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『全財産ニキ』の異世界ガチャ生活  作者: 錦来夢
第1章 聖女の暴走
14/21

第14話 勇者、国を造る。俺、温泉入る。

「ご主人様、そこ、そこにゃ♡」


 メリーヌの寝言で目が覚めた。そういう寝言は起きてから言え!


 今日も素晴らしい1日の始まりだ。そして目の前の現実より、これからの現実を考えないといけない。


 俺は悩んでいた……


 この拠点をどうするかだ。ここでガチャれば、そのままアイツが来て、ここが戦場になる。この幸せな生活は全て消し飛んでしまう。かといって移動してガチャるには、大量の魔核も持って移動しないといけない。


 もうすぐイベントが始まる。


「くっそ、荷物の多い女は嫌われるって言うけど、魔核の多い男も大変なんだぞ!」


 

 * * *

 


 奴隷の証である首輪が、勇者たちの喉元に鈍い光を放っていた。 王に忠誠を誓えと命じられ、それが叶わぬならば無惨に死を迎えるだけの呪縛。


「あの野郎、首輪が取れたら三倍返しだ、覚えてやがれ!」


 勇者三条は歯を噛みしめる。 魔族討伐の命を受け、否応なく国境へ向かう道中。腹の底に渦巻くのは、魔族への憎悪ではない。 彼の心を支配するのは 王への激しい憤り ——その支配に抗う術を持たぬ自分自身への怒りだった。


 そんな折、彼らは寂れた村へと足を踏み入れる。


 この世界で村といえば開拓村のことだ。つまり農村に他ならない。農村には農家の人間しかいない。もちろん宿も店もない。


 町ともなればたまに商人が来て市が立つ。ダンジョンが近くにあれば冒険者向けの宿もあったりする。


 さらに街や都市であれば常設店舗や各種ギルド、酒場や娯楽施設などもあり、王侯貴族の住宅もある。

 そして今、勇者達一行は水の補給と休息も兼ねて村に立ち寄ったのだ。


 粗末な家屋。干からびた畑。風に揺れる空のように人影は乏しい。


 そんな中、ひとりの男が歩み寄ってきた。


「やれやれ、惨めな勇者様方だ……」


 不自然なほど人懐っこい笑み。 だが、目だけが冷たい。


「だがまあ……お前たちが置かれた立場くらいは察しがつく」


 男は勇者三条の首輪をひと差し指で示す。


「その鎖を外し、自由になりたいとは思わんか?」


 勇者たちは身構えた。


「……貴様、何者だ?」


「ふむ、察しがいいな」 男の唇が、悪意を孕んだ笑みへと変わる。


「私は魔族軍四魔将の一人、デスサイズ。だが、お前たちの敵ではない……むしろ、友だ。」


 勇者たちが武器を握る。しかし、デスサイズは動じない。


「まあ聞け。お前たちが倒すべき魔族の群れは俺が従えている。そこでお前たちに提案しに来た。」


 提案——その響きに、勇者たちの眉が動く。


「お前たちは王に縛られた犬だ。だが、望むならば、その首輪を外してやろう」


 三条は息を呑む。


「ついでの私が用意した魔族の群れ3万もそっくりくれてやろう。お前たちは国境近くにある城塞都市を拠点に、魔族を統べる王として建国してみぬか?」


「なるほど、この提案は単なる反逆ではなく、むしろ革新的な政権創設の機会であり、状況を考慮すると—— 極めて魅力的かつ、論理的に優れた選択肢と言えるだろう。それは我々勇者パーティーにとって歴史的転換点に他ならない。つまり承諾だ。今からイキリ勇者三条が、その城塞都市の国王だ。」


「お、おい宮本!」


 言葉の意味を理解するよりも早く、三条の胸に湧き上がるのは 誘惑 だった。 自由への渇望。 力を得る甘美な魅力。 そして国王への復讐。


 三条は拳を握った。もしここで建国を宣言すれば、後には戻れない。……王として生きるのか、それとも、


「……兵も、くれるんだな?」


 デスサイズが指を鳴らした瞬間、村の影に潜んでいた無数の魔族たちが姿を現した。 炎を纏う戦士、死を告げる使者、闇に溶ける刺客——


 三条の背中を冷たい戦慄が走る。


「選べ。王となって自由を得るか、このまま犬として飼いならされるか」


「俺は首輪さえ外してくれればどっちでもいいよ。」


 横峯は相変わらずだ。


「……いいだろう、さっさと首輪を外せ。」


 デスサイズが手を翳して首輪を外していく。そして同時に魔族の因子を首元からひっそりと埋め込んだ……


 その瞬間、三条の背筋にわずかな寒気が走った。だが、それが何を意味するのか、彼にはまだ分からない。


 そしてついに国境付近まで到着した勇者たちだが、

 魔族軍と対峙する城塞都市で、勇者三条は建国を宣言、開門して魔族軍3万を引き入れ都市を制圧。


 黒煙あがる城塞都市に、勇者三条は旗を掲げた。


 あの王様、最初は下にも置かぬ態度だったくせに、俺の力に怯えたのか、いきなり首輪を付けやがった。


「ふざけやがって……!」


 俺様が、この世界に“来てやった”んだぞ?


「……だったら俺は、俺の国を創る。誰にも頭なんて下げねぇ、誰の下にもつかねぇ……!」


 でも……これが間違いだったら……


「王様よ、待ってろ。今度はお前が、俺様に跪く番だ……!」


 王様——あの野郎の名前がわからん……長くてややこしい名前しやがって。


「俺様の国、『勇者王国』の建国をここに宣言するぜ!」


 ……


「これがイキリ勇者のネーミングセンスよ」


 珍しく横峯に突っ込まれる。


 

 * * *

 


 一方聖教国では……


「勇者が……建国? それも魔族を従えてるだと!?」


 失踪中のアリア・セレスティアが姿を現す。


「聖女様!お帰りなさいませ、お待ちしておりました。」


 深々と頭を下げる大司教。後ろには神官長に多数の神官、巫女見習いなどもいるが、皆慌てて頭を下げる。圧倒的な畏怖によるものだ。


「認めない……そんなものは、絶対に──認めないっ!!」


 彼女は即座に討伐に出ようとするが、皆で必死になだめようとする。


「お待ちください。聖騎士を向かわせましょう。それと魔族には、世界各国から兵を集め多国籍軍を編成、殲滅させましょう。」


 聖女アリアは唇を噛みしめた。背後の神官たちが恐怖に身を震わせるほど、彼女の瞳には純粋な怒りが宿っていた。


「手ぬるい!勇者は私が倒す。あとは好きにしろ!」


 颯爽とドラゴンを駆り、現地へと向かってしまった。


 かつて希望だった者が、世界を裏切るとは……


「だからこそ、私が裁かねばなるまい……!」


 そして、運命の再会が、戦場で果たされようとしていた。


 

 * * *

 


 一方その頃。


「ん~極楽、極楽♥ こんな近くに温泉があったなんて、最高だ!」


 のぼせてきた俺は、湯から出てライアの膝枕でとろけていた。


 メリ―ヌは湯にぷかぷか浮いたまま、目の前を行ったり来たりしている。


 アリスとリリーは走り回って遊んでる。水浴びじゃないんだから静かにして欲しい物だ。


「ま、どうせガチャ引けば戦争だ、今は好きなだけはしゃいでくれていい……」


 俺はライアの膝枕で目を閉じる。でも、意識の奥では、迫りくる運命の戦場がちらついていた——。


 ……あの時、引かなければよかったのかもな……でも、アリスが来てくれて、俺は……

「ご主人様……ずっと一緒ですよね?」


 ライアが、ふいにそう囁いた。

 俺は、少しだけ目を開けて、曖昧に頷いた。


 ああ……できれば、この時間が、ずっと続けばいいのに……


 ……さて、誰がこの戦争を引き当てたのかって? もちろん、俺だよな……ガチャで。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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『全財産ニキ』は、毎日22時に更新予定です!

ぜひ明日の投稿も、お楽しみに!


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