サイコロトークで盛り上がりたい
私、金井小花はスぺ先輩こと砂川先輩からスぺ派特別勉強メニューの特訓を受けている。
意外にも先輩の指導は上手で、わからなかった問題がわかるようになって、学力がついてきていると実感している。
だけど、ありがたいと思う反面、やっぱり疲れてきてしまう。
砂川先輩ほど集中力は続かない。
先輩はそこをわかってくれているので、こまめに休憩を入れてくれる。
でもその時の雑談が大体勉強の事なので、休んだ気になれない。
だから私は今日、あるものを持ってきた。
「先輩、サイコロトークをしましょう」
「サイコロトーク?」
「出た目に書いてあるテーマに沿って話をするのです」
「なるほど」
先輩はサイコロを手に取り目を確認している。
「じゃあ振ってください」
「僕からか。いいだろう」
先輩がサイコロを転がしたので、私は「なにがでるかな、なにがでるかな」と歌う。
「なんだその歌?」
「いいんです。サイコロを振る時は大体この歌なんです。それより先輩のトークテーマは、すべらない話ですよ」
やったー。一番出てほしい目が出た。先輩のすべらない話は聞いてみたかった。
「すべらない話か……。それじゃあ一つ」
「お願いします」
わあ楽しみだ。先輩のすべらない話。
「僕は勉強が好きなんだ。将来のことを考えて今一所懸命に勉強しているという面もあるが、それ以前にいろいろな知識を得ることが楽しくて仕方がない」
「はい。そんな感じがしますね。それで?」
「それで、僕はいろいろな資格や検定の試験を受けることも好きなんだ。勉強の成果を試す意味にもなるしな」
「それでそれで?」
どういう話になるのだろう。
「でも僕は一度も試験で落ちたことがない。これからもきっと試験にすべらないだろう」
「え?」
「え?」
「いや、え? じゃないですよ」
「違うのか?」
「違います。全然違います」
まじかー思ってたのと全然違う。期待してたのに。
「あ、そういうことか。すべらないだろう、と推量で文が終わっているから違うのか。すべらない話ということだから、これからも絶対にすべらない、と言い切る形で断言して終わらなきゃいけないのか」
「あーそれも違います。そういうことじゃないです」
これは完全にスぺってる話だ。砂川先輩は、スぺらない話ができないのだろうか。
「難しいな。勉強しておこう」
「いいですよ。もう大丈夫です」
「そんなことより小花さん。特訓再開の時間だ。さあ模擬問題を解きなさい」
「はーい」
私は諦めて勉強に取り組んだ。