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『全財産ニキ』の異世界ガチャ生活  作者: 錦来夢
第1章 聖女の暴走
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第2話 どんな不安もカードガチャで吹き飛びます

 深い、深い森の中。どれくらい歩いただろうか。


 見たこともない巨大な植物に、不気味な枝の大木。かと思えば、巻き付いてきそうなほどの弦。通れる場所を限定し、あたかも誘導するかのような植物の壁。


 歩きにくい地面。俺は、いったいどこにいるのか?


 さっきまであったはずの道らしきものは、いつの間にか消え失せ、足元は落ち葉と湿った土でぐちゃぐちゃだ。


「なるほど……さっぱりわからん!」


 心臓がドキドキして、喉がカラカラに渇いてくる。誰もいそうにない……マジで心細くて涙が出そうになる。


 勇者が召喚されるくらいだ。きっと魔王のような敵役もいるんだろう。こんな森だ、魔物が跋扈していても不思議じゃない。


 そうは言っても、聞こえるのは木の葉がこすれる音と、どこかで鳴いている鳥の鳴き声だけだ。自分の声を出しても、この広大な森に吸い込まれてしまいそうで、怖くて声も出せない。


 山で遭難するニュースは毎年のように何度も見てきたが、いざ自分が森の中に置かれてみると、これほど不気味で心細いことはない。


 動けば急激に体力を奪われる。夜はおそらく寒いのだろう。目的なく歩いても、この密林からは抜けられないだろう。全く助かる気がしない。かといって足を止めても、この場で飢えて朽ちるだけだ。


 こんな絶望的な状況、これまであっただろうか……。

 陽は傾きかけている気がする。木々の間から漏れる光が、さっきよりも赤みを帯びてきた。


 どんどん暗くなる森の中で一人ぼっち。不安がじわじわと全身を締め付けてくる。

 どうしよう……。


 これは詰んだかもしれない。せめて日が暮れるまでには水辺でも見つけて、火を起こさねば。


 「!?」


 さっきから、時々何かが……。

 視界の片隅に何かが見える。まるでゲーム画面にあるような、チュートリアルのような何かだ。


 間違いない。チュートリアルみたいな何かだ。


「ステータス オープン!」


-----

名前:来栖海斗くるす かいと

種族:ヒューマン

年齢:22

性別:男

職業:ニート

-----

LV : 1

HP :70/70

MP :60/60

STR: 7

INT: 5

DEX: 8

VIT: 6

LUK:24

ポイント:0

コスト:60

-----

スキル:[デイリーボーナス] [デイリークエスト] [ガチャ] [カードブック]

耐性:なし

加護:なし

称号:なし

-----


 おおおおお、コレだよコレ! ってか、コレで合ってるけど合ってねーよ、俺弱すぎだろ!


 上限がわからないけど、いくらなんでもゲームなら完全にスタート直後ってやつだ。せめて予備知識が欲しいところだが、攻略本も教えてくれる人もいない。


 とりあえず、しょーもないスキルが並んでるみたいだが……。

 デイリーボーナスにデイリークエスト、それからガチャ、カードブック???

 俺を馬鹿にしているのか!? これはどう考えてもゲームのあれだろ!

 ま、とりあえずもらえるボーナスがあるなら、もらおうか。


「デイリーボーナス!」


 目の前にヒラヒラと紙切れが出現してきた。見るからにガチャチケットだ。それが3枚!


 とりあえず、どうするのかわからない——


「ガチャ!……でいいのか? あっ……」


 ガチャチケットが青白い炎に包まれる。そして何も残さずに消えてゆく。

 ほんの一瞬の出来事で、特に熱いわけでもない。代わりに、正八面体のようなホログラムが空中に現れた。


 緩やかに回りながら、様々な色へグラデーションを変化させてゆく。

 やがて白い光を発してホログラムは消え、1枚のカードが斜めに傾いたまま、ひとりでにくるくる回り出した。


 手に取ると、それはCコモンレアリティーのカードだった。


 メイド服に栗色のツインテール、そしてヘッドドレスをつけた幼い少女のイラストが描かれている。数値やスキルなんかも書いてあって、ほとんどトレーディングカードゲームのそれだ。


-----

No.0008

名前:アリス

種族:ヒューマン

Rank:C

性別:女

職業:侍女

-----

性格:まだ幼く話し方も子供っぽいがちゃんと言う事を聞く賢い子だ。

説明:掃除、洗濯、料理など家事全般を得意とするメイド。

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スキル:[家事 Lv5] [小間使い Lv3]

-----


 俺の身の回りをしてくれるメイドだったら最高だが、所詮カードだしなぁ。しかもコモンじゃ、ほぼ間違いなくゴミカードだろう。


「あ!? そうか、これをカードブックに入れればいいのか、カードブック!」


 目の前にカードホルダーのような豪華な本が出現した。空中にふわふわと浮いている。 ページをめくろうと手をかざすと、勝手にめくれだした。まさに今手に持っているカードを入れるためのカードホルダーだ。

 カードは対応する番号のところへ入れるらしい。というか、入れようと思ったら勝手に収まった。よくわからないが、とにかく全自動らしい。


 取り出す時は? お、取り出そうと思うと手元に勝手に来る。


 よし、こんな密林の中、不安でならないが、せっかくだし残りの2枚のガチャもやってしまおう……。

 ガチャチケットが消えて、例のホログラムが再び空中に出現した。


 だが……今回は何かが違う。緩やかに回ったかと思うと、ピタッと止まり、今度は光速で逆回転し始めた。


 なんだろうか? そう思うのも束の間、またピタッと止まり、ゆっくりと回転しながら黄色い光を発してホログラムは消え、先ほど同様カードが現れた。


 今度はUCアンコモンレアリティーの少女のカードだ。たぶん、さっきと大差ないゴミカードだろう。


 もしかすると、あの高速回転は確変チャレンジだったのだろうか? だとしたらハズレを引いたのかもしれない……。


 いずれにしてもデイリーボーナス、言葉の通りなら毎日チャンスはある。やってるうちに、いろいろとわかってくるだろう。


 図柄をよく見ると——ん? 耳が長い……。


 まさかエルフだと!? これがエルフか!? これは可愛い……。


 この世界も悪くないかもしれない。まあ、所詮カードでしかないが、エルフがいる世界ってことだ!


-----

No.0132

名前:ライア

種族:エルフ

Rank:UC

性別:女

職業:森の守護者

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性格:お淑やかで上品なお姉様。

説明:森の守護者にして森の妖精の加護を受けるエルフ。あまり積極的ではないが主への思いはとても強い。

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スキル:[生命の雫 Lv1] [森の隠れ家 Lv1]

加護:[森の妖精の加護]

-----


 俺の身の回りの世話をしてくれるなら最高だが、所詮カードだしなぁ。しかもアンコモンじゃ、これもさっきと変わらずゴミカードだろう。


 それにしても、カードを集めるのがスキルって、これどういうこと!? まさかデッキを組んで、トレーディングカードゲームをしろって!?


 あれだ、カードで戦うやつ——「俺のターン、全部ドロー!!!」


 ……考えても答えは出ないだろう。俺の固有スキルなら人に聞けるようなことでもないし、そもそも人なんていないのだから……。


 さて、これが最後だ。

 コモン、アンコモンと出たからには、SSRとかSSSRみたいなカードもきっとあるに違いない。


 リセマラはできそうにないし、このガチャ運で人生が決まるといっていい。

 頼む、なんとか出てくれ……!

 祈る気持ちで最後のガチャを引く。


 ついに最後のガチャチケットが青白い炎に包まれ、先ほどまでと同様に、正八面体のようなホログラムが空中に現れた。


 そして緩やかに回りながら、今度は緑色の光を発してカードが出現した。色は違うが、最初のガチャと同じ演出だ。


 お!? カードの縁が、きらりとラメをまとう。

 これは……今までと違う。

 緊張で息を呑む俺の手に、静かに一枚のカードが収まった。


「……お前、SSRか!?」


 手に取ると、それはSRスーパーレアの猫人族カードだった。

 ケモ耳が当たり前にいる世界なのか??

 イラストでは白い髪に猫耳が乗っかった人間、そんな感じだ。SSRではなかったが、当たりなのか??


 色々スキルも持っているようだけど……このスキルは、どうやって使うのだろうか?


-----

No.0352

名前:メリーヌ

種族:猫人族

Rank:SR

性別:♀

職業:獣戦士

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性格:天真爛漫で甘えん坊、しかし戦闘では抜群の集中力と俊敏性を発揮する。

説明:狩りが得意な猫人族の少女。明るく人懐っこい性格で、特に主人への愛情表現が激しい。普段は猫のように気まぐれで甘えるが、戦闘では一転して鋭い爪と俊敏な動きで敵を圧倒する。昼寝好きだが、主のためならどんな危険にも飛び込む忠義心を持つ。

-----

スキル:[武術 Lv3] [柔術 Lv2] [猫爪 Lv5]

耐性:[物理耐性:Lv1] [落下耐性:Lv3] [魔法耐性:Lv2]

-----


 とりあえずカードブックに入れたり出したりしながら、いろいろ試してみる。

 チュートリアルじゃないのかよ。すごいのか、すごくないのか、本当に不親切極まりない。


「あっ!」


 カードブックに使い方が書いてあるじゃないか。

 そうか、カードを入れよう出そうと考えるからページが勝手にめくられて気づかなかっただけのようだ。


 使い方を知りたいと思ったことで、表紙の裏を見せてくれたんだろう。

 まあ、仕組みがわかれば親切設計かもしれないけどさ。


「えーと、『サモン』で召喚ができる! だと!?」


 まさに、「全部俺のターン、ドロー!!」ってやつだ。


 冗談はさておき、さっそくサモンしてみる。

 次の瞬間、カードに描かれた少女が白い光になって飛び出した……。

 カードの図柄を見ると、背景だけで少女がいなくなっている。

 なるほどなるほど。少女のいない抜け殻のカードを、カードブックに戻す。


 ついでに、他の2人もサモンしてみる。

 カードから飛び出した白い光は、やがて膝を抱え、まるで胎児を思わせる恰好で空中に停滞——


 かと思うと、ゆっくり旋回しながら手足を広げる。


 ふりふりいっぱいのバルーンパンツに可愛らしいキャミソール、ひざ元にレースがあしらわれたオーバーニーソックス、そしてヴィクトリアンスタイルのゴージャスなメイド服へと順次装着。


 ヘッドドレスや手元、靴なども再現され、栗色のツインテールをなびかせながら、ゆっくりと着地する。


「はじめましてご主人様、アリスだよ!」


 ほんのりラベンダーの香りがふわりと漂い、とびっきりの笑顔でウインク!

 とても可愛らしいメイド服少女が登場した。


 さらに2枚目のカードから飛び出した黄色い光もまた、やがて膝を抱え、まるで胎児を思わせる恰好で空中に停滞——


 かと思うと、ゆっくり旋回しながら手足を広げる。


 今度は、オシャレなスリップから白のソックス、そしてチャイナ服を思わせるようなスレンダーな緑色のドレスへと順次装着。


 ドレスの淵が金色で彩られ、やがて髪飾りや手袋、靴なども再現され、髪をなびかせながら、ゆっくりと着地する。


「ご主人様にご挨拶申し上げます。ライアと申します。」


 まるで鈴のような澄んだ声が響いてきた。上品なエルフお嬢様だ。


 そして最後のカードから飛び出した緑色の光は、少し演出が違うようだ。


 空中で手足を広げると、カラフルなテープが体に巻き付いて衣装を形成。


 ベビードールを思わせるエロ可愛いインナーに、赤い首輪が煌めく。


 そのまま空中を跳ねるようにステップし、体をくるっと捻ると、ひざ上丈のプリーツスカートがふわりと回る。


 さらに跳ねるようにステップを踏み、手を広げるとマウンテンパーカーを装着。


 白い髪の毛に、ピコピコっと猫耳が跳ねる。


 そして猫のように空中でくるっと一回転して着地。尻尾を揺らしながら、耳をもう一回ピコッと跳ね上げて猫の手ポージング!


「ご主人様! 逢いたかったにゃん!」


 元気いっぱい猫人族の登場だ!


 太陽の光をたっぷり浴びたふわふわの猫毛のような、ほんのり甘くて優しい香りが、風にのってそっと漂ってくる。


 カードから召喚されたのは、まばゆいほどに可愛い3人の美少女達だ。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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「全財産ニキ」の応援お願いいたします。


『全財産ニキ』は、毎日22時に更新予定です!

ぜひ明日の投稿も、お楽しみに!

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