第3話 レベル1だけど立派なご主人様目指します
「う、うそだろ……? なにこの子たち、俺を崇拝してくるってどんなご褒美!? いや俺なにかしたっけ!?」
目の前に現れた3人の美少女を、俺はただただ呆然と見つめていた。
可愛らしいメイド服に栗色のツインテール、翡翠色の瞳、可愛いお顔がしっかり見えて目にかからない前髪。首元が涼しいミニボブのアリス。こんな可愛い子にご主人様なんて言われて慕われたら、全人類がロリコンになること間違いなし!
そしてサラサラの黄色いロングストレートの髪に、透き通るような瞳を持つエルフのライア。地球人類の皆様、これがエルフです、これぞエルフです。エルフは実在しました。ファンタジーの想像を超えたリアルエルフです! 細くスレンダーな体にチャイナ服に近い緑色のドレス。清楚で奥ゆかしさを感じる、この上なく上品な佇まい。もはや減点のしようがない本物性だ。10点、10点、10点、10点、10点、出ました! 信じられない! オールテンです! 歴史的瞬間です!
少々興奮しすぎたようだ。そして3人目は尻尾をフリフリさせて嬉しそうにこちらを伺っている猫耳のメリーヌ。赤い首輪にそこそこ長いボリュームのある白い髪、ダボッとした白のパーカー。かと思えば、パーカーのすそからほんの少しだけ見える赤いミニスカート。これは可愛い。「ケモ耳最高だぜ!」おっとイケない、つい言葉に出してしまった。早くモフりたい。
自己紹介されたのに最初の一言がこれはかなり恥ずかしい。3人とも「?」な感じでこちらを見ている。
まさか、本当にカードから人が出てくるなんて! しかも、3人ともめちゃくちゃ可愛いじゃないか! さっきまでの心細さなんて、一瞬で吹き飛んだ。オレの地球時代の思い出も未練も全部吹き飛びました。猫人族が、「にゃ!」ですよ、「にゃ!」!
異世界最高にゃ!
俺は主人だ、俺こそが主人だ、そして俺だけが主人なんだ! そう心の中で自分に言い聞かせ、主人らしく威厳たっぷりに……
「俺が主人にゃ!」
やべ、イケボでカッコつけようと思って出たのは猫語。「にゃ!」とか言ってしまった! 恥ずかしすぎる。
「いま、にゃって言ったにゃ!?」
メリーヌがいち早く反応して、耳がピコッと立ち、目をキラキラと輝かせた。
どこかに隠れたいほど恥ずかしいが……大丈夫だ! 最悪の事態はまだ起こっていない!
アリスはにっこりと微笑んで、
「はい、ご主人様!召喚者は運命の相手です。あなたの侍女として、精一杯がんばります!」
表情はあどけないが、俺より落ち着いてやがる。なんせ俺はLv1だからな。全員の中でも一番弱っちぃ気がする。彼女たちはどれ位なんだろうか、さすがにLv1ってことは無いだろう。もう笑うしかない、俺の敗北は確定した……。
ライアも上品に頭を下げて、
「微力ですが、ご主人様のお役に立てるよう頑張りますね。」
そしてメリーヌは、キラキラした瞳で俺を見つめてる。猫手のポージングで、
「ご主人様と一緒にいられて、メリー、すっごく嬉しいにゃん!」
くっそ最高かよ! その言葉を聞いた瞬間、胸の中に温かいものが広がった。ああ、本当に、本当に嬉しいんだ。さっきまで死ぬほど不安だったのが嘘みたいだ。
「お、おぉ……! そっか! ご主人様、か! なんだか照れるけど……よろしくな、みんな!」
俺は顔を赤らめながらも、精一杯の笑顔で答えた。まさか、こんな展開になるなんて、夢にも思わなかった。森の中で一人ぼっちで、もうダメかと思ったけど、とんでもない幸運が舞い込んできたものだ!
可愛い美少女たちが、俺のことを「ご主人様」って呼んでくれる……。しかも、SRのメリーヌはスキルも色々もってて強そう!
こ、これはもしかして、俺、最強のパーティーを手に入れたんじゃないか!?色んな意味で……
これから一体何が起こるのか、ワクワクが止まらない! 不安なんてどこへやら、今は希望に満ち溢れている。この森で、彼女たちと一緒に生きていくんだ! きっと、楽しいことがたくさん待っているはずだ!
とりあえずニヤケ顔をみせないように、カッコよくだ。
安心したせいか、一気に疲れた気がする。張りつめた緊張感から解放されたからだろう。あまりだらしない姿は見せたくないが、疲れたのだからしょうがない。
「メリーヌ、どこか野営の出来そうな場所を探してくれるか? それと水も食料も無いんだ、何とかなるか?」
「それでしたら、どうか私にお任せください。」
「お、ライアはこの辺りに詳しいとか?」
「いえ、詳しくはありませんが、私は森の守護者で、森の妖精の加護がありますので、森の植物や地脈、河川などの情報は得ることが出来ます。」
「さすがエルフ! 野営場所はライアに全部任せる。できれば近くで良さそうな場所を見つけてくれ。」
「もちろんです。必ずお役に立ってみせます。」
ライアの先導で歩きながら、この世界についていろいろと聞いてみたが、彼女たちのこの世界に関する知識はほとんどないに等しい。とはいえ、話していく中でわかってきたことがある。
彼女たちには子供の頃の記憶がない。それどころか、子供だったことすらないのだ。そう、彼女たちは成長もしなければ老化もしない。最初から最後まで今の姿なのだ。
まあ、元はカードだし……。
それから、ほかにもカードを出せる人がいるかと聞いても判らないとのことだ。ただ、彼女たちがカードであること、カードに戻れること、再度召喚してもそれまでの記憶を維持できることなど、いろいろとわかってきた。
そして重要なのは、召喚にはレアリティに応じたMP(魔力)が必要とのことだ。
レアリティについても聞くことができたので、整理してみる。
カードのレアリティは全部で8種類で構成されている。
C コモン
UC アンコモン
R レア
SR スーパーレア
SSR ダブルスーパーレア
SSSR トリプルスーパーレア
UR ユニークレア
EXUR エクストラユニークレア
カードから1枚召喚する場合、CとUCでコストが10必要。Rでは20必要となる。そして上のランクは倍々で必要コストが上がっていく。つまり、SRなら40、SSRなら80、SSSRで160必要だ。
更には重複カードは合成する事が出来るらしいが、SSSR以降はコストも合成のたびに倍になるとか……つまりそれだけ恩恵があるって事だろう。
カードが無駄にならないのは良い。って、まんまゲームじゃねーかよ。
「ステータス オープン!」
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名前:来栖海斗
種族:ヒューマン
年齢:22
性別:男
職業:ニート
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LV : 1
HP :70
MP :60
STR: 7
INT: 5
DEX: 8
VIT: 6
LUK:24
ポイント:0
コスト:0
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スキル:[デイリーボーナス] [デイリークエスト] [ガチャ] [カードブック]
耐性:なし
加護:なし
称号:なし
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現状、俺のMPは60で、コストも60だったが、アリスとライアの必要コストが10、メリーヌの必要コストが40で、合計60。図らずもピッタリ消費してコストが0なわけだ。もう1人いても全員は呼べないわけか……。
そして実際にMPが減るわけじゃないようだ。これは最大MPがコスト合計の上限というカラクリらしい。よく出来ていやがる。たとえばSSSR10人召喚ならMP1600必要で、俺のMPは……考えないことにしよう。
そして鬱蒼とした密林を抜け、開けた場所へ出た。近くから水の流れる音が聞こえてくる。
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