第8話 2周目の世界一周開拓記:閑話・休暇回
久しぶりの休暇の回です。
やっぱり日本が良いなという話になりますね。
ようやく東ヨーロッパ地域の再開拓が終わり、俺は予定していた休暇を取る事にした。
日本を出てから100年位掛かったかな?
仕事をしていた年数だけを見ると、どんなブラック企業でも裸足で逃げ出すような量の仕事をしてきた事になるけどね。
現代でこんな企業が有ったら、労基が団体で腕まくりしてやってくるだろう。
久しぶりにヴォルグラードから時空転移装置に転送機で戻ってくる。
移動自体は一瞬なのだけれど、前回戻って来たのは中国文明地域から古代オリエント文明地域へ移動するときに、中継点として通過しただけで、その後は各文明地域間を船やラクダなどを使って移動していたから、本当の意味で戻って来たのは100年ぶり位だ。
戻った日はそのまま時空転移装置内でマリアと話したり風呂に入って晩酌やマリアの作った晩御飯を頂いたりしてリラックスした夜を過ごす事が出来た。
マリアが新しく作ってくれていたヒノキ製の風呂に入って、風呂上がりに日本のビールを飲む。たまらんな~!ヒノキの香りも良かった。
実際に酒を飲むわけではないが、映像でもマリアと差し向かいで酒を飲んで、色々話が出来た。良い女と美味い酒を飲むのは男のロマンだよな。
ゆっくりと寝た次の日は、邪馬台国の都“江戸”に行ってみる。
再開拓から100年たった江戸の町は、さらに大きくなっているようで、マリアに見せてもらった衛星写真では中心部の混雑ぶりが良く判るほどだった。
出来るだけ外側に向かって発展させるように誘導しているようだが、どうしても利便性を考えると中心に近い方が便利だからな。
しかし、家が木製なので火事に弱い点を考えると、あまり密集しないように注意が必要だ。
それでなくとも地震が多い国である。地震による家屋の倒壊や、それに伴う火災の発生などは関東大震災や阪神・淡路大震災でも有ったし、東日本大震災のような津波による被害も考えないといけない。
現代で記録に残っていないだけで、これから先の1万年間にどれだけ地震などの災害が発生するか判らないからな。
マリアに聞いてみたが、地層等から判断できる災害の状況でも、まだ解明できていない部分が有るようで、災害に対する備えが難しいことに変わりはなかった。
江戸の町の中心近くに俺の家が有る。
普段俺が住んでいないので、主にヒューマノイドが家宰として住み込み、その時々で人を雇って家の維持管理を行ってくれていた。
流石に100年間も家を放置していたら、良くてお化け屋敷、多分廃墟にしかならないだろう。
町の中心部に廃墟が残っているなんて、何処のホラーかと思ってしまうな。
家の一番奥に開かずの間になっている転送機室が有り、時間転位装置から直接転送してもらう事が出来る。
いかにも普段から住んでいますよといった感じで転送機室から出てきた俺は、マリアからの連絡で待ち構えていたヒューマノイドの「文左衛門」に出迎えられ、まず居間に通された。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「留守居役、ご苦労だったな文左衛門。変わりはないか?」
「はい。家も江戸の町も大過なく。手伝いの皆は大分変っておりますが、家の手入れなど、問題なく行っております。」
「そうか。ご苦労だったな。しばらく休んで、また旅に出る事になると思うが、宜しく頼んだぞ。」
「畏まりました。どの位滞在のご予定でしょうか。」
「そうだな。一月といった所か。いない間に変わった所など、色々見て回りたいからな。」
「承知いたしました。手伝いの者達にも周知しておきますので、御自由にお休みください。」
「ありがとう。そうさせてもらうよ。」
その後、今働いている手伝いの者達と顔合わせを行い、少し話をしてから散策に出る。
一歩、家から出ると時代劇で見るような街並みが有った。
今は俺も着物姿で、周りに違和感が無いようにしているが、町の感じは活気が有って、不思議と落ち着ける雰囲気が懐かしい。
歩いている人々は皆元気で朗らかで、楽しげな話し声が響いている。
子供達も走り回って楽しそうだ。
周りの人達と同じような素足に草履といったラフな感じで歩き出した俺は、適当に通りの店を冷かしながら、役場の方に行ってみる。
江戸の中心部にある役場は、謂わば日本国の国府でもあり、ここに来れば今の日本の状況が確認出来るようになっている。
サルタヒコから100年以上たって、現在の国首はワカタケルという名前だ。
傍には補佐役としてヒューマノイドの「サクヤ」。女性型で、日本国として建国以来国首の陰に隠れてアドバイスなどを行って来た。年取らないからな!?
これからも代々の国首を陰から支えていく事だろう。
役場と言っては語弊があるかもしれないが、ほかの国の様に政庁とは言いにくいし、都庁?府庁?どれもピンと来ない。
まあ、役所で良いか。
町中を見て回りながら役所まで来た俺は、普通に入口から入り込んで、受付に行こうとしたところでサクヤに確保され、そのまま国主の執務室に連行された。どうやら此処でもマリアから連絡が入っていたようだ。
サクヤもさりげなく腕を組んでくるから、他の人には違和感を与える事も無く、待ち合わせでもしていたかのような感じだったろう。こんなスキルいつ覚えたんだ?
「ヤマト様、お帰りなさいませ。私は現在国首を務めさせていただいておりますワカタケルと申します。宜しくお願い致します。」
「お前がワカタケルか。初めましてになると思うが、宜しく頼むぞ。俺の到着は知らせが入っていたのかな?」
「はい。サクヤ様からお聞きして、お待ち申し上げておりました。」
「そうか。100年ぶりの江戸だからな。知り合いもほとんどいないので、こうして迎えてもらえると嬉しいものだ。サクヤから色々聞いている事と思うが、しばらく休んだ後、また旅に出なければならない。それまでゆっくりさせてもらうつもりだ。」
「どうぞ、ごゆっくりお休みください。何か入用なものが有ればご用意いたしますので、何なりとお申し付けください。」
「有難う。何かあったらよろしく頼む。」
その後、サクヤも交えて少し確認を行ったりしてから、役所を出た。
丁度昼時になったので、蕎麦屋に入って店の娘を揶揄いながら蕎麦を食べ、また、ぶらぶらを散策を続ける。
さっきの店の娘は中々可愛いかったな。休暇中にまた来よう。
市場や色々な店を廻って、気に入ったものが有ったら買ってみる。
特に仕事をしているわけではないのだが、あちらこちらで開拓工事に交じって働いていたから結構な給金を貰っていた。おかげで金は貯まるが、普段は晩酌や食事以外で使う事が無いので貯まる一方なんだ。たまには還元しないといけない。
着物や帯、装飾品などは古着になるが、買っておいて古代オリエント地域等に持っていくと良い値で売れそうだ。これも行商になるのかね。まだシルクロードも無いから日本の物を売るのは俺しかいないだろう。独占販売だから、やり方によっては大儲けが出来るな。
その内何処かの町に店でも出してみるか。
輸入品販売の店なんて面白そうだ。
一日かけて江戸の町を散策し、夕方には風呂屋で汗を流して飲み屋で町の呑み助に交じって馬鹿話をしながら飲んで食って楽しんだ。
休みらしい、良い一日だった。
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2日目からは日本各地を回り、各郡の知事に会って話を聞く。
100年たつと知事も何代か代替わりしていて、知っている人は一人もいない。
知事補佐のヒューマノイドがいるから支障なく話も出来るが、普通なら話をするのも大変なことになっているだろう。
不老不死(?)の体だと、知り合いがみんな先に逝ってしまい、再開拓で遠くに出ている身では、見送る事も出来ない方が多いから寂しい限りだ。
各地では地元の名産品や特産品を見て回って、良さそうなものは買い込んだ。
もちろん、何処でも宿に泊まって散策し、店を冷かして回って夜は飲み屋で楽しんだ。
北海道から九州まで見て回るだけでも結構な時間が掛かるが、とても楽しい時間を過ごせている。
本州以外に渡る時は船に乗ったが、100年間で色々な改良がおこなわれたようで、乗り心地もスピードの格段に良くなっていた。
港も拡張が行われているし、設備も大きく、良くなっている。
桟橋は150mクラスの船を係留出来るものが出来ていて、未だ人力だがクレーンも大きくなっている。
造船所のドック設備も大きい物を作り始めていて、その内外洋船も建造されるかもしれない。
そうなれば中国文明地域との交流も始まるだろう。
今のうちに中国圏の言葉を教えておいた方が良いかな?
これはマリアと要相談という事で、アメリカ大陸の再開拓前に話をしよう。
国交が開かれると、検疫や入国審査、大使館も必要になるし、為替レートの調整も必要になる。
国際法などの整備も必要になるだろうから、時間が掛かるな。
うん。休みに考える事じゃないな。今は休むことに専念しよう。
一端北海道に渡って南蝦夷郡でシカ肉を食ってから南下して津軽海峡を渡り東北郡の三内に行ってみた。
三内丸山遺跡を模して幾つかの建造物を作っておいたが、その周りにも集落が出来ていて、それなりに発展しているようだった。
その後、邪馬台国まで戻ってから東海道を西へと移動し、近畿郡から瀬戸内郡、博多郡と見て回った。
古墳はどうしようかな?
今の状況が続けば豪族の墓や天皇陵も必要ないのだが、何処かのタイミングで作る事になるのかな?関東地方の古墳群とか仁徳天皇陵のような、壮大な古墳などが無いのはちょっと寂しい感じがする。
瀬戸内海も形成されている途中で、まだそれほどの広さはなく、一部地続きになっている所もあるが、通行には適していないので海路が使われることが多い。
その中でも瀬戸内郡から博多郡へと渡る貨客船は海峡の一番狭い所を通る航路を走る。中々眺めが良くて観光に良い景色だった。
熊本郡まで行って周辺を見て回る。
あまり特産品が無いようなので、マリアと話してサツマイモを導入することにした。
原産地は南米だと思ったけれど、手に入れることは出来るだろう。
やせた土地でも栽培が出来る上に、食品としてもすぐれているし、何と言っても九州なら焼酎でしょう。現代なら有名な焼酎が一杯あったからな。
製法は教えるから、頑張って芋焼酎を作ってください。大好きなので絶対飲みに来るから。
それから、酒つながりで黒酢を作ってもらおう。健康にも良いし、料理に使っても良いから重宝するだろう。
あと、ブンタンはどうかな。まだインドネシアあたりで自生していないかな?
探してもらって、見つかったら栽培してもらうのも良いな。
ちょっと思い出したけれど、若い頃、博多の街で博多人形を見て、その美しさに思わず買い込んで妻への土産にしたことが有った。
妻も喜んでくれて大事に飾っていた。
妻が亡くなってから、仏壇の隣に飾っていたが、あれはどうしているだろうか。
子供たちが大事にしてくれていれば良いのだが。
まだまだ、博多人形を作り出せるような職人は生まれていないだろうけれど、一つの到達点として考えれば、良い目標になるのではないだろうか。
ぜひ、職人たちを鍛えて、産業にまで発展させていってもらいたい。
他の郡にもそれぞれ特徴のある産物が生まれていたから、今回の休暇中に回ってみてとても楽しかった。
街道が整備された事で人の行き来が増え、各地の産物が他の地へ運ばれて売買され、さらにその品々を模倣や改良して別の産品が出来るなど、良い刺激になっているようだ。
この調子で行けば、現代にあったようなご当地キャラ的な物も出て来るのではないだろうか。中には?の物も有ったが、それはそれで面白かったから良いと思う。
休暇が終われば、アメリカ大陸の再開拓に100年位は掛かるだろう。
戻ってくる頃には、今回知り合った人たちも皆逝ってしまって、新しい顔ぶれに代わっている事だろうけれど、またの出会いに期待して戻って来る時を楽しみにしよう。
久しぶりの休暇が終わりました。
出会いが有れば別れが有る。江戸の町であった娘も二度と会う事は無いでしょう。
さて、次回からアメリカ大陸の再開拓に入ります。
広い地域ですから、また時間が掛かりますね。
宜しくお願い致します。




