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アカデミー入学

暗い室内を静かに歩く。

部屋の奥に設置された寝台からは、部屋の主人の規則正しい寝息が聞こえている。

安心し切った様子に、そのまま寝かせてあげたい気持ちもあるが、それで困るのは本人である。

心を鬼にして、目覚めの光を取り入れるため、重たい帳を一息に取り払う。


「ん。眩し」

「おはようございます。お嬢様」

「ん〜。リリー。もう少し寝かせてちょうだい」

「いけません。今日からアカデミーですよ。侯爵令嬢ともあろう方が、初日から寝坊なんて、今後に触りますよ」

「あぁ。そうだったわね」

「さぁさぁ。起きてくでさいませ。朝食の準備がまもなく整いますので、お支度してしまわないと」

「わかったわよぉ」


お嬢様がもそもそと動き出したのを確認して、今日のお召し物の準備をする。

お召し物と言っても、夜会用のドレスではなく、アカデミーの学生服だ。

着替えを手伝い、ヘアセットをすれば、世界一可愛い私のお嬢様が完成する。


(はぁ。ちびキャシー、かわゆす)


お嬢様との衝撃的な出会いから、早2年。

今日からアカデミーの初等科に入学されるお嬢様は、記憶にあるものより幼いがその美少女っぷりは健在である。


(漸く、アカデミーか)


ここまで来るのには、苦労した。

下級貴族子女を連れてくると思っていたパパ侯爵の説得から始まり、お嬢様付きの専属侍女となる為の地獄の侍女教育。

隠密技能とか、対暗殺者用の護衛能力とか、影武者できるように礼儀作法に自他国の歴史や情勢知識とか、前世含めて一生分以上に頑張った気がする。


(必要?とは思うけど、まぁ、キャシーの幸せの為ならどんな地獄も耐えるさ!)


できれば2度はしたくないなぁと思いながら、お嬢様へ朝食の配膳をし、側に控える。


「ふむ。今日からであったか」

「はい。お父様」

「制服がよく似合ってるわよ。キャシー」

「ありがとうございます。お母様」


仲のいい侯爵家親子の会話をのほほんと聞いていると、侯爵様と目があった。


「リリー」

「はい」

「お前も、キャシーと共にアカデミーへ通いなさい」

「まぁ!宜しいのですか!お父様」

「アカデミーでは、市井からも優秀な人材を特待生として集めている。リリーなら問題なかろう」

「ありがとう!お父様」

「良かったわねぇ」


状況の理解が追いつかないままに、話が進んでしまったようだ。

元より、雇い主からの指示に逆らうことができるはずもないのだが、まぁ、その方が都合がいいかもしれない。


(見てないところで、断罪ルートに入られたら困るしね)


何故かサイズぴったりで用意されていた制服を渡され、ジト目でお嬢様を見るも視線逸らされ追求もできないまま、時間がないからと着替えさせれら、何故かお嬢様と同じ馬車に詰め込まれてアカデミーに送り出された。

馬車の中、気まずそうにこちらを伺うお嬢様を見てしまうと、怒る気が失せてしまった私は、やはりお嬢様に甘いのだろう。


「ところで、お嬢様。私、特待生と言われましても、試験すら受けてない身でこのままアカデミーに行ってしまて大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫よ。ちょっと前にリリーに侍女試験として解いでもらった問題、あれがアカデミーの入学試験だったの」

「あぁ。あれですか」


何だか、やたら問題量が多く難解な試験を、侍女教育の一環として受けさせられたが、あれが試験だったのか。


「因みに、満点だったらしいわよ。流石、私のリリーね!」


自分のことでもないのに、にこにこと嬉しそうに笑うお嬢様は、やはり、世界一可愛いと思う。


(こんなに優しいお嬢様が不幸になるフラグなんて、私が折らせていただきます)

面白かった!続き読みたい!と思っていただけたら『評価』お願いします_(:3 」∠)_

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