちに、扉が閉まった。


「なんだよ、一体!!」


 いじめか?これはいじめか?つーか、上の階に行きたいのに、勝手に下に行ってるし。ボタンくらい押させろよ。サワダがドMなら、イズミはまさにドSだろうが。自覚してんのか、あの男は!

 1階に到着し、扉が開く。開いた扉の隙間から誰かの姿が見えたとき、何だか気まずくて思わず顔を伏せた。もう、みっともないよな。ボタン押し間違えたみたいで。


「どうしたの、ユウト?医務室に行ったんじゃないの?」


 乗ってきたのはティアスだった。降りようとしないオレを不審な目で見ながら、一緒にエレベーターに乗った。


「乗るとき、サワダとすれ違った」

「……そうなんだ」


 その間は、無いよな。まあ、完全に判ってての嫌味だったから、仕方ないかも知れないけど。

 だって、このタイミングは……無いだろうよ。もう少し気を使えよ、2人とも。あからさますぎるだろ?少なくともエントランスまで、彼らは一緒だったはずだ。


「さっきは助けてくれてありがとう。でも、途中で消えちゃったから、心配してたんですけど」

「あ、そうだね。ごめんね。でも、あの人達、私のことあんまり信用してないって言うか、ものすごく疑ってるから。余計なこと聞かれないうちに、と思って」

「消えちゃう方が怪しまれない?」

「でも、それならどうやって出てきたんだって話になるじゃない。一緒に戻る必要はないし」


 なんか、納得出来るような、出来ないような。


「サワダと、一緒に助けに来てくれたから、一緒に出てきたのかと思った。その方が納得できる。あいつ、あんなんでもここのおエライさんみたいだし」


 行為を肯定してやれば、話を聞きやすくなるんだって、オレの知ってる泉は言ってた。

 もしかしたら、こっちのイズミも、そう考えながら話してるのかも。


「違うわ。たまたまよ。出てきたら、会っただけ」

「なんで出てきたの?」

「何でそんな風に聞くの?」


 ちょっと、不機嫌な顔を見せる。その様が余計に怪しかった。


「なんで出てきたの?」

「……だって、魔物が出てきてるでしょ?この国は。まだ、対抗力がほとんどないに等しいじゃない」

「ニイジマ達と連絡とりづらいって言ってたくせに、こんなに出歩いてるの、おかしくない?」

「前よりは、とりやすくなってるよ、私のケガが治ってきてるんだから」


 彼女は笑顔一つ見せず、むっとした顔のままでそう吐き捨てた。扉をじっと睨み続け、エレベーターがついた途端飛び出した。


「え?あ、ごめんって!」


 追いかけようとオレも出たけど、さすがに足が痛くて走れない。てか、ティアスもまだそんな、走って良いような体じゃないはずなんだけど。戦うなんてもってのほかのはずだし!はずなんですけど……。

 オレが弱っちいのかな……。それとも、ティアスがものすごく無理をしてるとか?


 ああ、もう……しかもものすっごく怒らせちゃってるし。

 余計なこと聞きすぎた。でも、怒るってことは、やましいことがある証拠、なんだよな。隠さなくても良いじゃんよ。いや、隠すなら、もっと完璧にしてくれよ。オレがへこむ。


 なんだこれ。オレ、こっちのティアスのことが好きだったわけじゃないはずだろ?オレが好きなのは、オレにもみんなにも優しいあっちのティアスだ。

 確かに、こっちのティアスならフリーだし、オレだけが彼女の秘密も握ってるし、落とせるかもって思って、頑張ろうとは思ったけど。

 それにオレは絶対、元の時代に戻るつもりなのに。

 なんでこんなに、彼女に振り回されちゃってんだよ?!



02


 早く、戻らなくちゃ。

 あちらとこちらの彼女の存在が、オレを急かす。


 オレの記憶に残っている最後の彼女の存在を、必死に思い出す。それにすがりついているのが、はっきりと自覚できる。


 早く、帰りたい。こんな所にいたくない。


 足取りは重かった。自分でもびっくりするくらい、体が動かなくて、それでも何とか部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。塞いだはずの傷口から、包帯越しに血が滲んでいた。その血が、傷つき、横たわっていたミナミさんの姿にかぶる。オレが、あんな目にあったら一体どうなってしまうんだろう。

 この世界には誰もいない。ティアスも、サワダ達も、所詮はオレの知らない連中だ。

 だけど彼女だけは、……ティアスだけは違うはずだった。それなのに。


「アイハラ?起きてる?」


 ノックと共に聞こえたのは、ミハマの声だった。こんな時間に、王子様が何やってるんだよ。出ないわけにも行かないので、足を引きずりながら扉を開けた。


「ごめん、寝てた?足のケガをサラが気にしてたから」


 そう言って彼がオレに手渡したのは、換えの包帯と傷薬(ちなみにかなり怪しげな色をしていたのだけれど)だった。オレは彼に中に入るよう促し、椅子を勧めた。


「ミナミさんが?自分もあんなにケガしてたのに?オレのケガなんか大したこと……」

「シンがアイハラのことを引っ張ってったからさ。無理はしちゃダメだよ」


 だからって、わざわざミハマが来るか?


「あ、オレがここに来たこと、シュウジにもシンにも言っちゃダメだよ。軽はずみなことするなって、五月蠅いんだ」

「うん。だいぶ軽はずみだと思う。確か、王子様じゃなかったっけ?」

「王子様だよ?これでも」


 笑い飛ばす。彼の持つ雰囲気はまさに王子様と言わんばかりの、オーラのようなモノを持っているのだが、行動が伴わない。


「ごめんね。多分、振り回されていると思うけど」

「え?」

「オレからも、言っとくから」

「……別に。だって、ミハマのために動いてるだけだろ?あの人達。別に、なんも悪いコトしてないし」


 ふてくされたようにそう言ったオレに対して、ミハマは笑顔を見せる。


「そうだね。でも、それがアイハラにとっては良いことでも、悪いことでもある。そう言うもんだろ?だから、そんなこと、言わなくていいって。ありがとう」


 ……やば。今、ちょっとどきっとした。男相手なんですけど。そう言うことさらっと言う?!こんな真っ直ぐで、優しくて、いい人で……。あいつらが彼のために何かしようって頑張るのも判らないでもない。


『口外無用な。平和のためさ。何事も、タイミングが肝心なわけよ』


 イズミはああ言ってたけど。でも、ミハマに今の状況を知らせなくて良いのか?オレだって、あの2人のことが気になる。だったら、彼の置かれている立場ならなおさらだ。

 ミハマとサワダの距離。彼の、彼女への思い。


 下心が、あわよくばという思いが、無いとは言わないけれど。


「……サワダって、ミハマと仲良いんだろ?臣下だけど、幼馴染みだって」

「うん。何?突然」

「だったらさ、同じ女の子を好きになったりしたこととかないの?一緒にいたなら、会う子も一緒なわけだろ?」


 ミハマは腕を組んで考え込む。考え込むようなことじゃないから、彼なりのパフォーマンスなのかも知れない


「無いかな、そう言うの。オレ達、好みが随分違うから」

「なるほど。ミハマは、サトウさんはタイプじゃない……と」

「あはは、そうなるね」

「あ、ごめん。ここの人たち、彼女のことに触れたがらないから」


 でも、ミハマなら、笑い飛ばして話を聞いてくれる気がしていた。彼が一番気にしているだろうけど、彼が一番、受け皿が広いというか。 ずるいかも知れないけど、彼にこっそり聞くのが一番良いかも知れない。探り探りだけど。


「神経質に見える?」

「少し。でも、ここに来てから、サワダとサトウさんが一緒にいるとことか見たことないし。あれかな。昔つき合ってたけど、今は別れてて、サワダが気にしてるから、周りが腫れ物扱い……とか?」


 ミハマは、ただ微笑むだけだ。


「ほら、なんて言うの。こう、一般的に考えてって言うか。やっぱ、元カノ元彼とか気にするじゃんね?」

「そうだね」

「だから……かな?って。違うみたい?」


 やっぱり、微笑むだけだった。


「あのさ、言いにくいのかも知んないし、知らせたくないのかも知れないけど、でもさオレも、どうやって気を使って良いか、判んないんだよ……」

「そっか。そうだよね。ごめんね。でも、テツとサトウさんて別に何もないんだよ。サトウさんが好きなのは、テッキさんだしね。でも、ちょっといろいろあってさ」


 あれ?今、さらっとスゴイこと言わなかったか?

 テッキさんて……サワダの父さんだろ?ミハマが敵視してる数少ない人間だろ?!しかも、サトウさんがサワダの好みとか何とかも簡単に肯定するし。

 えっと、重いっつーの!



03


 待て待て、自分。あっさりミハマがこんなコトを言ったとは言え、こんなにおろおろしてどうする。別に、サワダがサトウさんを好きで、サトウさんがサワダ父を好きでも、別に彼らの間に実際に何かあったわけでもないし、

 ……何かあったらどうしよう。なんか、こっちのサワダ父って、いろいろ悪いコトしてそうなんだもんな。だとしたら、あいつらがあんなに気を使ったり、サトウさんのことを敵視したりする理由も判らないでもない。極端だとは思うけど。


「どうかした?」

「いや。別に。なんか、ごめん。変な話、させちゃって」

「何で?どうしようもないし、アイハラの言うとおりだよ。知らなきゃ気も遣えないし、知らないことで怒られてるのは割に合わないよ」


 この立場の人に、そう言ってもらえるのは本当にありがたいけど。でもミハマって、ホントの所どう思ってるんだろう。だって、ティアスのこと……。

 そう言えば、この人、気があるような台詞を簡単に言ったわりに、生々しさがないな。


「ミハマって、サトウさんのこととか、ホントはどう思ってるの?王子様じゃなくて、ミハマはさ」

「難しいこと言うね。でも、王子であるオレも、普段のオレも、オレなんだけどね」

「だけど、本音って隠してない?特に、立場があるんなら」

「隠してはいないよ。黙ってはいるけど」


 そう言うのを隠すって言うんだよ。


「みんなが気を使ってくれてるとおりだよ」


 珍しく彼は目を伏せ、微笑んで見せた。微笑んでるはずなのに、その姿はきれいなのに、怖かった。


「ああ、そう。相当極端だよね、それって。違う?」

「極端……かもね。なんと言ってくれてもいいけれど」

「開き直っちゃってるよ……」


 何があったんだ。聞きたくもないけど。

 彼女がサワダに、なんかしたってことだよな。だから、ミハマは怒ってる。それを、あの人達は気を使ってる。彼ら自身の怒りも相まって。

 でも、そんなに気にするようなことなのか?あいつだって、もういい年なのに。女がこっちを振り向かないくらいで。違うのか?


「何があったか聞いてもいい?」

「聞いても、大したことじゃないよ」

「大したことじゃないなら、聞きたいかな」

「ああ、そうかあ……。事実は大したことじゃないんだけど。結果がね」


 結果?サワダがどう思ってるかってこと?

 あの、常に何か重いものでも背負ってるような顔をしながら、時折笑顔を見せてくれるサワダが、一体何を考えてるかってこと?それが聞きたいんですけど?!

 よく考えないと……。


 ミハマは、イズミのように攻撃的に出ることはないだろう。だからこそ、気を使うべきだし、考えて言葉を出すべきだ。

 簡単に見透かされても、オレの失態を、オレ自身が知ることが無くなってしまう。


『どうしたの?大丈夫?何があった?この台詞って、すごく人を追いつめると思わない?』


 心配されるくらい、別に良いじゃないかと思うけど、イズミはそれがサワダを追いつめると言った。でも、要するにそんな言葉が受け入れられないほど、まずい状態ってこと?それって?


『いいんだよ。一人にしてやるしかない。閉じこもっちゃってんだから』

『死神は、オレがどういう状態なのか、判ってたんじゃないのか?だから、用があるなんて嘯いて』


 イズミも、ティアスも、彼の様子を、何かが彼を落としていることを、知っているし気付いている。


『オレもあの女も、自分の墓を掘っているんだ』


 そして、彼らが頻繁に使う『墓』と言う言葉。サワダは、誰かの墓を掘り続けているのかと思ったけど、そうじゃない。自分の墓を掘っている。何のために?


『同病相憐れむって言葉、知ってる?』

『何を下らんこと言ってる、あんたは』


 ティアスもまた、自らの墓を掘り続ける。彼女と彼は、『同類』なのだ。少なくとも、お互いにそう感じていたはずだ。他の誰が否定しても、彼ら2人はお互いに。

 その2人が楽師とオワリの雄将としてではなく、ティアスとサワダとして出会ってしまった。だから、彼らが一緒にいるのは、必然的なものなのか?


「以前、イツキ中尉とも話したんだけど、サワダは、どうして墓を掘るのかな?その理由を、みんなは知ってるんだよね?」


 心臓が押しつぶされそうだった。ミハマがどう思うか、判らなかったから。ただ、心配しても、彼がどう思っているかなんて、オレには判らないんだけど。


「明確な理由を知ってるわけではないと思うけどね、みんな」

「でも、共有してる」

「ただの精神安定剤がわりだよ。ああして墓を掘ってると安心するみたいだから。罪を償ってる気分になるんだろうね」


 彼の言葉は、やっぱり重い。かわらず、淡々とした口調で、微笑んだままで、重い言葉を紡ぐ。


「だとしたら、あの、中央の楽師も同じなんだね」

「どうして?」

「知ってる?ミハマ。あの2人、『同病相憐れむ』ってヤツらしいよ?そう言ってるのを聞いたんだ。だとしたら、ティアスよりずっと、楽師殿の方が彼にお似合いじゃない?」


 ずるいと思った。自分のこと。でも、彼と同じように、何気ないフリして喋ってしまえばいいんだとも思った。


「そう、奇遇だね」

「……奇遇?」

「ティアスにも、彼は同じように思ってるみたいだよ?」


 その台詞は他でもない、彼が彼女を疑っていると言うことを示していた。



04


 ミハマの表情は変わらなかった。彼の台詞が、本当は何を意味しているのか。オレには判らなかった。判らなかったけれど。


「……同じように?って?」

「うん、だから同じように。テツがあの楽師殿に感じているものを、ティアスにも感じている。あまり良い言葉とは思えないけれど、その、同病相憐れむってヤツだね」

「……そう言う……」

「そんなに、同じように感じる人って、たくさんいるのかな?」


 ミハマの台詞が意図することを、今度ははっきりと理解することが出来たと思う。


「ティアスと、あの楽師殿が似てるってこと?」

「そうだね。オレもテツも、違う意味で、そう思ってる」

「違う意味で?」

「うん。オレは、ティアスも楽師殿も、人の傷みを受け止められる優しい人だと思ってる。アイハラが少し話してくれた、君の時代にいたティアスのような人だって、オレも思った」


 オレは黙って頷く。今は全面的にその意見に賛同できないけれど。オレの知ってるティアスのように感じるときがほとんどだけど、でも少しだけ、強すぎる部分も感じている。


「でも、彼女の優しさって、自分の重みがそうさせてると思わない?表面的な優しさに誤魔化されそうになるけど」

「表面的?よく判んないよ」

「その場限りの、気遣いなんて、出来る人はいくらでもいるし、要領のいい人ならほぼ確実にそうするだろ?」


 この人、このキラッキラの爽やか笑顔で、酷いことさらっと言いませんでしたか?!それを優しさと言わないわけ?この人。イメージ違うな……ってことも無いか。


「ええっと、あれですよね。ティアスは、そうじゃなくて、優しいって言ってるわけだよね?」

「ん?そうだよ?何かおかしなこと言った?」

「いや、言ってない……よ?」


 この人の笑顔って、邪気がないんだよな。台詞はなんか重いんだけど。騙されそうになるな。騙されちゃいけないって言うのは、この人の周りの人見てたら、強く思うけど。


「サワダとは違う意味って?」

「うん。まあ、テツは、あんまり女の人、信用してないしね。だから、ちょっとフィルターかかってるって言うか。ティアスも、あの楽師殿も、自分と同類って言うか、ちょっと似てるんじゃないかって言ってる。自分の悪い部分というか、重く暗い部分に」


 ミハマの表情が曇る。こんなにはっきりと、強く思い表情を見せることは少ない。だけど、その表情は大抵、彼らのことを考えるときに見せる。


「オレも、テツとティアスは似てると思ってるよ。でも、あいつが思ってるみたいに、悪い意味じゃなくて。あの人達、根が暗いんだよね」

「サワダが根暗なのは判るけど」

「あはは。ごめんごめん。根暗って言うのは言い方が悪いよね。ちょっと、内にこもる部分があるって言うか。こもりすぎてて、本当に人のこと考えてるのに、それがうまく伝わらないって言うか。テツは口が悪いし、プライベートでは気遣いもそんなにうまい方じゃないから、あまり優しいように見えないかも知れないけど」

「そんなことはない。サワダは、まあ、確かに口も悪いし、言い方もきついけど、優しいとこあるなって思うよ」


 それはもしかしたら、比較対象として側にイズミがいるからかも知れないけど。あの二人は、二人とも口が悪いけれど、面白いくらい正反対だ。


「そう、アイハラならそう言ってくれると思ってた。ありがとう」


 何でミハマが礼を言うんだよ。どうして良いか判んないって、そう言うことされると。


「いろいろフォローされてるの、知ってるし」

「良かった。でも、本当は、みんな優しいよ。オレだけは、あんまり優しくないんだけど」

「そうかな?ミハマは優しいけど?」

「オレは、喋り過ぎなんだ。何も言わないことも、多分優しさだと思う。テツのことで怒ることも、その理由を言うことも言わないことも。事実を告げることだけが、優しいことだとは思わない」

「それはそうだけど……でも、今、ミハマ」

「だから、オレは優しくなんかないんだって。この手の中の世界を、守り、大きくしていくことだけが全て。そのために動くって決めた。だから、それ以外のものに対して、オレは厳しい。そんなの優しくなんか無いじゃないか」

「仕方ないんじゃ……」


 仕方がないことだと。オレは思ったけれど。だけど、その優しさも厳しさも、オレに向けられているとしたら?

 ミハマの優しさでオレはここにいる。だけど、彼の世界は、あの護衛部隊だけ。もしかしたら、この国も入ってるかも知れないけど、この国にだって敵はいる。

 彼は黙っていることも優しさだという。だから、イズミやイツキ中尉がサワダのことを語らないのも、サワダに対する優しさであると同時に、オレに対する優しさだと。

 彼らが黙っていることが、本当の優しさだとしたら、今、ミハマがオレにいろいろなことを告げていることが厳しさだって、彼は言ってるのかも知れない。

 でも、そうは……思えないし、思いたくもない。


「ミハマって、ティアスのこと、ホントの所どう思ってるの?イズミなんかは茶化してるけど?」

「どうだろ」

「どうって?!そこは誤魔化すんだ。ずるいな」

「誤魔化してないって!」


 照れてる!この人照れてるよ!ああいうこと、さらっと言えるくせに、この手のことは全然ダメなんだ。判りやすく顔も赤いし。


「アイハラだって」

「オレ、そんなに判りやすくないって。別に、こっちのティアスは、オレの知らない人だし」


 そのはずだけれど。


「いや、まあ、ね?」

「意味判んないし。何だよ」


 真正面から突っ込んで、こんなにあからさまに照れるとは思わなかったな。でも、この様子だと、サワダとティアスのこと、多分なにも知らないよな。もしかしたら、疑ってもいないのかな?『ティアスよりずっとお似合い』なんて、遠回しすぎる台詞じゃ、ミハマには通じないのかな。


「もし、サワダに彼女とられちゃったら、どうすんの?」

「取られる?別に、オレと彼女は何もないし、テツとも無いよ。でも」


 その台詞は、彼がそのことを考えようとしていない様にもとれた。


「でもって?」

「ホントにそうなったら、それはそれで良い傾向なんじゃないかな?」


 良い傾向って!?



05


 オレが、彼の台詞の真意を問いただそうと口を開いたとき、彼は笑顔で持ってきていた包帯と傷薬を差し出し

「オレ、手当てしようか?」

 なんて言いながら、まるめてあった包帯を解き始めた。彼がこの話を終わらせようとしているのは明らかだった。だけど、彼の綺麗な笑顔の持つ圧力に、逆らえなかった、何故か。


「……ありがとう」

「自分で包帯ほどける?薬を塗るから」


 もう、ほとんど痛みはなかったけれど、包帯をはずしたら、オレの足は赤黒く変色していた。おかしいな。普通に歩けたし、イズミ達の言うとおり、(最初はびっくりして大騒ぎしたのが恥ずかしいくらい)そんなに酷くない気がしてたのに……。なんかこれ、おかしくない?

 てか、こんな状態なのに薬を塗るだけかよ。しかも、あの恐ろしい緑色っつーか、腐った色の。ミハマを信用してないわけじゃないけど、あの医者の人も信用してないわけじゃないけど、見かけ何とかならないのか?


「こういうのって、薬で治るの?」

「治るものと、治らないものがあるけど。魔物が相手だったからね、なんとも」


 そう言えば、あの軍医もそんなようなこと言ってたな……。判んないことの方が多いってことか。やっぱこの薬、信用度が低いかも。


「今夜、君たちが出会った魔物は、少なくともテツ達ですら初めてみるタイプだって言ってた。ティアスもね」

「……ティアスに話を聞いた?オレを助けてくれたんだ」

「又聞きだけど。魔物を退治したときに、テツが彼女に聞いたって。戦い方が判らないと、あいつらとは戦えないから。データは持ち帰ってきてるけど」

「そうなんだ。なんか、色気のない会話」


 少しだけ、ほっとした。もしかしたらこっそり会っていたのも、サワダのことだから対魔物の話を聞き出してたのかも知れない。

 ……それはそれで、彼女にとっては困るだろうけど。


「彼女は天から来る魔物への対抗力を持ってる。彼女や、テッキさん曰く『国が北に近いから、脅威にさらされていた』って話だよ」


 オレの様子を見て、そう教えてくれたくせに、笑った。


「結構、過酷な環境にいたのかな?だから、あんなに強いとか?だって、ミナミさんだって、この国では上の方の階級なのに、戦えるのに、あの魔物に対しては何も出来ないに等しかった。いくら、魔物に対するのには戦い方があるからって」

「そうだね。サラも、魔物に対する対抗力は持っているけど、あの天から来るものには力が及ばないと言っていた。シンやテツが彼女ともデータをシェアしてるけど使いこなせるかどうかは別なんだ」


 おそらくそれは、あんなに研究しているシュウジさんが、魔物と戦う力がないことに等しいのだろう。


「彼女は戦えるし、知識も豊富だし、それを応用する能力もある。シュウジもテツもシンも、彼女を評価していたから相当なものなんだと思うよ?」


 伊達に、中央の大佐じゃないってことか。

 ミハマはオレに薬を塗ったあと、包帯を巻こうとして、解いた。しかし、その後が酷かった。長く伸びた包帯と格闘しながら、ねじり、ぐちゃぐちゃのまま、巻き付けようとしたので思わず止めてしまった。


「ごめん、ミハマ!オレ、自分でやるから!」

「え?そう?」

「……よく、他の連中にもそう言われない?」

「わりと……」


 これが普通だと思ってませんか?重傷だぞ?不器用すぎる!てか、自覚させろよ!教育係だろ、シュウジさん!!


「サワダってさ、女の人苦手だって言うけど、ティアスとはよく話すんだ。気にならないの?まあ、色気のない話ばかりって感じみたいだけど」

「うーん。オレとあの子が仲良くなることを、シュウジやテツやユノはあまり良い顔しないんだよね。テッキさんの息がかかってるとか、正体不明だとか言って。まあ、その兼ね合いで、彼女の所に行くと大抵テツがくっついてきて話してるうちに、慣れちゃったみたいだよ?」


 ……ああ、サワダ父の。ミハマって普通に話に出すけど、二人で話してる時って、すごく険悪だろうが?なんでこんな風に、笑顔で話が出きるんだろう。


「別に、サワダのお父さんも、エライ人じゃん。身分がどうとかって話もあれだし、敵対勢力と仲良くなることが悪いとは思わないけど」

「だよねえ。オレもそう思う。でもまあ、シュウジ達はテッキさんの狙いを、オレの失脚だと思ってるからさ」


 やれやれ、と言った顔で天を仰ぐミハマ。思ってるってなんだよ。変なの。

 つーか、失脚って。


「またそう言うことさらっと言う!失脚って?何で?だって、サワダ父には王位継承権はないって聞いたぞ。あるのはミハマと、サワダと……」

「まあ、そう言うことだね。テツが王位についたら、その実父であるテッキさんは必然的にここでも扱いが変わるからね。でも、オレはそんな小さいことに彼がこだわってるようには思えないけどな」

「小さくないよ!小さくない!」

「でも、テツが王位についても、テツはオレのこと裏切らないよ?」


 そんなの、判んないだろ!

 さすがにそうとは言えなかったけど。



06


 ミハマにオレの言いたいことは伝わったのか、そして彼が伝えたかったことがオレに伝わっているのか。どちらも成されていないような、そんなもやもやとした感覚がオレの中に残った。だからかも知れない、彼が立ち去った後も、ただ黙って彼の座っていた椅子を見つめていた。

 オレが気にしすぎているだけなのかも知れない。ティアスとサワダのこと。本当は、気にする必要もないかも知れないし。大体、オレが欲しいのは、こっちのティアスじゃないはずだ。だけど。

 そのはずなのに。なのにどうしてこんなに心が重いんだろう。

 あいつらが一緒にオレとミナミさんを助けに来た……それだけなら良かった。あいつらが一緒に中庭でこそこそ会ってたりなんかしたから。こんなに引っかかる。


 布団にくるまったまま、そんなことをずっと考えていた。いつのまにか時計は5時を指していた。空は、昼に比べれば暗いとは言え、ずっと明るいままで、そんなに時間がたっていた気がしなかった。


 嫌な気分だ。


 はっきりしたかった。怖かったけれど、オレは再び窓の前に立ち、中庭を見下ろした。もちろん、随分上の階なわけだし、医務室から見下ろしたときのように、はっきり何があるか判るわけじゃないけど。大体もう、サワダもティアスも、城に戻ってきてたんだから、いるわけもなかった。


「え?」


 気のせいだろうか。木が揺れるその隙間に、人影が見えた気がした。遠いし、木陰にうまく隠れているせいか、すぐに判別できなくなったけれど……。

 怖くなってきた。あの時、3階の医務室から見下ろした、あの二人だと思ったら。

 スリッパを脱ぎ、靴に履き替えた。その時、自分の足を見てびっくりしたけれど、あんなに赤黒く腫れ上がっていたはずなのに、随分治まっていた。傷みはほとんど無かった。

 急いで部屋を飛び出し、エレベーターに乗り、二階に向かう。この時間は、おそらく外には出られないだろうし、オレが出入りできるフロアは限られているから。

 3階フロアを進んでいく。窓側には全て部屋があるので、中に入らないと、中庭を見下ろすことが出来ない。とは言っても、医務室くらいしか入れる部屋はないんだけど。

 うろうろしながら探していたら、奥の廊下を突き当たったところに、唯一中庭に面している窓があった。その窓は開けることは出来なかったけれど、外の様子を伺うことは出来た。さっきよりははっきりと人影を確認できた。それでも、木々が揺れるその一瞬だけだったけれど。

 やっぱり、サワダとティアスだった。寄り添っているように見えるのは、オレの気のせいか?


「こらこら。口外無用って言ったろ?なにこんな所にまで確認しにきてんだよ。さっさと部屋に戻れって」

「……イズミ……中佐」


 そう言えば、今夜はミナミさんの側にいるって言ってたな。だったら、ずっと医務室にいろよ。


「別に、見たくて見てるわけじゃない……」

「わざわざ、こんな所に降りてきてるのに?あいつら、あれで隠れてるつもりなんだから、ほっといてやれば?」


 いや、充分隠れてますけど。よっぽど目を凝らしてみないと判らないし。 静かに、気配を殺したまま、彼はオレの隣に立ち、中庭を見下ろした。


「ほっといても良いわけ?」

「今はね。テツが、ホントの所どう考えているか判んないし。彼女も」

「同病、相憐れむって?」


 イズミは一瞬、押し黙った。彼がそんな態度に出たことに、オレは驚いたけれど。


「誰だよ、そんなことお前に言ったの」


 そうぶしつけに言ってから、また少し、沈黙が流れた。


「……ミハマ?ミハマだよな?」

「オレが、彼にそう言った。サワダとあの中央の楽師の話を」

「ああ、そう。彼は、それを知っていても、口にはしないのに」

『そう、奇遇だね。ティアスにも、彼は同じように思ってるみたいだよ?』


 奇遇だったのは、サワダが『ティアス』と『楽師』それぞれにそう思っていたこと?それとも……


「奇遇だな。同じ話をするなんて」

「そうだな。うん……ホント」


 ミハマって、どこまで、何を理解してるんだ?そしてその思いを、彼ら護衛部隊は全員共有してるのか?それともイズミだけか?

 もし共有しているのだとしたら、サワダがあんな行動に出るわけがないだろう。

 それとも、端にティアスのことを楽師だと疑ってるってことだけを共有してる?


「……中央の楽師と、ティアスのこと、似てるって言ってたよ、ミハマは」


 空の色が、すっきりしなかった。再び大きく風が吹いて木々が揺れる。その隙間から見える二人の姿は、深夜の公園でいちゃつくカップルそのままだった。


「ああ。だから、気に入ったんだよ。知ってる?」

「どこが似てるんだよ」

「根暗なとこかな」

「意味わかんねえ。素直に『顔が好みでした』って言う方が判りやすいよ」


 そうだな。なんて嘯きながら、イズミはげらげら声を上げて笑っていた。


「でも、サワダも、同じこと言ってたって、ミハマは言ってた」

「だねえ。ただ、ミハマとテツが似てるって言った部分は違うと思うけど?違うはずなんだけどね」


 げらげら笑うくせに、いやに真面目な表情で外を眺めていた。


「テツは、彼女を疑ってるんだけどねえ」

「ミハマは?」

「さあ。どっちでも良いんじゃない?」


 どっちでも良いって、そんな答えがあるか。そもそも、お前んとこの王子様であり最高責任者じゃねえのか?!でも、やっぱりサワダが疑ってるって言うのは……。


「疑ってるのに、ああいう真似するような男なんだ。サワダって」

「どうだろうね。ミイラ取りがミイラにって所じゃない?その内、答えが出るさ。だから言ったろ?時期尚早だって。あの状況、今は見逃してやろうよ?」

「……それって……」

「どう転ぶか、判んないからさ」


 イズミは、やっとオレの方を見ていた。企んでいるのが、オレにもよく判った。



07



 イズミに促され部屋に戻ったものの、結局一睡も出来なかった。


 ふらふらの頭で、ミハマのいるフロアに向かう。彼の気遣いで、彼と彼の護衛部隊が食事をするときに呼んでもらえている。他の客人と一緒に食事をするのは大変だろうと言うことで。オレは、ミハマが父親であるオワリの王と一緒に食事をとらず、専用フロアで食事をとっていることに驚いたけれど、もうそう言うもんだと納得するしかないのだと思うことにした。


 彼らはいつものようにミハマを囲んで、一つの正方形の大きなテーブルで食事をとっていた。たくさんのバターロールとハムエッグにサラダ。それからオレンジジュース。王子様にしては簡素な気もしたけど、充分すぎる食事だ。時代なのか、好みなのかは知らないけれど、今まで口にしたものは、全部とにかく塩辛かった。気になると言った程度だけど。

 オレはミハマの真正面に当たる、彼から一番遠い席にいつものように座った。その時初めて気がついたけれど、いつもミハマの右隣に座っているはずのサワダがいなかった。ケガをして医務室にいるミナミさんがいないのは判るけれど。


「おはよう、アイハラ。眠そうだね?大丈夫?昨日遅かったし、ケガしてるから……」

「あ、全然。大丈夫だって。それよりサワダは?珍しいね、いないの」


 昨夜、随分遅い時間というか、ほとんど早朝だったんだ、ティアスと二人で中庭にいたのは。途中で見ることをやめたけれど、彼らはいつまでああして一緒にいたんだろう?その後、寝てるって可能性もあるな。


「ちょっと、お使いに行ってもらってる。ご飯くらい食べてけばって言ったんだけど、先に行くって」


 ジュースのボトルをとろうと手を伸ばしたミハマを制し、代わりに注いであげたのはイズミだった。そのまま席を移動し、い つもサワダが座るミハマの隣に座った。


「あ、そうなんだ」

「眠そうだったから、無理しなくて良いのに。シンが代わりに行くって言ってくれたのに、ねえ?」


 同意を求められ、頷いたイズミだったが、彼はいたって普通だった。眠くないのかな……。


「良いんじゃないの?ついでだからさ。あいつが行くっつってんなら、行った方がいいって。自分で気付いてるなら、その方がいいって」

「うん。まあ、そうなんだけどね」

「人のことを心配していられるような立場ですか、あなたは。もう少しちゃんとしなさい、ちゃんと」


 初めてみたときから全くもって違和感の無かった、食事中に新聞を読みながら説教をするシュウジさんの姿が、今日は妙に違和感があった。どうしてだろうと見ていたら、その違和感の正体に気付いた。今日は制服着てる!ちゃんとした格好だ!


「シュウジさん、今日は何かあるの?」

「何ですか」

「いや、……違和感ありまくりでしょ?」


 オレの突っ込みに、不思議そうな顔で隣に座るミハマに尋ねるが、彼もまた笑顔で即座に突っ込んだ。


「普段の自分を振り返りなって。オレにちゃんとしろって言う前にさ」

「ちゃんとしてるじゃないですか。制服まで着て」

「普段してないくせに」


 この二人じゃ埒があかない。オレは隣で笑いながら彼らを眺めていたイツキ中尉に聞くことにした。


「中央の監査の人が来るのよ」

「へえ……」


 あれ?その話、昨日聞いたな。


「ミナミさんに聞いたけど、それって、来週じゃないの?3月1日だって言ってた気がする」

「ええ。先月そう通達があったんだけど、昨夜急に統轄本部の方だけ先に監査にいらっしゃるって連絡が。急な話だから夕方になるそうだけど、準備で今日は忙しいみたい。テッちゃんは出かけて正解かもね」

「統轄本部……。確か、サエキ大尉が来るって」

「ええ。サエキ大尉って方を知ってるの?」

「あ、うん。中央に行ったとき、少しだけ話をしたんだ。綺麗な人だったから、覚えてただけで……」


 一言余計だったかな。イツキ中尉は「そう」とだけ言って微笑んでいたけれど。

 もしかして、サエキ大尉はティアスのことを心配して?いや、いくらなんでもそれはないか。仕事だろうし。でもニイジマ達の話だと、相当心配してたみたいだし……。


「お仕事があるから、制服着てるんだ、シュウジさん」

「……普段も、お仕事してるんだけどね」


 思わず二人で苦笑い。可愛いなあ、イツキ中尉は。


「何ですか、そこ二人。こそこそして!」


 真正面から睨み付け、オレ達二人っつーか、オレを指さしていたのはシュウジさんだった。何か悪いことでもしたかな?メガネ光ってますけど。


「人を指さすなって、シュウジさんが言うんじゃないですか。恐!」

「怖くなんか無いです。いいから、離れなさい」


 お父さんか!?ちょっとシュウジさんがあり得ないくらい怖いので、これ以上突っ込むのをやめたけど。オレは。


「何おっさんみたいなこと言ってんだよ。シュウジさん、だっさいな」

「何ですか」

「いや、だから、行動が」


 何故かムキになるシュウジさんを、イズミが苦笑いを浮かべながらからかっていた。


「監査の人が来るってことは、みんな忙しいんじゃないの?てか、サワダはいなくていいの?」

「ええ。だからすぐ戻ってくるわよ」


 気にせずイツキ中尉に話しかける。何か、シュウジさんのあの態度って、やきもちっぽいんだけどな。さすがに、そんなこたないか。


「お使いって、何しに行ったの?」

「先生を呼びに行ってくれてるの。サラさんの様子を見るために」

「そう言えば、軍医のおっさんも、よく判らないからどうとか言ってたけど、詳しい人なの?」

「そうね。ここの軍医よりはずっとね。でも、やっぱり信用できる先生がいた方がいいでしょ?」

「……そうなんだ」


 納得できない話ではないけど。何か、城の中にいる人より、外の人の方を信用してるって言うのもなあ。今までもずっとそうしてきたってことなんだろうけど。仮にも、王子様とその護衛部隊なのに?


「こんな忙しいときに、サワダがわざわざ?電話で呼べばいいじゃんよ」

「いいのよ。お使いなんだから」


 何か、隠しているような口振りだったというか、イツキ中尉らしからず、先にオレに情報を与えてくれていたことに違和感はあったけれど、やっぱりなって感じだった。

 これも多分、サワダへの気遣いなんだ。彼らの。



08


 オレには一体何をしているのかは見当もつかなかったけれど、城全体が慌ただしく動いているのだけは判った。廊下ですれ違う軍人達は、オレなんかに構ってる暇は無いとばかりにばたばたしていた。

 人に気にされないと言うことが、こんなに楽なものだとは思わなかった。


 楽ではあるけど……寂しいもんだな。不審がられていても、存在してるように見られていた方が、いいこともあるっつーか……贅沢な悩みだけど。


 元々オレなんて、ここでは厄介者って言うか……。サワダに出会って、ミハマが助けてくれなかったら、今ごろどうしていたか判らないくらいだもんな。ミハマが拾ってくれたからこそ、ここでの扱いが良いこともあるし、面倒なこともある。

 まあ、拾ってくれたミハマはともかく、彼の周りからは、まさに招かれざる客として扱われているけれど。


 オレを受け入れてくれたのは、多分ティアスとミハマだけなのに。


 そのティアスは、結局オレがいた時代の彼女と同じく、サワダの元へ走ってしまったわけだ。別の人間だの何だの言っておきながら、結局はそうなるんだ。

 ……まだ、決まったわけではないけれど。オレの思い違いかも知れないし。そうと思いたいし。


「イズミ……中佐!」

「申し訳程度に中佐ってつけんなよ、もう。今日は部屋でおとなしくしてろよ」


 廊下の窓からぼんやり外を見ていたオレを見かねたのか、どこかへ向かっていたはずのイズミが、あきれ顔で近付いてきた。彼が制服を着ていることはそんなに珍しいことではないけど、わざわざ見せびらかしているかのようだった。

 イズミって意地悪だけど、悪いヤツじゃないんだよな。そう思うけど。機嫌のいいときは、普通に面白いヤツだし。元の時代に戻ったら、絶対仕返ししえやろう。


「イズミも忙しいのか?」

「いや?仕事探しに行っても、雑用押しつけられるだけだし。忙しい顔してるだけ。お貴族様達だけ、頑張ってればいいんだって」

「ふうん。シュウジさんとか?」

「あの人、たまには仕事をした方がいいんだって。やれば出来る人なんだから」

「だったら、サワダもいた方が良くない?」

「まあ、出迎えるときだけいればいいんでない?うちの看板だかんね、王子様とセットで」


 一緒に窓から外を眺めながら、げらげらと笑った。その言葉の意味を必死に考えていたけれど、ただの軽口であって欲しいと願うばかりだ。

 窓から見える中庭と、その先に広がる城壁。さらにその先には墓場が見える。


「墓、見てたの?」

「いや……そう言うわけじゃないけど……」


 墓は、あまり好きじゃない。


『……お前のじゃないよ』


 サワダはそう言ってくれても、『アイハラユウト』の墓があるのは事実だし。


『サワダ中佐と、同じ理由よ』


 ティアスとサワダを繋ぐ場所なのかも知れないし。サワダが楽師をティアスと認識していなくても、ティアスはサワダに対してそう思ってるってことだ。

 彼らはあの場所でつながってる。まあ、実際は中庭でしたけど?


「実際さ、どうなのさ、あの二人?」

「ああ、あの二人?」


 オレもイズミも、忙しそうな軍人達が通過するだけの中庭を眺めていた。


「決定的な証拠が欲しいところだな」

「証拠?」

「あくまで、二人でこそこそ会ってただけっつーのは、いくらでも言い逃れできるしね」

「意味が判らん。何に対して言い逃れるのか、会ってただけですむわけないだろうがよ」

「でも、テツだしね。あいつのことだから、会ってただけって言ってもわりと信用できちゃうし、何かあったって言われても、そりゃそうだよな、ですむわけだし」

「なんじゃそりゃ。サワダなら、どっちもオッケーってこと?イズミなら間違いなく、何かあったって言われるだろうけど」


 こいつ、笑い飛ばした。普通にやってそうだな、そう言うこと。


「ミイラ取りがミイラにって言ってたのに。よくわかんねえよ、状況が。オレはそんなんじゃなくて、あの二人が出来てんのか出来てないのかだけが知りたいの!」

「お、ストレートに来たな」


 ずっと笑ってら。楽しんでるだけの様にも見えるけど。こっちは照れくさいっつーのに。


「本人に聞けば?」

「……本人って、サワダ?イズミが聞けよ」

「違うって、彼女。ティアちゃん」


 何でこっちでも、いつの間にそんな馴れ馴れしい呼び方になってんだよ。


「オレが!?」

「他に誰が?確認できたら報告よろしく。彼女、さっきサワダ議員となにやら打ち合わせしてたけど、終えて部屋に戻ったの見てたから」


 オレの肩を叩き、立ち去る。振り向いたら、彼はこちらを見ることなく、手を振っていた。

 彼の言葉に動かされたわけじゃないけど、オレはその足で彼女の部屋に向かった。



09


 彼女の部屋の前で声を掛けてみたが、返事がなかった。そのことに少しだけ、ほっとしてしまった自分が嫌だった。だけど、このままで終わらせるのも何だか悔しかった。多分、イズミのせいだ。

 窓から再び中庭を臨む。さっきよりも全体が一望できた。普段よりずっと、人が慌ただしく動いていることがよく判る。

 1階に下りて、案内板に従って中庭に向かう。ここに来て随分経つけど、中庭に出るのは初めてだった。昼は簡単に出られるけれど、夜は中庭に通じる出口に衛兵が立っていて、入れないことを知っていたから。あまり、出歩くのは得策じゃ無いというのは、オレ自身がよく判っていたことだから。

 中庭に出ても、城の中と同様、オレのことなど構ってる暇など無いと言った感じで皆通り過ぎていく。普段なら、オレの胸に光るバッジを見て、声を掛けてくるなり、訝しげな目をするなりするのに。

 人の流れに逆らいながら、昨夜、彼女たちの姿が見えた辺りに向かう。木陰にベンチがあったり、広場になっていたりと、公園のようになっていて、上からは見えなかったが、城内の人々の憩いの場になっているような場所だった。彼女たちは、ここに座っていたのかな?


「あら、ユウト」


 木陰にあるベンチの一つに座っていたのはティアスだった。部屋にいないと思ったら、こんな所に……。昨夜もいたくせに。

 人といるときは元気な顔をしているが、実際はまだケガが治っていないはずだ。だからかも知れない。うっすら汗の浮かぶ額を拭きながら、ややぐったりとした表情で座っていた。


「昨夜のケガは大丈夫?」

「オレは、全然平気だよ。ちょっと痛いけど、歩くのには困らないし。ティアスこそ……」

「私も、大丈夫よ。少しは動かないとね」


 オレは昨夜、彼女を相当怒らせているはずなのに、彼女は笑顔を見せてくれる。何もなかったかのように。彼女が優しいからだけではないと思うオレは、やっぱり自惚れてるのかな。

 黙って彼女の隣に座った。ちょうどサワダがしていたように。彼女は何も言わなかった。


「そう言えば、来週来るはずだった監査の人、今日来るんだってね。こんなに城の中が慌ただしいの、初めて見たよ。スゴイ影響力だ」

「そうね。でも、仕方ないわよ。それくらい中王の影響力は大きいのよ?」


 ゆっくりと、彼女の視線が辺りを見渡しているのが判った。頭は一切動かさずに、周りの様子を伺っているのが判る。判るのに、彼女の声は朗らかだった。

 彼女が辺りを見渡した理由を、もうオレは知っていた。ただ、どうしてそれを彼女が気にする必要があるのかは判らないけれど。だって彼女は、中王側の人間なのに。どうして中王の監視を気にする必要があるのか。


「……もしかしてもしかするけど。慌ててきた人って言うのは、君を心配してかな?」

「かもね。まいったわ」


 彼女は笑顔のまま溜息をついた。嬉しそうに。


「監査って、何するの?こんなに大変なこと?」

「大したことじゃないわ。予算が適切に動いているかとか、不適切な施設が国に存在していないかとか、書類を4、50枚ほど記入して、チェックするだけよ?ああ、でもオワリは5万人越えてるから半期に一度の監査もあるのね。めんどくさそう」

「……5万人?!」


 少なくない?!いくら地殻変動があったからって、500年も経ってるはずなのに。


「5万人越えてたら大国なの?オワリってどれくらい人がいるのさ?」

「えっと……たしか8万3千人で、中央を守るカントウに次いで2番目よ?」

「少ないって。だって、名古屋市だけでも220万人越えてたはずなのに」

「それはユウトの時代ってこと?随分、窮屈ね」

「いや、でも……そうでも……無かったとは言わないけど」


 そう言えば、外をしっかり見たのって、この城の付近と、最初にサワダに会ったN町の中心部だけなんだよな……。名古屋城もすっかり廃墟だし。ミナミさんも言ってたけど、実際はオレの知ってる風景なんか、ほとんど残ってないのかも知れない。


「人口が増えていかないんだから、そんな数なんてとうてい無理ね」

「増えていかない?」

「だって、増える数より減る数の方が多いんだもの。仕方ないわね。いくら墓を作っても追いつかない。いつか墓だらけになるかもね」


 墓を掘ってる張本人が、自嘲気味に笑った。何も言いたくなかった。

 どうせ、ティアスもサワダも、その墓だらけの世界に自分の墓を掘るとか言い出すんだ。


「監査って、何のためにするんだよ?」

「さあ?主のお考えになることだから。中王は、神様と一緒なのよ?彼が黒と言えば、白いものも黒くなるの」

「ふうん」

「あは、ユウトってばすぐ顔に出るのね」


 彼女の笑い声に、思わず顔を伏せてしまった。恥ずかしくて。そんなにすぐに顔に出るかな、オレって。


「何のためかしらね。表向きは各国の経済バランスを正確に知ることであったりとか、国の正しい発展のために必要な資料であったりとか、いろいろそれらしい理由はあるけど、そんなことはどうでもいいのよ」


 オレの知ってるティアスも、気が強くて、喧嘩腰のような話し方になるときがあった。大概それは、サワダに対するときによく見られたけど。

 だけど、今のティアスは、喧嘩腰と言うよりは、ただただ悪意に満ちていた。


「本当の理由は?」

「抑制のため」

「……何を?」

「この世界の成長。言ったでしょ?いつか墓だらけになるかもねって。墓だらけになる前に、この星自体が墓になっちゃうかもね。そうしたら、墓を掘らなくてすむのかもね。私も、あの人も」


 新緑の広場を、軍人達がせわしなく行き来する。だけど、隣に座る彼女は、遠い目をして、彼を思っていた。全ての風景が目に入っていないかのような顔で。


「……サワダのこと……」

「え?」

「案外、好きなんだったりして」


 あくまで笑顔で、何でもないような顔で聞いたつもりだった。変な汗が背中を伝っていたのが判ったけど、妙に顔と頭が熱くなっていくのが判ったけど、必死で笑顔だけ作っていた。


「それはないよ。もしかして、それを聞きたくて、やたら中佐のことを聞いてたの?」


 彼女の笑顔は落ち着いたものだった。その余裕のある姿に、オレは思わず溜息をついてしまった。


「どうしたのよ、ユウト?」

「いや、そっか。だって、二人ともケガしてるのに、こそこそ二人で会ったりしてるから」

「え?まさか。昨夜のことは違うって言ったのに」


 むっとした顔でオレを見ていたけれど、彼女は怒っているようには見えなかった。


「いや、あの後、二人でここにいなかった?」

「ううん?見間違いじゃない?」


 彼女が言うならそうなのかと、オレは納得したかった。



10


 昨夜、ティアスとサワダがここにいたときは、もっと彼らの距離が近かったはずなのに。今の彼女には、その周りに人を寄せ付けないような、触れるのを憚られるような、そんな雰囲気をまとっていた。

 もう少しだけ近付きたかった。

 ただただ、当たり障りのない世間話を続けていても、彼女には近付けない。だけど、さっき少しだけ見ることが出来た、彼女の本音に近い部分を、彼女はもうだしてはくれなかった。


「……サワダ中佐」


 『お使い』から戻ってきたらしいサワダが、黙って彼女の横に立っていた。根暗のくせに、妙な存在感のある男だ。

 彼女にもっと近付きたかったのに。どうしてこのタイミングで帰ってくるかな?この男は。


「お使いって聞いたけど?終わったのか?」

「ああ。まあ」


 口の端を少しだけ上げて、微笑んだ。いや、微笑もうとしただけかも知れない。そのぎこちない動作が妙に儚げで、オレは喧嘩腰だった口調を反省した。


「あの、横……」

「うん」


 充分すぎるくらい空いていた彼女のもう片方の隣に、サワダは勧められるまま座った。体を動かして場所をずれたはずの彼女は、再び体を動かして彼の方へ身を寄せた。彼もまた、少しだけ彼女の方へ身を寄せる。彼の左手が、彼女の腰に触れる程度に。

 いや、これでできてないって言われても、全く信用ならないんですけど?!一体何があったんだ、この二人!


「二人でなに話してたんだ?」

「世間話よ?みんな忙しそうねって。ねえ、ユウト?」


 オレもまた、黙って頷く。彼女の悪意は、サワダに知らせるなってことか?オレには教えてくれたのに。

 オレの顔には多分、出ていたのだろう。この優位に立てた心が。サワダが苦笑いをしていた。


「随分、軽装で出かけたのね?どこへお使い?」

「ああ、学校のある方だけど。あんな所に制服で行ったら、町の人にビビられますけど?」

「そうね。行ったことはないけど、穏やかなところみたいね」

「そうだな。監査もあそこまで細かくは見ないし。町並みをずっと残し続けている……」


 サワダの目が、彼女を警戒していた。だけど、彼の口振りに敵意は感じられなかった。

 だけど、彼が彼女を疑っているのは確かだった。彼女はそれに気付いているのか?それに、彼はどの程度、彼女を疑っているのか?


「こんな所にいないで、休んでれば?」


 彼は彼女の顔を見ずに、彼女を気遣った。彼女は驚いたような顔を一瞬だけ見せたが、すぐに微笑んで見せた。


「大丈夫よ。お気遣い無く。あなたこそ」

「別に。オレは大したこと無いけど。あんたは酷かったろうが。心配してるヤツもいるだろう」

「そうね。ここでは1人だけど」


 気遣ってるかと思ったけど、そうじゃない。探り合ってるんだ。暑くないのに、変な汗が流れてくる。彼らの会話に入っていけない。

 サワダは、もしかしたら思った以上にいろんなことを知っているのかもしれない。イズミ同様に。


「そろそろ、戻らないといけないんじゃない?その格好では出迎えられないでしょう?」

「そうだな」

「私も、少し休んでるわ。あなたのお父上に、中央からの使者を一緒に出迎えるよう言われているから、準備もしないとね」


 彼女は立ち上がり、オレとサワダを交互に見つめ、挨拶をして通用口に向かう。サワダはそれを追いかけたかったのかも知れない。軽く腰を浮かせ、彼女の方へ体を動かしたが、オレの存在を確認して再び座った。


「行けば?サワダも準備があるんだろ?」

「いや……まだ、時間、あるから……」


 さすがに、嫌味だったかも知れない。何とも言えない、困ったような表情で、オレから目を逸らした。彼は立つに立てなくなってしまったわけだ。


「お使いって、もしかして、『先生』?」

「ああ。サラさんが心配だしな。連れてきた」

「ミナミさんって、まだ医務室?」

「いや、自宅に戻ってるよ。先生はシンに連れて行ってもらってる」

「ここに住んでるんじゃないんだ」

「まさか。オレやシュウジは私室をもらってるから、ほとんどここに住んでるようなもんだけど、一応、家があるし。あまり帰らないだけで。シンとサラさんは元々N町に住んでたんだけど、こっちの宿舎に住んでる」


 そうか、サワダやシュウジさんは、こんなんだけど一応、お貴族さま扱いだもんな。


「わざわざサワダが迎えに行くんだな」

「まあ、オレもちょっと用事があったし。ついでだよ。ここにいても、仕事押しつけられるだけだし。しかしそれにしたって……ちょっと慌ただしすぎるかな?」


 体ごと辺りを見渡す。その動きにつられて、オレも同じく周りを見渡す。


「予定より1人だけ先に来るっつったって、年末の監査でもないのに、大げさな」

「ああ、その年末の監査ってヤツが、なんかエライ人が来るってヤツ?」

「そうだな。あの、中央の楽師……」


 その単語に思わず反応してしまったが、必死でサワダから目を逸らした。でも、もうサワダは明らかにティアスを疑ってる。オレがここで必死に誤魔化しても無駄かも知れないけど。


「楽師がどうかした?」

「いや、去年の年末の監査のときには来てたよ。他の人に任せて、半日で戻ったけど」

「そうなんだ」


 何だ、そんな話か。


「サワダ中佐!こちらにいらっしゃいましたか。探しました。サワダ議員も殿下もお探ししていたようですが」


 サワダの横に立ち、敬礼をしながら声を掛けてきた男性は、見たことのない顔だったが、階級章は大尉だった。25,6歳って所だ。サワダに対して媚びるような態度の無い人は、ここでは逆に珍しかった。

 彼は大尉の言葉を受け、慌ててベルトループにつけていた携帯を確認する。どうやらかなり着信履歴が残っていたらしく、あからさまに「しまった」と言った顔を見せた。


「今日は監査が来るだけでは無いのですか?」

「ええ。そうなんですが。実は昼ごろ、カントウの姫君がいらっしゃるという連絡がありまして……」

「……タイミング悪いな、あの女は」


 「カントウの姫君」という言葉を聞いて、サワダは嫌な顔をした。


「何か?中佐?」

「いえいえ。何も。わざわざありがとうございます。すぐに戻りますので」


 笑顔で敬礼をし、大尉を労った。大尉が立ち去るのを見送り、サワダも立ち上がった。


「カントウの姫君って?」


 通用口へ向かうサワダを追いかけながら、話しかけた。イズミなら嫌がって話してくれないだろうけど、サワダはきちんと応えてくれた。


「ミハマの追っかけだよ。カリンって言うんだけど。気が強くて、男勝りで、やたら頭の切れる女だ。鋭いっつーか」

「呼び捨てなんだ。お姫様だろ?」

「まあ、幼馴染みみたいなもんだからな。オレは苦手なんだけど。お前も気をつけろよ。余計なこと言うな。特にカリンの前では」

「……そうする」


 サワダが言うならよっぽどなんだろうな。でも、どんな人だろ。

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