第21話 召喚上限
王都ファルミナ、上層区——。
雲ひとつない晴天なのに、空気は重い。
その場にいた全員が、言葉を失っていた。
「……確認だが、本当に……聖女アリアが、敗北したのか?」
国王の声には、信じられないという色が混じっている。
彼はまだ、事態を受け入れられない。
「はい。偵察隊が現地で確認しました。遺体を直接確認できるほどは近づけませんが——
大魔導師・横峯の巨大魔法で聖女様は完全に戦闘不能に。その後、勇者・三条が喉へ剣を突き立てるのを目撃しました。」
沈黙。
机を叩いて叫んだのは、隣国エルベルトの将軍だった。
「ふざけるな!あの化け物が負けるはずが——!!」
その声は、理性ではなく、絶望に裏打ちされている。
「……その“化け物”ですら、勝てなかったのだ。我々はどうやって太刀打ちするというのか」
呟いたのは、聖教連盟の枢機卿。
彼の声は冷静だった。しかし、それは理解するしかないという諦念の冷静さだった。
——事態は明白だった。
地上最強の名を持つ聖女が敗れた。
つまり、人類側に、それ以上の戦力は存在しないということ。
「……今、前線を維持しても、犠牲が増えるだけだ。各国軍をいったん退かせ、戦力を温存しろ。」
「異議なし」
「同意する」
各国代表が次々と頷く。
彼らは皆、すでに敗北の現実を受け入れつつあった。
国王は、瞳を閉じると静かに告げた。
「——至急、世界会議を招集する。我ら全ての存亡が懸かっている。」
誰も、否とは言えなかった。
そして全員が理解していた。
勇者は裏切り、聖女という最強の切り札を失った。
もはや、人類に魔族を退ける術は残されていないのか。
沈黙が支配する王都に、鈍く重い鐘の音が響いた。
それは敗北を告げる鐘なのか、それとも新たな秩序の始まりなのか——。
* * *
その頃、遥か離れた森の奥。
世界の危機など、まるで別世界の話のように、俺はのんびり膝枕に寝そべっていた。
「——というわけで、ご主人様」
拠点の作業台の前で、ドワーフ鍛冶師のリリーが腕を組んでいた。
「魔核がないから何も作れないよー」
「ですよねー……いや、わかってたけどさ。」
俺は天を仰いだ。課金ガチャで全財産使い果たしたからな……。
「まぁでも、アリアも来ないっぽいし、今のうちにさ」
俺はニヤリと笑った。
「明日からみんなで狩りに行って、レベル上げと洒落こもうか!」
「えー……ぼくは戦闘タイプじゃないよ?」
「もちろん希望者だけで十分だ。全員でゾロゾロ行ってもな……」
「戦うの、ちょっと怖いけど……ご主人様のためなら!」
「うむ。主を見守るのもまた戦いだな!」
「私はもちろん“抱っこ係”です♡」
次々と集まってくるヒロインたち。
みんなやる気はあるらしい。
「……ちなみに俺は、もちろん見てるだけだけどな!」
「さすがはご主人様です。」
ライアそこは褒めるところじゃないぞ!
「さすがです!」
「さすが主殿、感服いたします。」
ジェシカも感服するな!!
「そういえばご主人様、空のカードが出たとか何とか……」
「ああ、そうなんだ、ランクも無い背景だけのカードなんだ。マリポッサは何か分かるのか?」
「それは倒した魔獣を封じ込めるカードだと思います。いわゆる召喚獣カードでしょう。」
マリポッサの話によると、通常のカードは既に誰かが封じられているが、稀に背景だけのカードもある。
条件さえそろえば、魔獣や場合によっては人も封じ込めて俺のサーバントにできるらしい。
「つまりあれだ!最強クラスの魔獣を探してゲットしろって事か……」
「なるほど、ライア!そういう場所とかわかるか?」
「さあ……わかりませんが、ダンジョンの最下層とかにいるボスクラスだと、そうかもしれません。」
「じゃあ決まりだな。最強魔獣探しの旅、始めようぜ!」
「その前にガチャですよ、ご主人様♡」
「お、そうだったな。ガチャチケットも貯まってるし、いっちょ回すか!」
ライアの膝枕に身を預ける。これが俺の定番スタイルだ。
「って、シャルル?」
俺の上に、8本の足でまたぐ影が……。
さらにゆっくりと腰を下ろしてくる。
「……ご、ご主人様……わたし……その……構っていただきたくて……その……」
アラクネのシャルル。
白いドレス姿で、恥じらいながらこちらを見つめてくる彼女。
「なあ、シャルル……そのドレス、可愛いけど、下着は?」
シュパパ!
すごい速さでどっか行っちゃったよ……ない物はしょうがないけど……
シュパッ!
戻ってきた。下着あるじゃん!着けるの忘れてたとか?。
「……その、糸で……下着を作ってきました……」
「マジか、それすごいじゃん。しかも速っ!俺の服とかもいける?」
「はいっ、ご主人様……わたし、がんばりますっ」
健気な笑顔。
ちょっと不器用で、でも俺のために何かしたいって気持ちが、めちゃくちゃ伝わってくる。
「……ありがとな、シャルル」
「っ……うれしい、です……♡」
こういう子もアリだよな……。
「でー、シャルルさん? ガチャ引きたいんだけど、ちょっと退いてもらっていい?」
「……は、はい……すいません……」
シュパパ!
いや、そんな遠くまで逃げなくても……
ま、とにかくガチャだ。さーて!SSSR来い!来い!!
ガチャチケットが青白い炎に包まれる。そして、正十二面体のようなホログラムが空中に現れた。
これはあれだ、SSRだ!
緩やかに回りながら、様々な色へグラデーションを変化させてゆく。
やがて白い光を発してホログラムは消え、1枚のカードが斜めに傾いたまま、ひとりでにくるくる回り出した。
手に取ると、それはSSRレアリティーのカードだった。
青い髪の可愛らしい少女のように見えるが、ビキニアーマーだ。
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No.0492
名前:カトレア
種族:ヒューマン
Rank:SSR
性別:女
職業:魔剣士
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性格:天真爛漫に見えて実は計算高く、戦いでは誰よりも冷徹に判断するツンデレ気質。説明:青髪の愛らしい少女の姿にビキニアーマーを纏い、空間魔法と多彩な剣術で戦場を翻弄する魔剣士。
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スキル:[空間認識 Lv4] [空間収納 Lv5] [箱庭創造 Lv3] [断絶 Lv1] [圧縮 Lv2] [連撃 Lv5] [裂空斬 Lv5] [真空斬 Lv3] [離空斬 Lv5]
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カトレアか……
SSSRイベントのあとだと、SSRが出てもありがたみは薄いけど、空間収納スキルは面白そうだ。これは案外使えるかもな。
「じゃあ召喚——」
ピコンッ。
【召喚上限に達しています。現在12/12。召喚する場合は既存のサーバントを待機に移してください】
「……えっ?」
俺はつい口に出してしまった。
「召喚上限……?」
その瞬間、場が静まり返る。
マリポッサが首を傾げ、クレマリーが耳をピクンと動かし、ライアは眉をひそめる。
「ご主人様……つまり、私たちの中から誰かを“外す”ということですか?」
「ま、待て!そういう意味じゃなくてだな!」
「外されるなんて……そんなのイヤです!」
「私はご主人様の傍にいるために戦うのです!」
「ずっと一緒にいたいよ!」
「……わたし、がんばりますから……!」
一斉に集まる視線。
愛情と不安と嫉妬が入り混じった圧に、俺は冷や汗をかいた。
「ま、まぁ、落ち着け。これは、その……ゲームの仕様みたいなもんだからさ……」
……いや、これ、最悪なことになったんじゃね?
召喚できるのは12人まで?
俺が誰を残し、誰を外すか——それを決めるのは、俺自身。
マジかよ!ガチャのたびに、俺は試されるのか!
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