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なみだ恋  作者: 青空幹太
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ナチュラルハイ

その夜、ボクは「ナチュラルハイ」というバーのカウンターで一人酒を飲んでいた。ボクは悲しくて悲しくて、男泣きしながらグラスのウイスキーを口に運んでいた。とあるバーのママに恋をしていて、通いつめても、高い酒を入れても、アフターに連れて行っても、一向にママの気を引くことはぜきずにいた。有り体に言えば、ボクは絶望していたのだ。

「ナチュラルハイ」は、その頃、20代、30代の人が集まる店として、新宿二丁目では、ちょっと話題になっていた。ボクは33歳で、二丁目のビギナーだった。「ナチュラルハイ」略して「ナチュ」のママはトモさんと言って、ボクとは割りと年も近くて、通い始めてそんなに時間は経っていなかったけど、ボクにとっては二丁目の水先案内人みたいな存在だった。

 そもそも、「ナチュ」はボクが二丁目で始めて飛び込んだバーだった。実はボクは20代の頃、2年間ほどスペインに留学していたんだけど、向こうでこういうバーに通ったことはあった。でも、日本に帰国してからの数年間は、いわゆるノンケ友達と普通の飲み屋で飲んでいた。ところが、1998年の大晦日に突然、ボクの頭に焦燥感が襲ってきた。

「このままでは、ボクの人生終わってしまう」

そんな感じだった。で、ボクは意を決して、その年の夏のボーナスで買ったばかりの富士通のパソコンに向かうと、猛然と検索を始めたのだった。なにせ、インターネット黎明期のことだから、作業は困難を極めた。でも、ようやく、新宿二丁目に「ナチュラルハイ」というバーがあることが分かった。その店の電話番号、住所をメモすると、パタンとパソコンを閉じた。


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