第4話 ついに開幕!?キャンプ生活は火起こしから
少し歩くと、俺たちの目の前には、小さな清流が流れ、周囲には適度に木々が茂った開けた場所が広がっていた。地面も比較的平らで、キャンプ地としては申し分なさそうだ。
「ここにゃん!」
猫背のメリーヌが得意気に胸を張っている。大層誇らしげだ。
案内したのはお前じゃないだろ……。
「ライアありがとな、さっそく野営の準備をしよう。」
そういえば、猫人族がいるってことは、他の種族もいろいろいるんだろうか?
猫耳に尻尾はモフモフだが、他は人間の女性と大差なさそうだ。
「どうしたにゃ?」
両手をまねき猫のように前に出して、猫背でこちらを見ている。
「いや、何でもないんだ。お腹が空いたし、少々疲れたんだ。」
「メリーは狩りに行って来るにゃ!」
言うや否や、メリーは軽快なステップでスルスルと植物や木を躱しながら遠ざかっていく。さすがは獣人というべきだろう。
とはいえ、思わず「待ってくれ!」と言いたくなる寂しさもある。ここは我慢だ。ちゃんと戻って来る。決して逃げたりはしない。
さっき誇らしげだったのを褒めなかったからって主に呆れて去っていったわけじゃない。他にいい男の匂いを見つけて出て行ったわけでもない。大丈夫だ。
俺はご主人様と慕われる存在。きっと大丈夫。杞憂だと信じたい……。
「ご主人様は座って休んでてね」
アリスにまで心配されてしまった。情けない主人だ……。
「ああ、ありがとう。」
「でしたら私は調味料を集めてきます」
ライアはゆっくりと周辺を調べながら歩き、森の中へ消えて行った。
* * *
しばらくして、メリーヌが何かを担いで戻ってきた。それは、地球のニワトリよりも一回り大きく、羽根の色が鮮やかな鳥だった。
「ご主人様! ジャングルフォウルを獲ってきたにゃ!」
満面の笑みで、捕ってきたジャングルフォウルを見せてくるメリーヌ。生々しい獲物に、一瞬たじろいだが、腹が減っているのも事実だ。
猫背のメリーヌが得意気に胸を張っている。今度こそ誇らしげだ。
「おお、メリーヌ、グッジョブ!」
不安になってた小心な自分が情けない。まさに、案ずるより産むが易しではないか。
メリーヌは嬉しそうに耳をピクピクさせた。
思わず頭を撫でようと、あわよくばケモ耳もふもふとか考えたが、寸でのところで思いとどまった。
出会って間もないのに流石に失礼かもしれない。嫌われたくないし、ここはご主人様として、どっしりと構えておかねば!
続いてライアも帰ってきた。どうやら塩と胡椒を採ってきたらしい。採ってこれるようなものなの?
まずは火起こしだ。地球でキャンプ経験なんて皆無の俺に、サバイバル知識なんてあろうはずもない。ここは、もしかしたら何か知っているかもしれないアリスとライアに頼るしかないか……。
「アリス、ライア、火を起こせるか?」
二人に視線を向けると、アリスは首を傾げ、ライアも申し訳なさそうにうつむいた。
「できないです……火打ち石があれば出来たんだけど……」
「私も、ご主人様のお役に立てず、申し訳ありません」
やっぱり、そうだよな……元はカードだし、サバイバルスキルまでは期待できないか。
「いや、大丈夫だ。問題ない。」
火も起こせないのは大問題だ! 確か、木の棒を擦り合わせるとか聞いたことがあるけど、そんな原始的な方法で本当に火が点くのか?
そんな俺の不安をよそに、メリーヌが自信満々に胸を張った。
「ご主人様、メリーに任せるにゃ!」
そう言うと、メリーヌは素早い動きで周囲の小枝や落ち葉を集め始めた。そして、自分の鋭い爪を岩に引っ掛け、キュッキュッと素早く擦り合わせ始めたのだ!
「え、ちょ、まさかそれで!?」
目を疑う俺を尻目に、メリーヌが爪を擦り合わせた場所に、小さな火花が散った。それを乾燥した葉っぱに上手く移すと……チリチリという音と共に、煙が上がり始めた!
「す、すげえ! 本当に火がついた!」
原始的な方法どころじゃない! 猫人族の爪、恐るべし!
メリーヌは両手で火だねを器用に守りながら、枯れ葉を増やし尻尾で地面を叩きながら風を起こして火を大きくしていく。その手際の良さと尻尾の器用さに、ただただ唖然と、いや感心するしかなかった。
火が安定してきたところで、次は寝床の確保だ。幸い、周囲には大きな葉を持つ植物がいくつか生えている。アリスとライアに手伝ってもらい、それらを何枚か剥がしてきて、雨露を凌げるように簡単な屋根を作り、地面には枯れ葉を敷き詰めた。
「これで、今夜はなんとか寝られそうだな」
「よし食事にしようか」
「調理はアリスに任せてね!」
そう言うと、アリスは手際よくジャングルフォウルを使って料理を始め出す。ライアは森の妖精の加護の力で調味料を手に入れたそうで、さすがファンタジーって思っていたけど、すいません、そうじゃなかったようだ。
塩はソルトツリーという木から採れるドロっとした樹液で、完全に塩。そして生胡椒——現実世界で胡椒がどんなものでどうやってとれるのかは知らないが、これは生のつぶ胡椒そのものだ。それからよくわからない木の実の種、これも香辛料だそうだ。ちなみに実は渋くて美味しくないらしい。ほかにも山菜やキノコ類も少しあるようだ。
さすが森の守護者にして森の妖精の加護もち! ライア様優秀!
やがて、香ばしい匂いが漂ってきた。アリスが焼いてくれたジャングルフォウルは、野性味あふれる感じだが、香辛料が良いスパイスになっていて想像以上に美味しかった。
「これはうまい! よし、明日からメリーヌは狩り、ライアは調味料や山菜、キノコ類の採取、アリスは料理な! 火の番は俺に任せとけ!」
ま、火を付けるがメリ―ヌだけどね……
温かい火を囲み、美味しい食事を共にする。まさか異世界に来て、こんな穏やかな時間を過ごせるとは思ってもいなかった。サバイバル生活も悪くないかもしれない。
そして美少女3人に慕われて過ごすこれからのキャンプ生活。国王様ありがとう、そして俺はもう地球へは帰りません。そうだ人生前向きが大事だ! ポジティブに生きないといけない! 可愛いこの子達とサバイバルハーレムだ!
「おっと、そうだ、デイリークエストを忘れていた」
んーもうだいぶ日も落ちて暗くなりかけてるけど絶対ノルマって事は無いだろう。試してみるか!
「デイリークエスト!」
全部で7つ
1.デイリーボーナスを受け取る 1/1 済 1pt
2.ガチャを引く 2/2 済 2pt
3.カードブックを開く 1/1 済 1pt
4.カードを使って召喚する 1/1 済 2pt
5.カードを合成する 0/1 未 2pt
6.魔物と戦う 0/1 未 1pt
7.魔物を倒す 0/1 未 2pt
[獲得ポイント 6pt]
うおおおおお、すでにいくつか終わってる、が、合成? わからん。いや、ゲームなら重複カードは合成するのが定番だ。これも恐らくそういう事だろう。それから魔物と戦う? いや、それは無理だろう。見なかった事にしよう……。
まあ、でも『デイリーボーナスを受け取る』とか、これだけでクエスト1つ達成は楽勝すぎじゃ? いや、ゲームだと意外とこんなものか。ゲームのデイリークエストなんて、ほんとにしょうもない事を作業のようにやらせるだけのクエストばっかだもんな。それと一緒と思えば、こういう作業は非常にありがたい。
で、お? ああ、受け取ろうと思ったらそのまま受け取れるのか……相変わらず良く分からんシステムだ。
空中に6枚のガチャチケットが出現した。
どうやら1ptにつきガチャチケット1枚らしい。やばい、ガチャチケットしかでないとしたら、これは毎日ガチャ生活しろって事だよな? ガチャ引くたびにハーレム増やして鼻の下伸ばせと? いや、能力を伸ばさないとダメだろ!
地球では新作MMORPG『異界召喚ガチャクロニクル』をスタートダッシュで始めて、給料出て3日で全財産つかっちゃったけど、もう立ち直りました。いや忘れてました。どうでもよくなりました。本当にありがとうございました。
「異世界召喚バンザイ!」とだけ言っておこう。
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