微睡むー3
主人公達の自己紹介をしてませんでした。今回入れてます。
「私たちは、あなたを傷つけに来たんじゃない。」
少女の声は、不思議と納得できる響きでどこか懐かしい感じがした。
悠真は剣を構えたまま動かない。
「……ここまで争っておいて信用できると思うか?」
「思わない。だから今はそれでいい。話をしたいの。」
栞は即答した。隣で真琴が肩をすくめる。
「私も逆の立場なら襲う。」
「あなたは本当に研究者なの……?」
「失礼だなぁ。」
口では軽く返すものの、真琴の視線は悠真から離れない。警戒している。手も片手は腰の銃にすぐ届くだろう。
その様子を見ながら、悠真はマスクを解除した。
♢ ♢ ♢
「強いな…」
それだけではない。あれほどの力を持っているのにどこか危うい。まるでー
まるで、自分でも知らない力を振るっているような戦い方だった。
「ねぇ、一つだけ聞かせて。」
真琴が端末をしまいながら言う。
「その子。君が作ったの?」
澪を見る。その瞬間、悠真の空気が変わる。
剣先がもどり、警戒は強まった。少し怒りも感じる。
「……関係ない。」「関係ある。」
「ない。」「ある。」
真琴も引かない。
「夢で創られた存在が、自分の意思で世界を書き換えた。」
悠真の眉が動く。
「そんなことはありえない。」
真琴は笑った。さっきの笑顔だ。獲物を見つけたと言わんばかりの笑顔で続ける。
「だから知りたい。」
「研究者だから?」
「もちろんそれもある。でも1番は私が知りたいから。」
「それに…」
急に真面目な顔になる。
「放っておけない。君の、君たちの力は危ういよ。だから調べてなんとかしたい。」
悠真は何も答えない。警戒も緩めていない。
その様子を見ていた栞が、一歩だけ前へ出て尋ねる。
「あなたは、この世界から出たい?」
「……。」
「出たくない?」
悠真は澪を見る。澪は小さく笑っているだけで何も言わない。答えを急かさない。
「……帰る場所はある。」悠真がぽつりと呟く。
「現実は嫌いじゃない。」
その言葉に栞は目を見開いた。
「やっぱり…」
夢に囚われた人間ではない。
悠真は続ける。
「でも、ここには澪がいるんだ。」
その一言だけで返事は十分だった。
栞は胸が少し痛んだ。失いたくない相手がいる事、その相手と深く繋がっている事。
「…わたしもわかるわ。」
真琴が小さくため息を吐く。
「やっぱり、今日は無理。」
栞も頷いた。
「ええ。戦っても意味がないもの。」
真琴は悠真へ向き直る。
「一つだけお願い。」
「断る。」
「まだ何も言ってない。」
「聞く前に断る。」
「頑固だなー君は。はいはい。じゃあ質問!」
「またここで会える?」
真面目な顔だ。右手を差し出して聞いてきた。
「聞いてもいいんじゃない?」
「澪。」
「この人たちは悪い人じゃない気がする。」
「…話くらいなら。」小さく笑って握り返す。
「良かった。私は神代 真琴。あっちの愛想の悪い方は一ノ瀬 栞よろしくね。青年。」
「天城 悠真。こっちは妹の澪」
「天城 澪です。さっきはお兄ちゃんが思いっきりやってすみませんでした。」
「大丈夫大丈夫。悪いのはいきなり襲いかかったこっちだしね。怖い思いをさせてごめんなさい。」
談笑し始めた2人のそばで、悠真はしばらく黙ると剣を消し、赤い装甲が光になってほどけ、普段の姿へ戻った。光が集まり、変身ベルトに戻る。
「さっきの話だが、約束はしない。」
「うん。」
「でも…きっと来る。」
その返事だけで十分だった。真琴は満足そうに笑う。
「わかった。それでいいよ。」
その瞬間だった。真琴の身体が淡い光に包まれる。
「あ。」本人も気付く。
「時間切れか。」
「時間切れ?」
「今日はここまで。」真琴は苦笑した。
「現実で起こされるんだよ。」
「……現実?」
「詳しくは明日!夢ばかりみてないでちゃんと寝るんだぞ!」
最後まで騒がしい。
「栞、後はよろしく。」
「ええ。」
真琴の身体が光になり、空気へ溶けるように消えた。
「……消えた。」「消えたねぇ。」
悠真は呆然と見守る。
「さっきはごめんなさい。」
栞が小さく頭を下げた。
「驚かせて。ごめんなさい。」
何か言おうとしている感じで少し考えた後、
「また明日。待ってるから。」
最後に少しだけ微笑んだ。
その言葉を残し、栞もゆっくりと背を向ける。
糸が風に溶けるように伸びる。
一歩、二歩。
跳ねるように移動して見えなくなった。
「……変な人たち。」悠真が呟く。
「うん。」澪は笑う。
「でも、悪い人達じゃないよ。大丈夫。」
「?」
「きっと、お兄ちゃんを助けに来てくれたんだよ。」
「俺を?」
「うん。」
悠真は苦笑する。
「助けなんて要らない。」
そう言った。だって、妹といるこの時間がこの世界が幸せなのだから。
けれど胸の奥には、小さな違和感が残っていた。
――本当に、そうなのだろうか。
♢ ♢ ♢
カーテンの隙間から朝日が差し込む。
またいつもと同じ朝の風景だ。悠真はゆっくりと体を起こす。
「……夢。」
いつもなら曖昧になるはずの記憶。なのに昨夜の出来事は、驚くほど鮮明だった。
白衣の女性。糸を操る少女。赤いヒーロー。
そして。
「また明日。待ってるから」
あの一言が、あのわずかな笑顔が頭に残って離れなかった。
作り溜めた分があるのでしばらくは更新頻度高めです。




