第6話 清流に咲く笑顔、水浴び
朝、目を覚ますと、朝日が木々の間からキラキラと差し込んでくる。金色の光が葉を透かして、朝露が宝石のようにきらめいている。とても気持ちの良い目覚めだ。いや、ほとんど寝てないが……。
隣でスヤスヤと眠るライアとメリーヌの寝顔は、凄く幸せそうだ。そしてアリスは俺の上に乗っかって寝ている。最高に幸せだが、重くて体中が痛い……。
もちろんアリスの体重は軽い方だろうし、女の子に重いなんて言ってはいけないのは承知だ。それにしても、天使のように穏やかだ。
アリスと目が合った。
「ん……ご主人様、おはようございます」
一番に目を覚ましたのはアリスだった。寝ぼけ眼をこすりながら、可愛らしい声で挨拶してくれる。
「おはよう、アリス」
ライアとメリーヌも目を覚ましたようだ。
みんなと朝の挨拶をしてふと気づく。
夜は暗くてよく見えなかったが、アリスはふりふりいっぱいのパンツに白のキャミソール、ライアはサテン地の白いロングキャミソール、メリーヌは白地に黒のレースのエロ可愛いベビードールだ!
体を起こしても、下着のまま3人とハグ。最高に幸せな朝だ。こんな贅沢がこれから毎日のあたりまえになるのか! 習慣は第二の天性だということか!
いや、毎日ガチャでハーレムメンバーを増やせるんだった。昨日のデイリークエスト分の6枚もまだ残ってるから、このまま今日の分とデイリーボーナスも合わせたら14枚のガチャだ!! もちろん明日以降もある……。
おっと、ニヤケ顔にならないように注意せねば……主たる威厳が大事だ……。
「そうだご主人様、水浴びしよーよ!」
アリスが瞳を輝かせ、ワクワクした表情で続ける。
「清流がとっても綺麗だったでしょ? ね、みんなで水浴びしよーよ! きっと気持ちーよ!」
ライアもアリスの言葉に賛同するように、上品に微笑んだ。
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「ええ、朝の清流は、きっと心身ともに清めてくれると思います」
メリーヌも目が合うと、耳をピコっと反応させて乗り気だ。
「メリーもご主人様と一緒に水浴びしたいにゃ!」
3人に見つめられたら、断る理由なんてあるはずがない。「はい」と「Yes」の2択問題だ。これは絶対に敗北しないサービス問題だ。
「ああ、じゃあ、みんなで行こうか」
そう言うと、アリスは恥ずかしがりもせずにパパっと脱いで裸んぼだ。
ライアは上品に、メリーヌはセクシーなしぐさでそれぞれ脱ぎ始めた。
おっと、まじまじと見入ってしまった……。いかんいかん、なるべく見ないように俺も脱ごう。
……いや、見ないようにって、そんな無理ある!?
いや、でも主たる威厳を! いま俺が崩れたら、ヒロイン勢が野放しに!
恥ずかしいが俺は主人だからな、みんな平気で脱いでるのに主だけ恥ずかしがってたら情けない。ここは堂々と、だ!
落ち着け俺……
俺は木だ……
俺は石だ……
俺はただの風景だ……
3.141592なんだっけ?
「ご主人様まだー?」
どうやら考えるだけ無駄なようだ。
アリスは朝露を弾くように駆けていき、ライアは風に揺れる白百合のように静かに歩き、メリーヌは獲物を狙う獣のようなしなやかさで水辺へ向かった。
朝の光を浴びながら、俺たちはすぐ近くの清流で水浴びだ。木漏れ日が水面をキラキラと照らし、せせらぎの音が心地よい。
「わあ……やっぱり綺麗!」
水面が鏡のように光を反射し、小さな魚が影をすり抜ける。
そしてアリスの露わになった白く透き通るような素肌が、日の光を浴びて、まるで妖精のように美しい。
ああ、アリスはもっと綺麗だよ!
水位は深いところでも腰まで浸からない程度。流れも緩くて危なくはなさそうだ。が、全部丸見えじゃないか!!
こういう時こそ見て見ぬふり。Lv1だが主の威厳も保ちつつ、だ。
「ふふ……冷たくて気持ち良い!」
「そうだな、昨日は疲れたし、汗もかいたからな」
女の子に囲まれて裸で水浴びなんて最高の贅沢。素晴らしい解放感、究極の目の保養じゃないか!
石鹸もシャンプーもないが、顔も髪もわしゃわしゃと洗い、流されない程度にぷかぷか浮いてくつろぐ。
アリスはキャッキャッとはしゃいでいる。その笑顔は、朝露に濡れた花のようで、見ているだけで心が洗われるようだ。
ライアも白い肌を晒しながら、ゆっくりと水の中へ。その佇まいは優雅で、まるで水面に咲く白い百合の花のようだ。
メリーヌは、水に入って早々かなり上流の方へ行ってしまった。猫背に猫手のポーズで水面をじっと見つめている。何をしているのだろうか?
猫は水が苦手だが、猫人族はそうでもないみたいだ。
背後に何となく気配が……。背中からアリスが飛びついてきた。
「ねえ、ご主人様ー、今日はアリスといっぱい遊んでよー」
そうだなぁ……今日は1日中アリスの相手をしてやるのもありか。時間もたっぷりあるんだ。
「よし! いいだろう。今日はいっぱい遊んでやるか!」
「やったあ、ご主人様大好きです」
満面の笑顔だ。そう、この笑顔が好きなんだ。おんぶしたまま後ろにザブーン……。
……少し離れた場所では、メリーヌが両手を動かして体操している。なんだろうか? 太極拳でもやってるのだろうか? と思わせるような弧を描く両手の動きだ。そしてしばらくすると緊張感が伝わってくる。これは狩りをしているのだ。
メリーヌは水面に鋭い視線を向けて息を殺しているのがわかる。そして次の瞬間、指先に青いエフェクトが纏い、突然水面がざわめいた。一瞬で手を滑り込ませ……次の瞬間、空中にはピチピチと跳ねる大きい魚が……。
後から遅れて非常に綺麗な水しぶきが弧を描いた。
メリーヌは両手を広げ最短距離で2尾の魚をキャッチ、攻撃したであろう場所に背を向けて佇む。水しぶきによって出来た小さな虹をバックにこちらへ歩いてくる。
猫人族の特徴だろうか。普段は爪など見せない普通の人間の手に見えるが、戦闘時には猛獣の様な攻撃を見せる。指先も手首も普段はまっすぐ伸ばしているのをあまり見たことがない。だいたい軽く丸めた、いわゆる猫手な感じだ。素早い動きでちょっと良くは見えなかったが……
疾風の猫爪とでもいったところか。
さて、メリーヌが帰ってきた。
「獲ってきたにゃ!」
なんかもう、誇らしげすぎて笑う。ドヤ顔、魚2匹、猫耳ピン!
でも全裸だぞ、メリーヌ!!
* * *
一方その頃、王都ファルミナでは……
玉座の間は静まり返り、重々しい空気が支配していた。
「……陛下、まずは“勇者たち”に、勇者装備一式を下賜なされてはいかがでしょう」
玉座の下にひれ伏す宰相が、含み笑いを交えて進言する。
「ふん、あのような得体の知れぬ異邦人に、装備など……」
王は渋い顔で呟いたが、宰相の言葉は続いた。
「――ただし、装備の中に“奴属の首輪”を紛れ込ませるのです」
その瞬間、王の目がギラリと光った。
「ほう……あれを使うか」
「はい。装備とともに“礼”として渡せば、疑うことなく装着するでしょう。魔力を注げば、思考も行動も、我らの掌の上に」
宰相の口元がゆっくりと吊り上がる。ぞっとするほど悪辣な笑み。
王は玉座のひじ掛けをズビシッと叩き、声を張り上げた。
「それは名案じゃ!」
「“首輪”には余が自ら魔力を込めよう。これで、逆らうなど不可能よ。娘も褒美も与えぬ。余の兵として、血を流し、命を捧げよ……!」
「ククク……勇者よ……地獄を味わって命乞いするがいい……決して許さんがな!」
「フハハハハハハハハ……」
王の冷たい高笑いが、石造りの王宮を震わせるように響き渡った。
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