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1話 中二病の過去なんて見せれるもんじゃない

中学三年間をかけて築き上げたのは、恋でも友情でもなく、黒歴史ブログと、厨二グッズの山。

高校からは"普通"に、"目立たず"、"波風立てず"に生きようと決心するの男の姿がそこにはあった。

 春の日差しが埃を舞わせながら、今日越してきたかと言わんばかりの段ボールを山々を照らす。


 中にはパワーストーンに龍の剣のストラップ。竜の眼と称された指輪、トゲのついたブレスレット、そして“真理”と呼んでいた痛いポエムノート。


 これは言わば中学三年間で築き上げた、中二病の集大成。


 その残骸たちを、昨日一日かけてきれいにまとめたのだ。


 制服のネクタイがまだしっくりこない。首元を締めながら、真城一真ましろかずまはふうっと息を吐いた。


 今日は高校の入学式。


 つまり、人生の仕切り直しの日だ。


「……さて。けじめ、つけるか」


 最後の仕上げ。デスクに座り、パソコンの電源を入れる。


 お気に入りから、あるブログにアクセスする。


 タイトルは『真理を延べし終焉』。


 自分が中学時代に毎日のように書いていた、誰に見せるでもない“理論”や“考察”や“痛いポエム”が並んでいる。


(……こんなの、よく堂々と載せてたよな)


 久しぶりに見ると、赤面するほどの黒歴史だった。


(まぁこんなブログにも、毎日のようにコメントをくれる物好きもいたけど)


 名前は思い出せない。というより、見ないようにしていた。


 自分の恥部を真剣に読んでくれる誰かがいたという事実が、逆に居心地を悪くしていたのかもしれない。


 マウスカーソルを「削除」ボタンの上に重ねる。


 「……」


 手が止まる。


 昨日までは、思い切りよく何でも捨てられたのに、なぜかこれだけは指が動かない。


 ログアウト。


 それが、今の俺にできる限界だった。


 ウィンドウを閉じて、背もたれに体を預ける。


「よし。これで、俺はもう"中二病"じゃない」


 そう思った。


 だけど。


 この“ログアウト”の判断が、良くも悪くも、俺の人生を大きく振り回すことになるなんて。


 このときの俺が知るはずもなかった。

筆を折る気はありませんので、是非ファンになっていただけると嬉しいです。

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